愛しい頬よ
貴女のお名前
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名無しさんに身請けの話が持ち上がったのは、その数日後の事である。
「魯粛様が私を・・・?」
あの日の帰り、魯粛は今まで以上の大金を置いて行ったらしい。
「名無しさんは俺の準備が整い次第、言い値で身請けする。それまで、客を付けないでくれ」
魯粛の都合で名無しさんが客を取れないが故に発生するであろう、店の損失分も含め、それは結構な額だった。
店側としても異論はなく、後は名無しさんの気持ちだけだと言う。
「喜んで・・・喜んで、魯粛様の元に参ります!」
名無しさんは頬を上気させると、強く、首を縦に振った。
やっと、認めて下さった。
やっと、魯粛様のものになれる。
やっと、魯粛様に思いを伝えられる。
名無しさんの手元に鮮やかな衣裳と、豪華な簪が魯粛から届いたのは更に数日後、そして、今日と言う日に、彼女はそれを身に着け、頬に月を浮かべて彼の元へと向かうのだ。
今にも喜びに溢れてしまいそうな涙を堪え、幸せに微笑む名無しさんは美しく、閨で輝く月の身請けと聞いて遣って来た人々の視線を集めていた。
こんなに美しい娘だったのかと、悔しがるような声も聞こえる。
その様子に、魯粛は誇らしさを覚えて微笑んだ。
初めに、彼女に目を付けたのは自分なのだ。
誰もが醜いと顔を背けていた、あの傷が、美しく輝くものだと見抜いたのは他の誰でもない、この自分なのだ。
魯粛が名無しさんに手を差し出すと、彼女の白い手がするりと滑り込んで来る。
名無しさんは大粒の涙で頬を濡らして言った。
「魯粛様。ずっと、ずっと・・・この時を待っていました」
「名無しさん。「愛しい頬よ」、今日からお前は俺の月だ。俺の側でずっと輝いていてくれ」
その月が愛する男の腕の中で、より一層美しく輝く事を、魯粛は未だ知らない。
→あとがき
「魯粛様が私を・・・?」
あの日の帰り、魯粛は今まで以上の大金を置いて行ったらしい。
「名無しさんは俺の準備が整い次第、言い値で身請けする。それまで、客を付けないでくれ」
魯粛の都合で名無しさんが客を取れないが故に発生するであろう、店の損失分も含め、それは結構な額だった。
店側としても異論はなく、後は名無しさんの気持ちだけだと言う。
「喜んで・・・喜んで、魯粛様の元に参ります!」
名無しさんは頬を上気させると、強く、首を縦に振った。
やっと、認めて下さった。
やっと、魯粛様のものになれる。
やっと、魯粛様に思いを伝えられる。
名無しさんの手元に鮮やかな衣裳と、豪華な簪が魯粛から届いたのは更に数日後、そして、今日と言う日に、彼女はそれを身に着け、頬に月を浮かべて彼の元へと向かうのだ。
今にも喜びに溢れてしまいそうな涙を堪え、幸せに微笑む名無しさんは美しく、閨で輝く月の身請けと聞いて遣って来た人々の視線を集めていた。
こんなに美しい娘だったのかと、悔しがるような声も聞こえる。
その様子に、魯粛は誇らしさを覚えて微笑んだ。
初めに、彼女に目を付けたのは自分なのだ。
誰もが醜いと顔を背けていた、あの傷が、美しく輝くものだと見抜いたのは他の誰でもない、この自分なのだ。
魯粛が名無しさんに手を差し出すと、彼女の白い手がするりと滑り込んで来る。
名無しさんは大粒の涙で頬を濡らして言った。
「魯粛様。ずっと、ずっと・・・この時を待っていました」
「名無しさん。「愛しい頬よ」、今日からお前は俺の月だ。俺の側でずっと輝いていてくれ」
その月が愛する男の腕の中で、より一層美しく輝く事を、魯粛は未だ知らない。
→あとがき