ぴったりと寄り添って
貴女のお名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
鍾会は彼女の右腕に手袋を着け終わると、続けて外套を脱ぎ、自分の右腕に巻き付けた。
名無しさんの細腕では、鷹を長くは支え切れないだろう、その時の為の代わりだ。
そうしてから、鍾会は彼女の背後にぴたりと寄り添い、その小さな体を支えて、腰に外套を巻き付けていない左腕を回した。
「あの・・・鍾会様」
後ろから抱き締められるような体勢に、名無しさんから戸惑った声が上がる。
「か、勘違いするな。こうした方が効率的だからだ」
答える声が上擦っていては説得力もないが、名無しさんはそれ以上は何も言わず、頬を赤らめていた。
鍾会は気を取り直すように咳払いをすると、今度は名無しさんの右腕に自身の右腕を添わせて持ち上げる。
「来ると思って待っていろ」
そうすれば、怖いものではない。
耳元で聞こえた鍾会の声に名無しさんは頷いた。
空に伸びた腕を見付けた鷹が下降し、間近に迫る羽ばたく音に、無意識にきゅっと目を閉じる。
続けて腕に重さを感じて、恐る恐る瞼を開けた名無しさんは、大人しく止まる鷹の姿に感嘆の声を上げた。
「まあ・・・!」
その感動のままに笑顔を浮かべ、鍾会に首を巡らせる。
「鍾会様、見て下さい!」
興奮気味に頬を染め、はしゃぐ様子を見せる彼女の姿は、この上なく可愛らしく、鍾会の目に映っていた。
今まで物静かに、穏やかに微笑んでいるだけの名無しさんが初めて見せた、満面の笑顔に鍾会は胸の鼓動を大きく高鳴らせる。
ああ、くそ、そんな良い笑顔を向けるな、どうにかなりそうだ。
こんな時、彼女と一緒に喜び、微笑んでやれば、心象も良くなるのだろうが、残念な事にそれができる鍾会ではなかった。
それでも、気遣う事はできるようで、鍾会は鷹の体重に震えそうな名無しさんの細腕を支える手に力を込めた。
それに気付いて、名無しさんが嬉しそうに言う。
「ふふ・・・鍾会様はお優しいのですね」
「な、何を今更。英才教育を受けた私をそこら辺の野蛮な男と一緒にするな」
だが、好きな女に優しいと言われて、悪い気はしない。
もっと喜ばせてやろうと、鍾会は左手で腰に提げている小さな袋をまさぐり、干し肉を取り出した。
「ほら、折角だからやってみろ」
と、彼女の左手に握らせる。
「突かれたりしませんか?」
怖々と訊ねて来る名無しさんに、絶対の自信を持って、鍾会は答えて言った。
「大丈夫だ、私と同じで賢い」
鷹は首を傾げ、暫く目の前にぶら下がった干し肉を見ていたが、名無しさんの手に嘴を近付けると、引ったくるようにして奪い取り、ひょいと宙に飛ばしてから、落ちて来るそれを口を開いて飲み込む。
途端に、名無しさんの顔に再び、あの愛らしい笑顔が浮かんだ。
「わぁ、凄い!器用なのね」
「これで名無しさんを餌をくれる相手だと認識した。羽に触ってみても良いぞ」
「本当ですか?それじゃあ、少しだけ・・・」
名無しさんは左手を伸ばし、鷹の羽にゆっくりと触れる。
「綺麗・・・」
これだけ、自分が「ぴったりと寄り添って」いる事も忘れたように、きらきらと瞳を輝かせ、優しく鷹を撫で続ける名無しさんに、鍾会は結構な好印象を与えられたのではないかと、頬を緩ませた。
こんなにも喜んでいるのだ、次の機会にも名無しさんに鷹を触らせてやろうと思う。
もっと名無しさんとの距離を縮めたいと願いながら。
→あとがき
名無しさんの細腕では、鷹を長くは支え切れないだろう、その時の為の代わりだ。
そうしてから、鍾会は彼女の背後にぴたりと寄り添い、その小さな体を支えて、腰に外套を巻き付けていない左腕を回した。
「あの・・・鍾会様」
後ろから抱き締められるような体勢に、名無しさんから戸惑った声が上がる。
「か、勘違いするな。こうした方が効率的だからだ」
答える声が上擦っていては説得力もないが、名無しさんはそれ以上は何も言わず、頬を赤らめていた。
鍾会は気を取り直すように咳払いをすると、今度は名無しさんの右腕に自身の右腕を添わせて持ち上げる。
「来ると思って待っていろ」
そうすれば、怖いものではない。
耳元で聞こえた鍾会の声に名無しさんは頷いた。
空に伸びた腕を見付けた鷹が下降し、間近に迫る羽ばたく音に、無意識にきゅっと目を閉じる。
続けて腕に重さを感じて、恐る恐る瞼を開けた名無しさんは、大人しく止まる鷹の姿に感嘆の声を上げた。
「まあ・・・!」
その感動のままに笑顔を浮かべ、鍾会に首を巡らせる。
「鍾会様、見て下さい!」
興奮気味に頬を染め、はしゃぐ様子を見せる彼女の姿は、この上なく可愛らしく、鍾会の目に映っていた。
今まで物静かに、穏やかに微笑んでいるだけの名無しさんが初めて見せた、満面の笑顔に鍾会は胸の鼓動を大きく高鳴らせる。
ああ、くそ、そんな良い笑顔を向けるな、どうにかなりそうだ。
こんな時、彼女と一緒に喜び、微笑んでやれば、心象も良くなるのだろうが、残念な事にそれができる鍾会ではなかった。
それでも、気遣う事はできるようで、鍾会は鷹の体重に震えそうな名無しさんの細腕を支える手に力を込めた。
それに気付いて、名無しさんが嬉しそうに言う。
「ふふ・・・鍾会様はお優しいのですね」
「な、何を今更。英才教育を受けた私をそこら辺の野蛮な男と一緒にするな」
だが、好きな女に優しいと言われて、悪い気はしない。
もっと喜ばせてやろうと、鍾会は左手で腰に提げている小さな袋をまさぐり、干し肉を取り出した。
「ほら、折角だからやってみろ」
と、彼女の左手に握らせる。
「突かれたりしませんか?」
怖々と訊ねて来る名無しさんに、絶対の自信を持って、鍾会は答えて言った。
「大丈夫だ、私と同じで賢い」
鷹は首を傾げ、暫く目の前にぶら下がった干し肉を見ていたが、名無しさんの手に嘴を近付けると、引ったくるようにして奪い取り、ひょいと宙に飛ばしてから、落ちて来るそれを口を開いて飲み込む。
途端に、名無しさんの顔に再び、あの愛らしい笑顔が浮かんだ。
「わぁ、凄い!器用なのね」
「これで名無しさんを餌をくれる相手だと認識した。羽に触ってみても良いぞ」
「本当ですか?それじゃあ、少しだけ・・・」
名無しさんは左手を伸ばし、鷹の羽にゆっくりと触れる。
「綺麗・・・」
これだけ、自分が「ぴったりと寄り添って」いる事も忘れたように、きらきらと瞳を輝かせ、優しく鷹を撫で続ける名無しさんに、鍾会は結構な好印象を与えられたのではないかと、頬を緩ませた。
こんなにも喜んでいるのだ、次の機会にも名無しさんに鷹を触らせてやろうと思う。
もっと名無しさんとの距離を縮めたいと願いながら。
→あとがき