慎みなき眼差し
貴女のお名前
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「それで、どうしてお髭を?」
と、尋ねられ、徐庶は一瞬、答えに詰まる様子を見せた。
「どうしてって・・・」
背けていた視線をちらりと移せば、名無しさんと目が合って、再び慌てて逸らす。
その姿勢のまま、徐庶はぽつりと言った。
「その方が、名無しさんに嫌な思いをさせないんじゃないかと・・・」
「私に?」
名無しさんはきょとんとすると、心底、不思議そうに言う。
「嫌な思いって、何ですか?」
彼と付き合って来た今日まで、恋人になる前も、嫌な思いなんて一つもした事がない。
徐庶様は何をお考えなのかしら。
徐庶はそれに答えようと、もごとごと口を開いた。
「俺と口付ける時、名無しさんが少しだけびくって震えるから・・・。その、髭が当たって痛いんじゃないかと思ったんだ」
そうだったかしらと、名無しさんは首を傾げる。
痛いと思った事はないけれど、もしかしたら、無意識の内に痛いと思っていて、それが行動に現れたのかもしれない。
多分、それも含めた上で、徐庶様との口付けに喜びを覚えているとは思う。
名無しさんは指先でそっと自分の唇に触れた。
でも、折角だから、お髭のない徐庶様とも・・・口付けてみたい。
そう思ったら、もう止められなかった。
「あの、徐庶様・・・口付けても良いですか?」
「えぇっ!?」
名無しさんの呟きに、何て事を言いだすのかと、徐庶が驚き、目を大きく見開く。
名無しさんは椅子に腰掛ける彼に、じりじりと身を寄せて覆い被さるように顔を近付けると、少しだけ見下ろすようにして熱っぽい視線を送った。
「駄目・・・ですか?」
吐息が触れる距離で、潤んだ瞳に見詰められ、徐庶はごくりと喉の奥を鳴らす。
何だかよく分からないけれど、頬を染めた名無しさんに迫られて嫌な気はしない。
徐庶は首を縦に振って頷いた。
それを見て取った名無しさんは、直ぐ様、自分の唇を徐庶の唇に押し重ねる。
「ん・・・」
と、声を上げたのは、思いの外、強く押し付けられる彼女の唇に目を白黒させている徐庶だった。
暫くしてから唇を離し、顔を上げた名無しさんは、うっとりとした表情を浮かべている。
「名無しさん・・・?」
「どうしましょう、徐庶様・・・」
吐く溜め息すら、どことなく艶めいていて、徐庶は彼女を恐る恐る見上げて尋ねた。
「な、何がだい?」
「徐庶様としてるのに、他の人としているみたいで・・・」
浮気じゃないのに、浮気をしているような背徳感にぞくぞくする。
名無しさんは手を伸ばすと、徐庶の唇に触れて言った。
「もう一回・・・良いですか?」
尋ねておきながら、返事を待たずに腰を屈めて徐庶に口付ける。
先程よりも長く、唇に唇で触れて来る名無しさんに、徐庶はされるまま、身を委ねていた。
名無しさんがこんなに積極的になるなら、髭を剃るのも悪くない。
名無しさんは小さな音を立てて唇を離すと、深々と甘い吐息を溢して言う。
「徐庶様・・・今夜、お部屋に行っても良いですか?」
お髭のない徐庶様と・・・。
恥ずかしそうに言葉の最後を濁しながらも、名無しさんの瞳は熱っぽく、徐庶は顔を真っ赤に染め上げた。
朝っぱらから誘われるとまでは思ってもみなかったが、徐庶も男だ、それを断る理由はない。
勿論、大歓迎で、名無しさんの「慎みなき眼差し」に首を縦に振る。
名無しさんは名残惜しそうに徐庶から離れると、
「今日はお仕事が手に付きそうにありません・・・」
お髭のない徐庶様の所為ですからねと、恨めしい視線を投げて寄越した。
「ちゃんと責任、取って下さいね?」
→あとがき
と、尋ねられ、徐庶は一瞬、答えに詰まる様子を見せた。
「どうしてって・・・」
背けていた視線をちらりと移せば、名無しさんと目が合って、再び慌てて逸らす。
その姿勢のまま、徐庶はぽつりと言った。
「その方が、名無しさんに嫌な思いをさせないんじゃないかと・・・」
「私に?」
名無しさんはきょとんとすると、心底、不思議そうに言う。
「嫌な思いって、何ですか?」
彼と付き合って来た今日まで、恋人になる前も、嫌な思いなんて一つもした事がない。
徐庶様は何をお考えなのかしら。
徐庶はそれに答えようと、もごとごと口を開いた。
「俺と口付ける時、名無しさんが少しだけびくって震えるから・・・。その、髭が当たって痛いんじゃないかと思ったんだ」
そうだったかしらと、名無しさんは首を傾げる。
痛いと思った事はないけれど、もしかしたら、無意識の内に痛いと思っていて、それが行動に現れたのかもしれない。
多分、それも含めた上で、徐庶様との口付けに喜びを覚えているとは思う。
名無しさんは指先でそっと自分の唇に触れた。
でも、折角だから、お髭のない徐庶様とも・・・口付けてみたい。
そう思ったら、もう止められなかった。
「あの、徐庶様・・・口付けても良いですか?」
「えぇっ!?」
名無しさんの呟きに、何て事を言いだすのかと、徐庶が驚き、目を大きく見開く。
名無しさんは椅子に腰掛ける彼に、じりじりと身を寄せて覆い被さるように顔を近付けると、少しだけ見下ろすようにして熱っぽい視線を送った。
「駄目・・・ですか?」
吐息が触れる距離で、潤んだ瞳に見詰められ、徐庶はごくりと喉の奥を鳴らす。
何だかよく分からないけれど、頬を染めた名無しさんに迫られて嫌な気はしない。
徐庶は首を縦に振って頷いた。
それを見て取った名無しさんは、直ぐ様、自分の唇を徐庶の唇に押し重ねる。
「ん・・・」
と、声を上げたのは、思いの外、強く押し付けられる彼女の唇に目を白黒させている徐庶だった。
暫くしてから唇を離し、顔を上げた名無しさんは、うっとりとした表情を浮かべている。
「名無しさん・・・?」
「どうしましょう、徐庶様・・・」
吐く溜め息すら、どことなく艶めいていて、徐庶は彼女を恐る恐る見上げて尋ねた。
「な、何がだい?」
「徐庶様としてるのに、他の人としているみたいで・・・」
浮気じゃないのに、浮気をしているような背徳感にぞくぞくする。
名無しさんは手を伸ばすと、徐庶の唇に触れて言った。
「もう一回・・・良いですか?」
尋ねておきながら、返事を待たずに腰を屈めて徐庶に口付ける。
先程よりも長く、唇に唇で触れて来る名無しさんに、徐庶はされるまま、身を委ねていた。
名無しさんがこんなに積極的になるなら、髭を剃るのも悪くない。
名無しさんは小さな音を立てて唇を離すと、深々と甘い吐息を溢して言う。
「徐庶様・・・今夜、お部屋に行っても良いですか?」
お髭のない徐庶様と・・・。
恥ずかしそうに言葉の最後を濁しながらも、名無しさんの瞳は熱っぽく、徐庶は顔を真っ赤に染め上げた。
朝っぱらから誘われるとまでは思ってもみなかったが、徐庶も男だ、それを断る理由はない。
勿論、大歓迎で、名無しさんの「慎みなき眼差し」に首を縦に振る。
名無しさんは名残惜しそうに徐庶から離れると、
「今日はお仕事が手に付きそうにありません・・・」
お髭のない徐庶様の所為ですからねと、恨めしい視線を投げて寄越した。
「ちゃんと責任、取って下さいね?」
→あとがき