喜んで
貴女のお名前
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貴方の為なら。
血飛沫と断末魔は今は遠く、本陣に帰って来た張遼は何処に行くべきか分からず、辺りを見回した。
こちらを窺う気配は感じるものの、遠巻きに眺めているだけで、誰も彼に近寄ろうとはしなかった。
つい先日まで呂布軍に居た身だ、無理もなかろう。
かつて曹操軍を蹂躙し、数多の兵を屠って来た自分に向けられるものは恐怖が相応しい。
だが、吐いて出るのは諦めにも似た溜め息だった。
「張遼殿!」
と、呼ぶ声に振り向けば、楽進が何やら血相を変えて走って来るのが目に映った。
「楽進殿か。何か・・・」
用かと、問い掛ける言葉を遮って、楽進が口を開く。
「酷い怪我を。早く手当てをしなけれかば・・・!」
「は・・・?あ、ああ」
おろおろと言う楽進の視線を追って、初めて、人の目に自分の姿がどう移っているかに気付いた張遼は薄く笑みを浮かべた。
兵が遠巻きになるもの当然だ、元がどのような色だったか、判別できない程、具足は勿論、覆われていない服の裾にまでべったりと血が付いている。
「いや、返り血だ。私自身は怪我一つ負っていない」
涼しい顔で言って退ける張遼に、楽進は目を輝かせて言った。
「流石は張遼殿。私も精進を重ねなくては!」
彼のその素直さをありがたく思いながら、張遼は言う。
「楽進殿こそ、見事な一番槍。私もその働きに鼓舞された者の一人なれば、見習いたいものだ」
「きょ、恐縮です。でも、一番槍は譲りませんから!」
お互い、根からの武人なのだと、顔を見合わせて苦笑した。
しかし、と張遼は続けて言う。
「毎度毎度、味方を怯えさせているようでは・・・。如何したものか」
「そうですね」
相槌を打ち、考える様子を見せる楽進も、返り血を浴びてはいるが、その量は張遼よりも格段に少ない。
「具足を軽い物に変えては?」
成る程、防御は薄くなるが、身が軽くなる分、動き易く、浴びる返り血は少なくなるだろう。
しかし、それは楽進の持ち味である敏捷性を活かした彼の戦い方だ。
自分には向いていないと思うし、今更、変えられるとも思えない。
「いや、仮にそのようにしても、楽進殿のようには行かぬだろう。済まん、詰まらない事を言った。気にしないでくれ」
「そうですか・・・お役に立てず、申し訳ありません」
恐縮して去って行く楽進を見送り、張遼は考える。
呂布軍に居た時は、そこに不便を覚えた記憶はない。
周りが慣れるまでの辛抱か。
そこに至ってから、張遼は閃いたように、ああ、そうかと声を上げた。
「黒であったな」
呂布軍に居た頃とは色が違うのだ。
血飛沫と断末魔は今は遠く、本陣に帰って来た張遼は何処に行くべきか分からず、辺りを見回した。
こちらを窺う気配は感じるものの、遠巻きに眺めているだけで、誰も彼に近寄ろうとはしなかった。
つい先日まで呂布軍に居た身だ、無理もなかろう。
かつて曹操軍を蹂躙し、数多の兵を屠って来た自分に向けられるものは恐怖が相応しい。
だが、吐いて出るのは諦めにも似た溜め息だった。
「張遼殿!」
と、呼ぶ声に振り向けば、楽進が何やら血相を変えて走って来るのが目に映った。
「楽進殿か。何か・・・」
用かと、問い掛ける言葉を遮って、楽進が口を開く。
「酷い怪我を。早く手当てをしなけれかば・・・!」
「は・・・?あ、ああ」
おろおろと言う楽進の視線を追って、初めて、人の目に自分の姿がどう移っているかに気付いた張遼は薄く笑みを浮かべた。
兵が遠巻きになるもの当然だ、元がどのような色だったか、判別できない程、具足は勿論、覆われていない服の裾にまでべったりと血が付いている。
「いや、返り血だ。私自身は怪我一つ負っていない」
涼しい顔で言って退ける張遼に、楽進は目を輝かせて言った。
「流石は張遼殿。私も精進を重ねなくては!」
彼のその素直さをありがたく思いながら、張遼は言う。
「楽進殿こそ、見事な一番槍。私もその働きに鼓舞された者の一人なれば、見習いたいものだ」
「きょ、恐縮です。でも、一番槍は譲りませんから!」
お互い、根からの武人なのだと、顔を見合わせて苦笑した。
しかし、と張遼は続けて言う。
「毎度毎度、味方を怯えさせているようでは・・・。如何したものか」
「そうですね」
相槌を打ち、考える様子を見せる楽進も、返り血を浴びてはいるが、その量は張遼よりも格段に少ない。
「具足を軽い物に変えては?」
成る程、防御は薄くなるが、身が軽くなる分、動き易く、浴びる返り血は少なくなるだろう。
しかし、それは楽進の持ち味である敏捷性を活かした彼の戦い方だ。
自分には向いていないと思うし、今更、変えられるとも思えない。
「いや、仮にそのようにしても、楽進殿のようには行かぬだろう。済まん、詰まらない事を言った。気にしないでくれ」
「そうですか・・・お役に立てず、申し訳ありません」
恐縮して去って行く楽進を見送り、張遼は考える。
呂布軍に居た時は、そこに不便を覚えた記憶はない。
周りが慣れるまでの辛抱か。
そこに至ってから、張遼は閃いたように、ああ、そうかと声を上げた。
「黒であったな」
呂布軍に居た頃とは色が違うのだ。