決して心変わりしない
貴女のお名前
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灯された明かりは一つ、室内は薄暗い、周泰は体を寄せると、窺うように名無しさんの顔を覗き込んだ。
彼女の表情は、声と同じく、気まずそうだったが、泣いていた訳ではないようだ、瞳は濡れていない。
周泰は安堵の息を吐いてから、申し訳なさそうに言った。
「・・・辛い思いをさせた・・・」
名無しさんがこうなるのは、塞ぎ込むのは自分の所為だ。
その優しい性格故に、癒えたとは言え、この体に残る数多の傷跡に、彼女は心を痛めてしまう。
しかし、名無しさんもまた将の一人、一度 、戦となれば従軍する立場である。
恋人だからと言って、必ずしも周泰と行動を常に共にする訳はなく、いつ死に別れるか知れないと互いに覚悟を決めてもいた。
そうと心を強く持っていても、それが戦だと理解していても、周泰の酷い傷跡を目の当たりにして時に塞ぎ込んでしまうのは、相手が愛する人ならばこそ、致し方のない事だろう。
主君を守り抜いた傷跡を誇らしいと思う周泰に同意する事もあるが、その回数は極めて少なく、名無しさんは彼がこれ以上、傷付く事を恐れていた。
周泰はそんな名無しさんを堪らなく愛おしく思うと同時に、彼女に申し訳なく思う。
恐らく、これからも傷跡は増えて行くだろう、その度に、名無しさんに辛い思いをさせてしまうのではないか。
寡黙で、余り感情を表に出さない彼の、その心の内を知っていれば、名無しさんは怖ず怖ずと手を伸ばし、顔を出すまで体を優しく撫でていてくれた周泰の手に触れた。
「ごめんなさい」
もう大丈夫だから、ありがとうございますと礼を言う名無しさんに、周泰は首を振って見せる。
漸く、名無しさんの顔に薄い笑みが浮かび、周泰は今度こそ、深く安堵した。
その様子を見て取った名無しさんは、その姿勢のまま体を伸ばして、周泰の頬に自分の唇を軽く触れさせる。
「周泰様にご心配をお掛けしたお詫び、です」
名無しさんは重ねていた手を動かし、指先を甘えるように絡めると、上目遣いに小さな声で続けて言った。
「だから・・・嫌いに、ならないで」
周泰は彼女の言葉に驚いて目を見開く。
何を言うかと思えば、名無しさんは何を思ってそう言ったのか。
負の感情のままに、一言もなく宴を中座するような真似をしてしまった事を言っているのだろうか。
そうだとしたら、確かに、人の上に立つ将として褒められた行動ではないが、これまでに何度となく、塞ぎ込む名無しさんを見て来たのだ、今更、それが理由で嫌いになる事はない。
それとも、周泰が呼んでも返事はおろか、中々掛布から顔を出さなかった事だろうか。
それならば、気にしていない。
そうなるまでに自分を思って塞ぎ込んでしまう彼女を、どうして嫌いになるだろう。
どちらの理由で名無しさんが嫌いにならないでと言ったのかは尋ねてみなければ分からないが、どちらであれ、答える言葉は決まっている。
「・・・俺が、名無しさんを・・・嫌いになる筈がない・・・」
周泰は絡められた名無しさんの指先を強く握り返した。
「・・・何があっても・・・「決して心変わりしない」・・・」
不意に、灯された明かりが、不純物でも混ざっていたのか、微かな音を立てて激しく燃え上がる。
それは、名無しさんを見詰める周泰の胸の内を表しているかのようだった。
→あとがき
彼女の表情は、声と同じく、気まずそうだったが、泣いていた訳ではないようだ、瞳は濡れていない。
周泰は安堵の息を吐いてから、申し訳なさそうに言った。
「・・・辛い思いをさせた・・・」
名無しさんがこうなるのは、塞ぎ込むのは自分の所為だ。
その優しい性格故に、癒えたとは言え、この体に残る数多の傷跡に、彼女は心を痛めてしまう。
しかし、名無しさんもまた将の一人、
恋人だからと言って、必ずしも周泰と行動を常に共にする訳はなく、いつ死に別れるか知れないと互いに覚悟を決めてもいた。
そうと心を強く持っていても、それが戦だと理解していても、周泰の酷い傷跡を目の当たりにして時に塞ぎ込んでしまうのは、相手が愛する人ならばこそ、致し方のない事だろう。
主君を守り抜いた傷跡を誇らしいと思う周泰に同意する事もあるが、その回数は極めて少なく、名無しさんは彼がこれ以上、傷付く事を恐れていた。
周泰はそんな名無しさんを堪らなく愛おしく思うと同時に、彼女に申し訳なく思う。
恐らく、これからも傷跡は増えて行くだろう、その度に、名無しさんに辛い思いをさせてしまうのではないか。
寡黙で、余り感情を表に出さない彼の、その心の内を知っていれば、名無しさんは怖ず怖ずと手を伸ばし、顔を出すまで体を優しく撫でていてくれた周泰の手に触れた。
「ごめんなさい」
もう大丈夫だから、ありがとうございますと礼を言う名無しさんに、周泰は首を振って見せる。
漸く、名無しさんの顔に薄い笑みが浮かび、周泰は今度こそ、深く安堵した。
その様子を見て取った名無しさんは、その姿勢のまま体を伸ばして、周泰の頬に自分の唇を軽く触れさせる。
「周泰様にご心配をお掛けしたお詫び、です」
名無しさんは重ねていた手を動かし、指先を甘えるように絡めると、上目遣いに小さな声で続けて言った。
「だから・・・嫌いに、ならないで」
周泰は彼女の言葉に驚いて目を見開く。
何を言うかと思えば、名無しさんは何を思ってそう言ったのか。
負の感情のままに、一言もなく宴を中座するような真似をしてしまった事を言っているのだろうか。
そうだとしたら、確かに、人の上に立つ将として褒められた行動ではないが、これまでに何度となく、塞ぎ込む名無しさんを見て来たのだ、今更、それが理由で嫌いになる事はない。
それとも、周泰が呼んでも返事はおろか、中々掛布から顔を出さなかった事だろうか。
それならば、気にしていない。
そうなるまでに自分を思って塞ぎ込んでしまう彼女を、どうして嫌いになるだろう。
どちらの理由で名無しさんが嫌いにならないでと言ったのかは尋ねてみなければ分からないが、どちらであれ、答える言葉は決まっている。
「・・・俺が、名無しさんを・・・嫌いになる筈がない・・・」
周泰は絡められた名無しさんの指先を強く握り返した。
「・・・何があっても・・・「決して心変わりしない」・・・」
不意に、灯された明かりが、不純物でも混ざっていたのか、微かな音を立てて激しく燃え上がる。
それは、名無しさんを見詰める周泰の胸の内を表しているかのようだった。
→あとがき