はた迷惑な微罪
貴女のお名前
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私の所為ではない。
初めは緊張して触れていた名無しさんの手は、回数を重ねる毎に慣れていった。
「ふふ、柔らかい・・・」
触れる手は勿論、うっとりと呟く幸せそうな声も、愛しげに細められた瞳も、向けられる先は残念ながら飼っている鷹で、自分ではない事に、鍾会は苛々と卓を指先で小突いていた。
彼女に届く程の大きな音ではない。
気を引きたいが為に音を立てるのは、まるで構って欲しさに声を上げる子どもと変わらない。
そんな真似を自分に許す程、鍾会の矜持は甘くはなかった。
ちらりと見遣る鷹はすっかり慣れた様子で、止まり木から飛び立つ事もなければ、名無しさんを攻撃する様子もなく、触れて来るがままに身を任せている。
面白くない、と鍾会は鷹から、いや、彼女から視線を逸らした。
目の前に居る私に視線の一つも寄越さないとは、失礼な女だ。
鍾会は無意識に小さく舌を打っていた。
呼ばれたと思ったのか、鷹がこちらを向き、次いでに名無しさんの視線も鍾会に向く。
それを視界の隅に捉えた鍾会は、気付かぬ振りをしたまま視線を外していた。
「あの・・・鍾会様?」
恐る恐ると言った声音で名無しさんが声を掛けて来る。
「何だ」
冷たく、短く放たれた言葉に名無しさんは細い肩をびくりと揺らした。
私ったら、知らない内に何か失礼をしてしまったのかしら。
これって、謝った方が良いのかしら。
でも、何を謝れば良いのか分からないわ。
どうしよう、どうしようと考える彼女の視線が下へ落ちていく。
「名無しさん」
鋭い声が飛んで来て、名無しさんは弾かれたように顔を上げた。
そこに浮かぶ怯えたような表情に、鍾会は臍を噛む。
こんな顔をさせるつもりではなかった。
これでは鷹以下ではないか。
鍾会は音を立てて椅子から立ち上がると、名無しさんの手首を掴んだ。
「行くぞ!」
「え?あの・・・」
何処へとも言わず、強引に彼女を引っ張り出す。
鷹が翼を広げ、止まり木から飛び立った。
ずんずんと進む鍾会は、後ろを行く名無しさんを一度も振り返らない。
しかし、その歩幅は確かに彼女に合わせていて、名無しさんは目を丸くさせていながらも、少しだけそれを嬉しく思った。
廊下を進み、門を抜ける。
やがて、名無しさんにも彼が何処に向かっているのかが分かった。
初めて鷹に触れてから、今日まで何度となく、二人でやって来た場所だ。
柔らかい芝生を踏み、明るい日差しに鍾会が目を細める。
名無しさんは頬を撫でる風に翻った裾を慌てて押さえ付けた。
鷹が水を得た魚のように勢い良く空高くへ舞い上がる。
「あっ・・・」
その様子を追って、彼女の視線が上を向いた。
鷹の進む方向に合わせて首を巡らせている内に、唇が少しずつ丸く開いていく。
「・・・前と同じ顔だな」
鍾会は無意識に頬を緩ませ、ぽつりと呟いた。
あの時と同じ、無防備な間抜け面。
よく飽きないものだと変に感心する。
暫く、名無しさんの好きにさせていた鍾会だったが、鷹を見上げたきり、こちらを見ようともしない彼女に、一度は緩めた頬を元の位置に戻し始めた。
「・・・おい」
そのつもりはないのに、何故か不機嫌そうな声が出る。
鷹に夢中になっているのだろう、名無しさんに振り向く様子がない。
鍾会はまたも小さく舌を打つと、鷹を呼んで腕を空に伸ばした。
それを見た鷹が真っ直ぐに鍾会の腕に爪を立てて降り立つ。
同時に名無しさんの視線が漸く鍾会を見た。
「ふふっ、やっぱり鍾会様の鷹は賢いですね」
緩く微笑む彼女に一瞬見惚れた鍾会は、取り繕うように咳払いをして言う。
その耳が赤く染まっていた。
「その・・・今日は良いのか?」
「何がですか?」
細い首を傾げ、ぱちぱちと目を瞬かせる名無しさんの仕草に、鍾会の息が詰まる。
一々、可愛い。
「だから・・・その、あれだ!」
「あれ?」
鍾会の言う事が本当に分からなくて、名無しさんは今度は反対側に首を傾げて見せた。
胸を鷲掴みにされたようでままならない。
可愛い。
もう、可愛いしか出て来ない。
「・・・っ、相変わらず察しの悪い!」
鍾会は乱暴な動きで鷹を解放すると、彼女の腕を取った。
上着を手早く脱ぎ、有無を言わせず名無しさんの右腕にぐるぐると巻き付ける。
突然の彼の行動に名無しさんは目を驚きに開いたが、直ぐに何をしようとしているのかが分かり、大人しく、鍾会にされるに任せていた。
初めは緊張して触れていた名無しさんの手は、回数を重ねる毎に慣れていった。
「ふふ、柔らかい・・・」
触れる手は勿論、うっとりと呟く幸せそうな声も、愛しげに細められた瞳も、向けられる先は残念ながら飼っている鷹で、自分ではない事に、鍾会は苛々と卓を指先で小突いていた。
彼女に届く程の大きな音ではない。
気を引きたいが為に音を立てるのは、まるで構って欲しさに声を上げる子どもと変わらない。
そんな真似を自分に許す程、鍾会の矜持は甘くはなかった。
ちらりと見遣る鷹はすっかり慣れた様子で、止まり木から飛び立つ事もなければ、名無しさんを攻撃する様子もなく、触れて来るがままに身を任せている。
面白くない、と鍾会は鷹から、いや、彼女から視線を逸らした。
目の前に居る私に視線の一つも寄越さないとは、失礼な女だ。
鍾会は無意識に小さく舌を打っていた。
呼ばれたと思ったのか、鷹がこちらを向き、次いでに名無しさんの視線も鍾会に向く。
それを視界の隅に捉えた鍾会は、気付かぬ振りをしたまま視線を外していた。
「あの・・・鍾会様?」
恐る恐ると言った声音で名無しさんが声を掛けて来る。
「何だ」
冷たく、短く放たれた言葉に名無しさんは細い肩をびくりと揺らした。
私ったら、知らない内に何か失礼をしてしまったのかしら。
これって、謝った方が良いのかしら。
でも、何を謝れば良いのか分からないわ。
どうしよう、どうしようと考える彼女の視線が下へ落ちていく。
「名無しさん」
鋭い声が飛んで来て、名無しさんは弾かれたように顔を上げた。
そこに浮かぶ怯えたような表情に、鍾会は臍を噛む。
こんな顔をさせるつもりではなかった。
これでは鷹以下ではないか。
鍾会は音を立てて椅子から立ち上がると、名無しさんの手首を掴んだ。
「行くぞ!」
「え?あの・・・」
何処へとも言わず、強引に彼女を引っ張り出す。
鷹が翼を広げ、止まり木から飛び立った。
ずんずんと進む鍾会は、後ろを行く名無しさんを一度も振り返らない。
しかし、その歩幅は確かに彼女に合わせていて、名無しさんは目を丸くさせていながらも、少しだけそれを嬉しく思った。
廊下を進み、門を抜ける。
やがて、名無しさんにも彼が何処に向かっているのかが分かった。
初めて鷹に触れてから、今日まで何度となく、二人でやって来た場所だ。
柔らかい芝生を踏み、明るい日差しに鍾会が目を細める。
名無しさんは頬を撫でる風に翻った裾を慌てて押さえ付けた。
鷹が水を得た魚のように勢い良く空高くへ舞い上がる。
「あっ・・・」
その様子を追って、彼女の視線が上を向いた。
鷹の進む方向に合わせて首を巡らせている内に、唇が少しずつ丸く開いていく。
「・・・前と同じ顔だな」
鍾会は無意識に頬を緩ませ、ぽつりと呟いた。
あの時と同じ、無防備な間抜け面。
よく飽きないものだと変に感心する。
暫く、名無しさんの好きにさせていた鍾会だったが、鷹を見上げたきり、こちらを見ようともしない彼女に、一度は緩めた頬を元の位置に戻し始めた。
「・・・おい」
そのつもりはないのに、何故か不機嫌そうな声が出る。
鷹に夢中になっているのだろう、名無しさんに振り向く様子がない。
鍾会はまたも小さく舌を打つと、鷹を呼んで腕を空に伸ばした。
それを見た鷹が真っ直ぐに鍾会の腕に爪を立てて降り立つ。
同時に名無しさんの視線が漸く鍾会を見た。
「ふふっ、やっぱり鍾会様の鷹は賢いですね」
緩く微笑む彼女に一瞬見惚れた鍾会は、取り繕うように咳払いをして言う。
その耳が赤く染まっていた。
「その・・・今日は良いのか?」
「何がですか?」
細い首を傾げ、ぱちぱちと目を瞬かせる名無しさんの仕草に、鍾会の息が詰まる。
一々、可愛い。
「だから・・・その、あれだ!」
「あれ?」
鍾会の言う事が本当に分からなくて、名無しさんは今度は反対側に首を傾げて見せた。
胸を鷲掴みにされたようでままならない。
可愛い。
もう、可愛いしか出て来ない。
「・・・っ、相変わらず察しの悪い!」
鍾会は乱暴な動きで鷹を解放すると、彼女の腕を取った。
上着を手早く脱ぎ、有無を言わせず名無しさんの右腕にぐるぐると巻き付ける。
突然の彼の行動に名無しさんは目を驚きに開いたが、直ぐに何をしようとしているのかが分かり、大人しく、鍾会にされるに任せていた。