私には富も名声もいらない
貴女のお名前
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酒で火照った体を夜風で冷まし、慣れた廊下を二人は並んで歩く。
風に乗って聞こえる賑やかな声は、自分たちと同じように祝杯を上げている部下のものだろうか。
それを聞くともなしに聞きながら、名無しさんは自室の扉を開け、先に足を踏み入れた。
扉が閉まる音と同時に、背後から伸びて来た郭嘉の腕に強く抱き締められた名無しさんは、反射的に身を固くする。
そのまま、肩越しに顎を掴まれ、無理矢理、上を向かされたと思った時には、郭嘉に口を塞がれていた。
「んっ・・・」
深くはない、だが、長い。
唇の感触を楽しむような気配の中、腹の辺りを触られる。
郭嘉は器用な事に、名無しさんを抱き締める手の、その指先で彼女の腰紐を解いていた。
微かな衣擦れの音の後に前襟が緩み、郭嘉の唇が笑みを作る。
別に張り合う必要もないが、名無しさんは体を捩り、自分の背中と郭嘉の体の間に空間を作ると、そこに腕を差し入れた。
郭嘉の腰紐を探して指先をもぞもぞと動かす。
そうと気付いた郭嘉は、ここだと言うように名無しさんの手に体を寄せて行った。
名無しさんは指先に紐の端を認めると、勢いを付けて抜き取る。
郭嘉はそうなってから、唇を離して言った。
「今夜も、刺激的な夜になりそうだね」
部屋の入り口から寝台まで、距離にしてはそう長くはない。
その間に、郭嘉は一体どんな妙技を振るったのか、寝台に辿り着く頃には、名無しさんが身に着けているのは、髪を纏めている簪一本だけになっていた。
全く、手が早いと言うか、手際が良いと言うか、名無しさんは覆い被さって来る郭嘉を呆れ半分、感心半分の面持ちで見上げる。
郭嘉の手が簪に触れた。
「名無しさん・・・良いかな」
熱っぽい視線を向けられ、名無しさんは頷こうとして、その前に口を開いた。
「郭嘉、頼みがある」
「うん、何かな?」
痛くしないでくれと言うのなら、勿論だ。
気持ち良くしてくれと言うのなら、言われるまでもなく存分にしてやるつもりだ。
「今回の戦は我が軍の勝利だ。恐らく、また私の昇進の話が出て来るだろう」
しかし、残念ながら、名無しさんの言葉はそんな甘いものではなく、こんな時に無粋な事をと、郭嘉は簪を抜き掛けていた手を止める。
「多分、そうだろうね」
郭嘉は彼女に覆い被さっていた体を起こして、名無しさんの声に耳を傾けた。
名無しさんも起き上がり、郭嘉の少し冷めてしまった瞳を見詰めて言う。
「郭嘉、「私には富も名声もいらない」。郭嘉からも一言、殿に言ってくれないか」
「名無しさんは本当に欲がないね」
薄く微笑む郭嘉を否定して、名無しさんは首を振った。
「そんな事はない、私にだって欲はあるさ」
最近になって、どうしても欲しいものができたと言う名無しさんに、郭嘉は興味を覚えて目を見開く。
そんな事を言う名無しさんは珍しい。
「へぇ・・・初耳だね。でも、それと私が殿に進言するのとどう言う関係があるのかな」
名無しさんは冷たい下腹をそっと撫でた。
どうか、否とは言わないでくれと、名無しさんは祈る思いで言葉を紡ぐ。
→あとがき
風に乗って聞こえる賑やかな声は、自分たちと同じように祝杯を上げている部下のものだろうか。
それを聞くともなしに聞きながら、名無しさんは自室の扉を開け、先に足を踏み入れた。
扉が閉まる音と同時に、背後から伸びて来た郭嘉の腕に強く抱き締められた名無しさんは、反射的に身を固くする。
そのまま、肩越しに顎を掴まれ、無理矢理、上を向かされたと思った時には、郭嘉に口を塞がれていた。
「んっ・・・」
深くはない、だが、長い。
唇の感触を楽しむような気配の中、腹の辺りを触られる。
郭嘉は器用な事に、名無しさんを抱き締める手の、その指先で彼女の腰紐を解いていた。
微かな衣擦れの音の後に前襟が緩み、郭嘉の唇が笑みを作る。
別に張り合う必要もないが、名無しさんは体を捩り、自分の背中と郭嘉の体の間に空間を作ると、そこに腕を差し入れた。
郭嘉の腰紐を探して指先をもぞもぞと動かす。
そうと気付いた郭嘉は、ここだと言うように名無しさんの手に体を寄せて行った。
名無しさんは指先に紐の端を認めると、勢いを付けて抜き取る。
郭嘉はそうなってから、唇を離して言った。
「今夜も、刺激的な夜になりそうだね」
部屋の入り口から寝台まで、距離にしてはそう長くはない。
その間に、郭嘉は一体どんな妙技を振るったのか、寝台に辿り着く頃には、名無しさんが身に着けているのは、髪を纏めている簪一本だけになっていた。
全く、手が早いと言うか、手際が良いと言うか、名無しさんは覆い被さって来る郭嘉を呆れ半分、感心半分の面持ちで見上げる。
郭嘉の手が簪に触れた。
「名無しさん・・・良いかな」
熱っぽい視線を向けられ、名無しさんは頷こうとして、その前に口を開いた。
「郭嘉、頼みがある」
「うん、何かな?」
痛くしないでくれと言うのなら、勿論だ。
気持ち良くしてくれと言うのなら、言われるまでもなく存分にしてやるつもりだ。
「今回の戦は我が軍の勝利だ。恐らく、また私の昇進の話が出て来るだろう」
しかし、残念ながら、名無しさんの言葉はそんな甘いものではなく、こんな時に無粋な事をと、郭嘉は簪を抜き掛けていた手を止める。
「多分、そうだろうね」
郭嘉は彼女に覆い被さっていた体を起こして、名無しさんの声に耳を傾けた。
名無しさんも起き上がり、郭嘉の少し冷めてしまった瞳を見詰めて言う。
「郭嘉、「私には富も名声もいらない」。郭嘉からも一言、殿に言ってくれないか」
「名無しさんは本当に欲がないね」
薄く微笑む郭嘉を否定して、名無しさんは首を振った。
「そんな事はない、私にだって欲はあるさ」
最近になって、どうしても欲しいものができたと言う名無しさんに、郭嘉は興味を覚えて目を見開く。
そんな事を言う名無しさんは珍しい。
「へぇ・・・初耳だね。でも、それと私が殿に進言するのとどう言う関係があるのかな」
名無しさんは冷たい下腹をそっと撫でた。
どうか、否とは言わないでくれと、名無しさんは祈る思いで言葉を紡ぐ。
→あとがき