仕草も、声も、身のこなしも
貴女のお名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
店を出た徐晃は、少し進んだ所で足を止め、心細そうに袖を握ったままでいる名無しさんに声を掛けた。
「名無しさん、余り握られていると袖が皺になるのだが」
徐晃は慌てた様子で袖を放して逃げる彼女の手を追い、半ば強引に握ってからにこりと笑顔を見せる。
「うむ、矢張、こちらの方が落ち着く」
そう言って、再び歩き出す徐晃の後ろを名無しさんは付いて歩き始めた。
この道の先は、彼の自宅だ。
軽い足取りで行く徐晃の背中を、名無しさんは幾分か重苦しい気持ちで見上げる。
今となっては明日になるが、偶然にも休みが重なったと知った二人が先日、
「あの、徐晃様・・・!」
「名無しさん、良ければ・・・」
一緒に過ごさないかと、互いに同じ事を考え、それなら夕食を外で、それから徐晃の自宅へ向かおうとなったのは極めて自然な事で、今日と言う日を心待ちにしていたのだった。
昨日までは、二人きりで甘い夜を迎えるだろうと期待に胸を膨らませてもいた。
それならば何故、今になって、名無しさんの気持ちが重苦しいのか、徐晃は慣れない妓楼に疲れたのだろうとばかり思っていた。
その名無しさんの胸の内を知ったのは、自宅に着き、客人である彼女に先に湯殿を勧めた後の事である。
随分、長い湯浴みだと徐晃が心配して様子を見に行こうとした矢先、使用人の一人が走って来るのが見えた。
名無しさんに何かあったのか、徐晃は問い掛けるよりも早く、湯殿に向かう。
湯殿の前では困ったように右往左往している使用人たちの姿があった。
「どうやら、のぼせておられるようで・・・」
使用人たちも、中々、湯殿から出て来ない名無しさんを心配して中を覗いた所、ぐったりと湯船の縁に凭れかかっている彼女を発見したと言う。
男の使用人が居ない訳ではないのだが、名無しさんは若い女性だ、恋人でもない異性に湯帷子を着ているとは言え、あられもない姿を見られたくないだろうし、ぐったりとしている人間を抱えるには女性だけでは力が足りない。
徐晃は短く頷くと、湯殿に足を踏み入れ、自身が濡れるのも構わずに名無しさんの体を抱き上げた。
女性の使用人を呼び、彼女の濡れた体を拭かせて羽織るもので覆ってから、寝室へと運ぶ。
濡れてしまったついでに、名無しさんを休ませている間に手早く身を清め、戻って来た徐晃は目を閉じている彼女の小さな頭を優しく持ち上げて膝に乗せた。
団扇を使って名無しさんの頬に風を送る。
「う・・・ん」
やがて、小さく呻き、ゆるゆると開いた名無しさんの瞼に、徐晃はほっと息を吐いた。
「気が付いたか」
「徐晃・・・様?」
名無しさんは自分を見下ろす徐晃の名を呼び、何度か瞬きを繰り返す。
どうやら、未だぼんやりとしているらしい、何処に居るのか分かっていない様子だった。
「あの、私・・・」
「気分は如何か」
湯殿でのぼせていたのだと、徐晃から聞かされ、名無しさんは湯に浸かっていた事を思い出したようだった。
「済みません、ご迷惑を・・・」
「迷惑と言う程のものでもないでござる」
徐晃は朗らかな笑顔を返すと、続けて言う。
「体を起こせそうならば、水を」
言われて、名無しさんは徐晃の膝に頭を預けている事に気付き、起き上がろうと体を動かした。
「急に動くと体に悪い」
徐晃は自分に凭れさせるようにして彼女の体を支えながらゆっくりと起き上がらせ、寝台の傍の卓に置いていた水差しから杯に水を注いで名無しさんの口元に運ぶ。
唇に杯を触れさせる徐晃の手に名無しさんは両手を添えて少しずつ、水を口に含んだ。
杯が空になった所で漸く、人心地ついたように深く息を吐く。
「うむ、大丈夫そうでござるな」
「本当にごめんなさい・・・」
と、名無しさんは恥ずかしそうに俯き、そこで初めて、自分の格好に頬を染めた。
のぼせた体を冷やす為であろう、薄物一枚を緩く羽織っているだけの上、締め付けるのも良くないと思われたのか、下着すら着けていない。
徐晃にはこれまでに何度も、それこそ体の隅々まで見られているのだから、そう恥ずかしがる事もないのだが、名無しさんは急いで前を掻き合わせる。
その恥じらう様子は徐晃の目に愛らしく映るが、どこか違和感を覚え、彼女の顔をそっと覗き込んで窺い見た。
そうすれば益々、搔き合わせた前を強く握り締める様子に、これは一体、どうした事かと首を傾げる。
「名無しさん?」
未だ気分が優れないのだろうかと、心配して続けて問い掛けて来る彼に、名無しさんは首を振って見せた。
「何でもないです。ちょっと、疲れただけで・・・」
それを言葉通りに受け取る程、徐晃は鈍い男ではない。
名無しさんが見せる様子に、徐晃は以前、彼女を喜ばせようとして一人で突っ走った事を思い出した。
良かれと思って取った行動が、却って名無しさんの気持ちを沈ませてしまったあの日以来、気を付けているつもりではいるが、もしや、また拙者は的外れな事を仕出かしたのだろうかと、今日の出来事を振り返ってみる。
「名無しさん、余り握られていると袖が皺になるのだが」
徐晃は慌てた様子で袖を放して逃げる彼女の手を追い、半ば強引に握ってからにこりと笑顔を見せる。
「うむ、矢張、こちらの方が落ち着く」
そう言って、再び歩き出す徐晃の後ろを名無しさんは付いて歩き始めた。
この道の先は、彼の自宅だ。
軽い足取りで行く徐晃の背中を、名無しさんは幾分か重苦しい気持ちで見上げる。
今となっては明日になるが、偶然にも休みが重なったと知った二人が先日、
「あの、徐晃様・・・!」
「名無しさん、良ければ・・・」
一緒に過ごさないかと、互いに同じ事を考え、それなら夕食を外で、それから徐晃の自宅へ向かおうとなったのは極めて自然な事で、今日と言う日を心待ちにしていたのだった。
昨日までは、二人きりで甘い夜を迎えるだろうと期待に胸を膨らませてもいた。
それならば何故、今になって、名無しさんの気持ちが重苦しいのか、徐晃は慣れない妓楼に疲れたのだろうとばかり思っていた。
その名無しさんの胸の内を知ったのは、自宅に着き、客人である彼女に先に湯殿を勧めた後の事である。
随分、長い湯浴みだと徐晃が心配して様子を見に行こうとした矢先、使用人の一人が走って来るのが見えた。
名無しさんに何かあったのか、徐晃は問い掛けるよりも早く、湯殿に向かう。
湯殿の前では困ったように右往左往している使用人たちの姿があった。
「どうやら、のぼせておられるようで・・・」
使用人たちも、中々、湯殿から出て来ない名無しさんを心配して中を覗いた所、ぐったりと湯船の縁に凭れかかっている彼女を発見したと言う。
男の使用人が居ない訳ではないのだが、名無しさんは若い女性だ、恋人でもない異性に湯帷子を着ているとは言え、あられもない姿を見られたくないだろうし、ぐったりとしている人間を抱えるには女性だけでは力が足りない。
徐晃は短く頷くと、湯殿に足を踏み入れ、自身が濡れるのも構わずに名無しさんの体を抱き上げた。
女性の使用人を呼び、彼女の濡れた体を拭かせて羽織るもので覆ってから、寝室へと運ぶ。
濡れてしまったついでに、名無しさんを休ませている間に手早く身を清め、戻って来た徐晃は目を閉じている彼女の小さな頭を優しく持ち上げて膝に乗せた。
団扇を使って名無しさんの頬に風を送る。
「う・・・ん」
やがて、小さく呻き、ゆるゆると開いた名無しさんの瞼に、徐晃はほっと息を吐いた。
「気が付いたか」
「徐晃・・・様?」
名無しさんは自分を見下ろす徐晃の名を呼び、何度か瞬きを繰り返す。
どうやら、未だぼんやりとしているらしい、何処に居るのか分かっていない様子だった。
「あの、私・・・」
「気分は如何か」
湯殿でのぼせていたのだと、徐晃から聞かされ、名無しさんは湯に浸かっていた事を思い出したようだった。
「済みません、ご迷惑を・・・」
「迷惑と言う程のものでもないでござる」
徐晃は朗らかな笑顔を返すと、続けて言う。
「体を起こせそうならば、水を」
言われて、名無しさんは徐晃の膝に頭を預けている事に気付き、起き上がろうと体を動かした。
「急に動くと体に悪い」
徐晃は自分に凭れさせるようにして彼女の体を支えながらゆっくりと起き上がらせ、寝台の傍の卓に置いていた水差しから杯に水を注いで名無しさんの口元に運ぶ。
唇に杯を触れさせる徐晃の手に名無しさんは両手を添えて少しずつ、水を口に含んだ。
杯が空になった所で漸く、人心地ついたように深く息を吐く。
「うむ、大丈夫そうでござるな」
「本当にごめんなさい・・・」
と、名無しさんは恥ずかしそうに俯き、そこで初めて、自分の格好に頬を染めた。
のぼせた体を冷やす為であろう、薄物一枚を緩く羽織っているだけの上、締め付けるのも良くないと思われたのか、下着すら着けていない。
徐晃にはこれまでに何度も、それこそ体の隅々まで見られているのだから、そう恥ずかしがる事もないのだが、名無しさんは急いで前を掻き合わせる。
その恥じらう様子は徐晃の目に愛らしく映るが、どこか違和感を覚え、彼女の顔をそっと覗き込んで窺い見た。
そうすれば益々、搔き合わせた前を強く握り締める様子に、これは一体、どうした事かと首を傾げる。
「名無しさん?」
未だ気分が優れないのだろうかと、心配して続けて問い掛けて来る彼に、名無しさんは首を振って見せた。
「何でもないです。ちょっと、疲れただけで・・・」
それを言葉通りに受け取る程、徐晃は鈍い男ではない。
名無しさんが見せる様子に、徐晃は以前、彼女を喜ばせようとして一人で突っ走った事を思い出した。
良かれと思って取った行動が、却って名無しさんの気持ちを沈ませてしまったあの日以来、気を付けているつもりではいるが、もしや、また拙者は的外れな事を仕出かしたのだろうかと、今日の出来事を振り返ってみる。