情熱的に
貴女のお名前
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また違う一面。
卓の上のずらりと並べられた酒と肴は、集まった顔触れに劣らないだけの質と量が用意されていた。
惜し気もなく並々と注がれた酒を、乾杯の後に喉に流し込む。
「これは・・・随分と良い酒ですね」
と、荀攸が感嘆の息を吐いて言った。
鼻を抜ける香りは芳醇で、するすると喉を通り過ぎる。
「そう言って貰えると、態々取り寄せた甲斐があったと言うものだね」
今日の宴の立案者、郭嘉が嬉しそうに微笑んだ。
「残すのも勿体ない、どんどん飲んで欲しいな」
「それじゃあ、遠慮なく。さあさ、荀彧殿も」
そう言って早くも、お代わりを注ぐのは賈詡、次いでに隣に座る荀彧の杯にも酒を注いで満たす。
「あ、いえ、私はそんなに飲めませんので・・・」
「そう言わないで、荀彧殿もたまには羽目を外してみたらどうかな?」
「郭嘉殿は程々になさって下さい!」
酒を楽しむ面々が居る一方で、料理に舌鼓を打つのは名無しさんだ。
「このお肉、柔らかくて凄く美味しいですね。何のお肉かしら」
「それは猪肉だよ。新しい罠を開発してね、早速試してみたんだ。何が新しいかって言うとね・・・」
そう言って目を輝かせた満寵が、得意気に名無しさんに構造を説明して聞かせている。
軍師、策士、戦術家が集まっての宴だ、時折、物騒な話題になるものの、概ね和やかだった。
酣の頃になって、荀攸がその一言を発するまでは。
「名無しさん、いつまでそこに居るつもりですか」
「え・・・?」
蒸し物に箸を伸ばし掛けていた名無しさんは、突然の彼の発言に、その手を止めて顔を上げる。
丁度、正面に座る荀攸の目は据わっていて、不機嫌そうな表情を隠そうともしていなかった。
一目で、酔っているのだと分かる。
「おや、荀攸殿。何かご不満があるようだね」
そうと知って、郭嘉は態と尋ねて言った。
「名無しさんが隣に居ないのが不満なのかな?」
「はい、気に入りません」
荀攸は杯を卓に置くと、両手を名無しさんに向けて差し出す。
「俺の所に来て下さい」
まるで、抱っこを強請って駄々を捏ねる子供のような仕草だ。
二人が恋人同士である事は周知の事実、酔っているとは言え、人目を憚らず甘える様子を見せる荀攸に、賈詡と満寵がからかって口々に言った。
「あははあ!これまた今日の荀攸殿は積極的な事で」
「ほら、名無しさん。荀攸殿がお呼びだ」
名無しさんは顔を真っ赤にさせると、賈詡と満寵を交互に睨み付けた。
「もう!賈詡様も満寵様もからかわないで下さい!」
次いでに、助けを求めて荀彧を見るが、
「荀彧様も何か言って・・・」
「公達殿・・・そのように甘えられる方に出会えて何よりです」
これまでの荀攸の境遇を振り返ったのだろう、感無量と言った面持ちで目頭を押さえている。
「名無しさん、どうか公達殿を末永く、幸せにしてあげて下さい」
言われなくとも二人でそうなるつもりだが、言葉にして言おうものなら、何と返される事か。
名無しさんはほとほと、困り果てたように肩を落とした。
酔っ払いに抑止力を求める方が間違っている。
名無しさん自身も、多少は酔ってはいるのだが、他に比べれば可愛いもので、目元を染めているだけだった。
ちらりと身遣る荀攸は未だ、両手をこちらに向けて広げている。
彼の傍に行くのは吝かではない、愛しているし、求められるのは嬉しい。
しかし、時と場合と言うものがあるだろう。
彼らと同じように酔っているなら、いざ知らず、一人、頭がはっきりとしている名無しさんが覚えるのは羞恥心だ。
「荀攸様・・・」
と、躊躇う彼女の声音にも気付かず、荀攸は急かして言う。
「早く、俺の所に来て下さい」
不機嫌さは少しだけ、その姿を隠し、代わりに甘えるような視線を向けられ、名無しさんは胸を詰まらせた。
荀攸様が可愛い。
その視線も、その甘えた態度も、常の彼とは、それこそ、酔うと饒舌になる事は知っているが、それともまた異なる様子に、酒の所為だと分かっていても抗い難かった。
「し、仕方ないですね・・・」
と、口では言っていても、名無しさんは満更でもない表情で腰を上げる。
荀攸の隣に座る郭嘉と場所を変わって貰おうと彼に声を掛けた。
「えっと、郭嘉様・・・」
「おや、名無しさん。荀攸殿は隣にとは言ってないのでは?」
彼女の言わんとする所を察した郭嘉は、名無しさんの言葉を遮り、変わらない笑顔で続けて言う。
「ちゃんと荀攸殿の言葉を、その通りに受け止めてあげないと」
「その通りって・・・」
それは一体、どう言う意味だろうと名無しさんは首を傾げ、両手を広げたままの荀攸に視線を遣った。
卓の上のずらりと並べられた酒と肴は、集まった顔触れに劣らないだけの質と量が用意されていた。
惜し気もなく並々と注がれた酒を、乾杯の後に喉に流し込む。
「これは・・・随分と良い酒ですね」
と、荀攸が感嘆の息を吐いて言った。
鼻を抜ける香りは芳醇で、するすると喉を通り過ぎる。
「そう言って貰えると、態々取り寄せた甲斐があったと言うものだね」
今日の宴の立案者、郭嘉が嬉しそうに微笑んだ。
「残すのも勿体ない、どんどん飲んで欲しいな」
「それじゃあ、遠慮なく。さあさ、荀彧殿も」
そう言って早くも、お代わりを注ぐのは賈詡、次いでに隣に座る荀彧の杯にも酒を注いで満たす。
「あ、いえ、私はそんなに飲めませんので・・・」
「そう言わないで、荀彧殿もたまには羽目を外してみたらどうかな?」
「郭嘉殿は程々になさって下さい!」
酒を楽しむ面々が居る一方で、料理に舌鼓を打つのは名無しさんだ。
「このお肉、柔らかくて凄く美味しいですね。何のお肉かしら」
「それは猪肉だよ。新しい罠を開発してね、早速試してみたんだ。何が新しいかって言うとね・・・」
そう言って目を輝かせた満寵が、得意気に名無しさんに構造を説明して聞かせている。
軍師、策士、戦術家が集まっての宴だ、時折、物騒な話題になるものの、概ね和やかだった。
酣の頃になって、荀攸がその一言を発するまでは。
「名無しさん、いつまでそこに居るつもりですか」
「え・・・?」
蒸し物に箸を伸ばし掛けていた名無しさんは、突然の彼の発言に、その手を止めて顔を上げる。
丁度、正面に座る荀攸の目は据わっていて、不機嫌そうな表情を隠そうともしていなかった。
一目で、酔っているのだと分かる。
「おや、荀攸殿。何かご不満があるようだね」
そうと知って、郭嘉は態と尋ねて言った。
「名無しさんが隣に居ないのが不満なのかな?」
「はい、気に入りません」
荀攸は杯を卓に置くと、両手を名無しさんに向けて差し出す。
「俺の所に来て下さい」
まるで、抱っこを強請って駄々を捏ねる子供のような仕草だ。
二人が恋人同士である事は周知の事実、酔っているとは言え、人目を憚らず甘える様子を見せる荀攸に、賈詡と満寵がからかって口々に言った。
「あははあ!これまた今日の荀攸殿は積極的な事で」
「ほら、名無しさん。荀攸殿がお呼びだ」
名無しさんは顔を真っ赤にさせると、賈詡と満寵を交互に睨み付けた。
「もう!賈詡様も満寵様もからかわないで下さい!」
次いでに、助けを求めて荀彧を見るが、
「荀彧様も何か言って・・・」
「公達殿・・・そのように甘えられる方に出会えて何よりです」
これまでの荀攸の境遇を振り返ったのだろう、感無量と言った面持ちで目頭を押さえている。
「名無しさん、どうか公達殿を末永く、幸せにしてあげて下さい」
言われなくとも二人でそうなるつもりだが、言葉にして言おうものなら、何と返される事か。
名無しさんはほとほと、困り果てたように肩を落とした。
酔っ払いに抑止力を求める方が間違っている。
名無しさん自身も、多少は酔ってはいるのだが、他に比べれば可愛いもので、目元を染めているだけだった。
ちらりと身遣る荀攸は未だ、両手をこちらに向けて広げている。
彼の傍に行くのは吝かではない、愛しているし、求められるのは嬉しい。
しかし、時と場合と言うものがあるだろう。
彼らと同じように酔っているなら、いざ知らず、一人、頭がはっきりとしている名無しさんが覚えるのは羞恥心だ。
「荀攸様・・・」
と、躊躇う彼女の声音にも気付かず、荀攸は急かして言う。
「早く、俺の所に来て下さい」
不機嫌さは少しだけ、その姿を隠し、代わりに甘えるような視線を向けられ、名無しさんは胸を詰まらせた。
荀攸様が可愛い。
その視線も、その甘えた態度も、常の彼とは、それこそ、酔うと饒舌になる事は知っているが、それともまた異なる様子に、酒の所為だと分かっていても抗い難かった。
「し、仕方ないですね・・・」
と、口では言っていても、名無しさんは満更でもない表情で腰を上げる。
荀攸の隣に座る郭嘉と場所を変わって貰おうと彼に声を掛けた。
「えっと、郭嘉様・・・」
「おや、名無しさん。荀攸殿は隣にとは言ってないのでは?」
彼女の言わんとする所を察した郭嘉は、名無しさんの言葉を遮り、変わらない笑顔で続けて言う。
「ちゃんと荀攸殿の言葉を、その通りに受け止めてあげないと」
「その通りって・・・」
それは一体、どう言う意味だろうと名無しさんは首を傾げ、両手を広げたままの荀攸に視線を遣った。