恋人
貴女のお名前
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「私も名無しさんと一緒に過ごす時間を楽しく思っています。ですから、貴女が郭嘉殿の所へ行くと聞く度に、少し、寂しく思っていました」
寂しいと思うのは、何故なのか、その答えは荀彧の中で既に出ている。
荀彧は名無しさんの手にそっと触れた。
「名無しさん、私は貴女が好きです。ですから・・・」
「私も荀彧様の事、好き」
名無しさんは彼の言葉を遮り、臆面もなく言うと、破顔して言葉を続ける。
「女官の皆も好きだし、郭嘉もちょっとだけ好きだけど、荀彧様が一番好き」
彼女の、飾らないその言葉は、分かっていないと知らしめるのに充分だった。
荀彧は困ったように微笑み、そうではないと首を振って見せた。
「名無しさん、貴女が言う好きと、私が言う好きとは異なります」
そう言えば、そんな事を郭嘉が言っていたなと、名無しさんは思い出す。
一体、何が違うと言うのだろう。
好きは、好きだ。
「何が違うの?」
「私は、貴女を女性として、恋愛対象として好きなのです」
貴女の唇に、体に、髪に触れたい。
貴女の全てに触れたい。
貴女がかつて、他の男性としていたような事を、表面上だけではなく、この感情を持って繋がりたいと心から願っている。
荀彧は静かな声で、ゆっくりとそう言うと、触れていた彼女の手を握った。
「名無しさんは、私をそのようには見れませんか?」
「・・・分からない」
今度は名無しさんが困ったように眉を寄せる。
「そんな事、言われた事がないから」
今まで、自分から行為を望んだ事はなかった。
いつだって、雇い主の気紛れに振り回されて来た。
そこに嫌悪感もなければ、愉悦を覚えた記憶もない。
それにも関わらず、名無しさんは荀彧に言われて初めて、自分の気持ちに気付いた。
「でも、荀彧様となら、したいって思う」
彼女は寄せた眉を開き、首を傾げて言う。
「それって、私も荀彧様と同じ気持ちって事になる?」
「・・・そう、ですね。多分」
正直、頷くのは恥ずかしかったが、ここで否定する程、愚かではない。
「例えば、郭嘉殿とはしたいと思うますか?」
「全然!」
例えに名前を出しておいて何だが、余りにもはっきりと言い切る名無しさんの様子に、却って郭嘉を不憫に思う。
荀彧は気を取り直すように咳払いをすると、改めて彼女に言った。
「では、名無しさん。今日のこの時から、私を雇い主ではなく、「恋人」として見て下さいますか?」
名無しさんはこの日、初めて、頬を染めて恥ずかしそうに微笑んだ。
→あとがき
寂しいと思うのは、何故なのか、その答えは荀彧の中で既に出ている。
荀彧は名無しさんの手にそっと触れた。
「名無しさん、私は貴女が好きです。ですから・・・」
「私も荀彧様の事、好き」
名無しさんは彼の言葉を遮り、臆面もなく言うと、破顔して言葉を続ける。
「女官の皆も好きだし、郭嘉もちょっとだけ好きだけど、荀彧様が一番好き」
彼女の、飾らないその言葉は、分かっていないと知らしめるのに充分だった。
荀彧は困ったように微笑み、そうではないと首を振って見せた。
「名無しさん、貴女が言う好きと、私が言う好きとは異なります」
そう言えば、そんな事を郭嘉が言っていたなと、名無しさんは思い出す。
一体、何が違うと言うのだろう。
好きは、好きだ。
「何が違うの?」
「私は、貴女を女性として、恋愛対象として好きなのです」
貴女の唇に、体に、髪に触れたい。
貴女の全てに触れたい。
貴女がかつて、他の男性としていたような事を、表面上だけではなく、この感情を持って繋がりたいと心から願っている。
荀彧は静かな声で、ゆっくりとそう言うと、触れていた彼女の手を握った。
「名無しさんは、私をそのようには見れませんか?」
「・・・分からない」
今度は名無しさんが困ったように眉を寄せる。
「そんな事、言われた事がないから」
今まで、自分から行為を望んだ事はなかった。
いつだって、雇い主の気紛れに振り回されて来た。
そこに嫌悪感もなければ、愉悦を覚えた記憶もない。
それにも関わらず、名無しさんは荀彧に言われて初めて、自分の気持ちに気付いた。
「でも、荀彧様となら、したいって思う」
彼女は寄せた眉を開き、首を傾げて言う。
「それって、私も荀彧様と同じ気持ちって事になる?」
「・・・そう、ですね。多分」
正直、頷くのは恥ずかしかったが、ここで否定する程、愚かではない。
「例えば、郭嘉殿とはしたいと思うますか?」
「全然!」
例えに名前を出しておいて何だが、余りにもはっきりと言い切る名無しさんの様子に、却って郭嘉を不憫に思う。
荀彧は気を取り直すように咳払いをすると、改めて彼女に言った。
「では、名無しさん。今日のこの時から、私を雇い主ではなく、「恋人」として見て下さいますか?」
名無しさんはこの日、初めて、頬を染めて恥ずかしそうに微笑んだ。
→あとがき