これ以上言わないで
貴女のお名前
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「名無しさんと・・・何だって?」
甘寧の名前が聞こえた気がするが、まさかそんな訳がない。
しかし、名無しさんは、間違いではないではないと示すように、繰り返して言った。
「ですから、私と甘寧様と、どっちが好きですか?」
「・・・ちょっと待ってくれ、名無しさん」
甘寧の名前が出た所為で、先程までの、口付けたい気分はどこかへ行ってしまっている。
正直、少し混乱もしていた。
どっちが好きって、確かめるまでもないだろうに。
あいつは親の仇で、名無しさんは恋人だ、根本的に比べる対象が違う。
どうして、名無しさんはこんな馬鹿な事を言い出すんだ。
「一体、何だってそんな事・・・」
「だって・・・凌統様ったら、甘寧様の所にばかりいらっしゃるんですもの」
と、名無しさんは不満そうに唇を尖らせて見せた。
「勿論、凌操様の事は・・・それは分かっているんですけれど」
あの時の、悲しみに沈む凌統の姿は今でも、ありありと思い出せる。
だからこそ、彼が仇討ちに躍起なる気持ちも、分かるつもりだ。
けれど、それが不満だと名無しさんは言った。
「甘寧様がいらしてから、凌統様ったら、甘寧様ばかり追い掛けて。私と過ごして下さらないんですもの・・・だから」
「言い方!名無しさん、その言い方は勘弁してくれ!」
凌統は鳥肌を立て、彼女の言葉を遮った。
確かに、親の仇と、事ある毎に甘寧に突っ掛かっているのは事実だ。
だが、彼女の言い方では、凌統が甘寧に惚れてしまったかのように聞こえるではないか。
「ったく、何て事言い出すんだ・・・」
「だって・・・」
凌統は両腕を擦りながら、しょんぼりと肩を落としている名無しさんを見て、やれやれと溜め息を吐く。
自分では、ちっとも気付かなかったが、名無しさんがそう言うのならば、そうなのだろう。
一日は今も昔も同じ長さだ、甘寧に突っ掛かっている分、以前より彼女と過ごす時間が減っているのは当然だ。
名無しさんの言う事も、かなり極端な気がするけど、尤もか。
「・・・悪かったよ、名無しさん」
凌統は名無しさんの頭を撫でて、微笑んだ。
名無しさんが上目遣いで窺うように見て来る。
「私の事・・・好きですか?」
「当たり前だろ。今更だけど、名無しさんにぞっこんなんでね。そんな俺が名無しさん以外を好きになるかっての」
それを聞いて、名無しさんは嬉しそうに頬を染めた。
「じゃあ、これからは余り甘寧様の所に行かないでくれますか?」
「それは・・・」
どうだろうと、凌統は首を傾げる。
親の仇が近くに居るのに、それを置いて恋人と過ごす事が何よりと彼女を選べるだろうか。
答えに詰まる凌統に、名無しさんは再び、肩を落として言った。
「やっぱり、私より甘寧様の方が・・・」
「待て待て待て!分かった、分かったっての!」
本当に、名無しさんはどんな思考をしているんだ。
凌統は半ば、叫ぶように言って言葉を続ける。
「ああ、もう・・・全く、名無しさんには敵わないっての・・・」
これが惚れた弱味か。
彼女の言う事は、どれだけ不条理で、可笑しくても認めて頷いてやりたくなる。
それに、変に勘違いされたままでも困る。
「甘寧の所に行く時間があるんなら、名無しさんと過ごすよ。約束する、だから、俺が甘寧の事をどうとか、「これ以上言わないで」くれ・・・頼むから」
その日を境に、凌統が甘寧に喧嘩を吹っ掛ける回数が目に見えて減り、同時に呂蒙や孫権の肩の荷も減る事になる。
「よくやったな、名無しさん」
と、呂蒙と孫権から褒められた名無しさんは、訳も分からず首を傾げていたらしいが。
→あとがき
甘寧の名前が聞こえた気がするが、まさかそんな訳がない。
しかし、名無しさんは、間違いではないではないと示すように、繰り返して言った。
「ですから、私と甘寧様と、どっちが好きですか?」
「・・・ちょっと待ってくれ、名無しさん」
甘寧の名前が出た所為で、先程までの、口付けたい気分はどこかへ行ってしまっている。
正直、少し混乱もしていた。
どっちが好きって、確かめるまでもないだろうに。
あいつは親の仇で、名無しさんは恋人だ、根本的に比べる対象が違う。
どうして、名無しさんはこんな馬鹿な事を言い出すんだ。
「一体、何だってそんな事・・・」
「だって・・・凌統様ったら、甘寧様の所にばかりいらっしゃるんですもの」
と、名無しさんは不満そうに唇を尖らせて見せた。
「勿論、凌操様の事は・・・それは分かっているんですけれど」
あの時の、悲しみに沈む凌統の姿は今でも、ありありと思い出せる。
だからこそ、彼が仇討ちに躍起なる気持ちも、分かるつもりだ。
けれど、それが不満だと名無しさんは言った。
「甘寧様がいらしてから、凌統様ったら、甘寧様ばかり追い掛けて。私と過ごして下さらないんですもの・・・だから」
「言い方!名無しさん、その言い方は勘弁してくれ!」
凌統は鳥肌を立て、彼女の言葉を遮った。
確かに、親の仇と、事ある毎に甘寧に突っ掛かっているのは事実だ。
だが、彼女の言い方では、凌統が甘寧に惚れてしまったかのように聞こえるではないか。
「ったく、何て事言い出すんだ・・・」
「だって・・・」
凌統は両腕を擦りながら、しょんぼりと肩を落としている名無しさんを見て、やれやれと溜め息を吐く。
自分では、ちっとも気付かなかったが、名無しさんがそう言うのならば、そうなのだろう。
一日は今も昔も同じ長さだ、甘寧に突っ掛かっている分、以前より彼女と過ごす時間が減っているのは当然だ。
名無しさんの言う事も、かなり極端な気がするけど、尤もか。
「・・・悪かったよ、名無しさん」
凌統は名無しさんの頭を撫でて、微笑んだ。
名無しさんが上目遣いで窺うように見て来る。
「私の事・・・好きですか?」
「当たり前だろ。今更だけど、名無しさんにぞっこんなんでね。そんな俺が名無しさん以外を好きになるかっての」
それを聞いて、名無しさんは嬉しそうに頬を染めた。
「じゃあ、これからは余り甘寧様の所に行かないでくれますか?」
「それは・・・」
どうだろうと、凌統は首を傾げる。
親の仇が近くに居るのに、それを置いて恋人と過ごす事が何よりと彼女を選べるだろうか。
答えに詰まる凌統に、名無しさんは再び、肩を落として言った。
「やっぱり、私より甘寧様の方が・・・」
「待て待て待て!分かった、分かったっての!」
本当に、名無しさんはどんな思考をしているんだ。
凌統は半ば、叫ぶように言って言葉を続ける。
「ああ、もう・・・全く、名無しさんには敵わないっての・・・」
これが惚れた弱味か。
彼女の言う事は、どれだけ不条理で、可笑しくても認めて頷いてやりたくなる。
それに、変に勘違いされたままでも困る。
「甘寧の所に行く時間があるんなら、名無しさんと過ごすよ。約束する、だから、俺が甘寧の事をどうとか、「これ以上言わないで」くれ・・・頼むから」
その日を境に、凌統が甘寧に喧嘩を吹っ掛ける回数が目に見えて減り、同時に呂蒙や孫権の肩の荷も減る事になる。
「よくやったな、名無しさん」
と、呂蒙と孫権から褒められた名無しさんは、訳も分からず首を傾げていたらしいが。
→あとがき