夕映えに
貴女のお名前
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二人が辿り着いたのは西側の楼閣の、その最上階だった。
「うむ。矢張、ここから見る夕日はいつも素晴らしい」
稜線の向こうに消えて行く夕日を眺める劉禅の呟きに、迷ったと言いながら、彼はここに連れて来るつもりだったのだと、名無しさんは覚る。
何の為にと考えてみれば、優しい彼の事だ、恐らく、姜維に見付かって、叱られて、気落ちしている自分を励まそうとしているのだろう。
却って気を使わせてしまうとは情けない。
「劉禅様、申し訳ありません。私・・・」
何と言って謝れば良いのかと、言い掛ける彼女の言葉に、劉禅は重ねるように言う。
「ふふ、名無しさんは可笑しな事を言う。何に謝っているのだ?」
努めて、彼女に何でもない事を装って言葉を続けた。
「名無しさんのお陰で、今日はとても楽しい一日を過ごせたと言うのに」
こんなに気持ちが弾んだのは久し振りだ。
城下に行けなかった事は確かに残念だが、こそこそと城を抜け出そうとした事も、行く手を阻むように現れた姜維も、そこから逃げ出した事も、常の自分から懸け離れていて楽しかった。
「勿論、この美しい夕焼けを名無しさんと見られた事も、とても嬉しい」
劉禅はそう言って、僅かに困った様子で微笑んだ。
「だから、そう悲しそうな顔をしないでくれ。大好きな名無しさんにそのような顔をされると心が痛む」
「劉禅様・・・」
名無しさんは頬を緩め、劉禅に笑顔を向ける。
本当に、劉禅様はお優しい。
結局、城内を連れ回しただけで、何一つできなかった私を責める所か、こうして気を使って下さるのだから。
彼の側に居られる事を、彼の為に戦える事を誇らしく思う。
「劉禅様。いつか・・・いつか、仁の世を実現した暁には、その時こそ、一緒に出掛けましょうね」
劉禅も笑顔を浮かべ、力強く頷いた。
「ああ、そうだな。・・・だが、私の力だけではとても実現できそうにない。無理を言うが、名無しさん。ずっと側に居て、私を支えてくれるだろうか」
「はい、勿論です!」
名無しさんは拱手ではなく、敢えて小指を差し出す。
「劉禅様が見せて下さった、この美しい「夕映え」にお約束しましょう。熱々ぱりぱりの春巻きを一緒に食べるまで、私はずっと劉禅様のお側に居ます」
「ああ、約束だ」
劉禅も小指を差し出し、彼女の指先に絡めて言った。
「その日を一日でも早く迎える為にも、私も頑張ろう」
例え、父と比べられようとも。
例え、どれだけの期待を掛けられようとも。
貴女と一緒なら、どんな事もできそうだ。
→あとがき
「うむ。矢張、ここから見る夕日はいつも素晴らしい」
稜線の向こうに消えて行く夕日を眺める劉禅の呟きに、迷ったと言いながら、彼はここに連れて来るつもりだったのだと、名無しさんは覚る。
何の為にと考えてみれば、優しい彼の事だ、恐らく、姜維に見付かって、叱られて、気落ちしている自分を励まそうとしているのだろう。
却って気を使わせてしまうとは情けない。
「劉禅様、申し訳ありません。私・・・」
何と言って謝れば良いのかと、言い掛ける彼女の言葉に、劉禅は重ねるように言う。
「ふふ、名無しさんは可笑しな事を言う。何に謝っているのだ?」
努めて、彼女に何でもない事を装って言葉を続けた。
「名無しさんのお陰で、今日はとても楽しい一日を過ごせたと言うのに」
こんなに気持ちが弾んだのは久し振りだ。
城下に行けなかった事は確かに残念だが、こそこそと城を抜け出そうとした事も、行く手を阻むように現れた姜維も、そこから逃げ出した事も、常の自分から懸け離れていて楽しかった。
「勿論、この美しい夕焼けを名無しさんと見られた事も、とても嬉しい」
劉禅はそう言って、僅かに困った様子で微笑んだ。
「だから、そう悲しそうな顔をしないでくれ。大好きな名無しさんにそのような顔をされると心が痛む」
「劉禅様・・・」
名無しさんは頬を緩め、劉禅に笑顔を向ける。
本当に、劉禅様はお優しい。
結局、城内を連れ回しただけで、何一つできなかった私を責める所か、こうして気を使って下さるのだから。
彼の側に居られる事を、彼の為に戦える事を誇らしく思う。
「劉禅様。いつか・・・いつか、仁の世を実現した暁には、その時こそ、一緒に出掛けましょうね」
劉禅も笑顔を浮かべ、力強く頷いた。
「ああ、そうだな。・・・だが、私の力だけではとても実現できそうにない。無理を言うが、名無しさん。ずっと側に居て、私を支えてくれるだろうか」
「はい、勿論です!」
名無しさんは拱手ではなく、敢えて小指を差し出す。
「劉禅様が見せて下さった、この美しい「夕映え」にお約束しましょう。熱々ぱりぱりの春巻きを一緒に食べるまで、私はずっと劉禅様のお側に居ます」
「ああ、約束だ」
劉禅も小指を差し出し、彼女の指先に絡めて言った。
「その日を一日でも早く迎える為にも、私も頑張ろう」
例え、父と比べられようとも。
例え、どれだけの期待を掛けられようとも。
貴女と一緒なら、どんな事もできそうだ。
→あとがき