なつかしい風景
貴女のお名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
厩舎から少し先に行った所にある四阿で、龐徳は、様々な事柄を名無しさんに語って聞かせた。
馬の話の続きから始まった話は、西涼で過ごしていた頃の話へと移り、名無しさんはより興味を示し、その瞳を輝かせる。
心なしか、興奮もしているようで、頬を上気させた彼女は深く息を吐いた。
「西涼って、素敵な所なんですね。見てみたいわ・・・」
ぽつりと呟くように言って視線を遠くに遣る名無しさんの横顔に、龐徳は頬を緩める。
彼女を慕っていればこそ、自分の故郷に興味を示され、行ってみたいと言われて嬉しくない訳がない。
龐徳は、今は遠い過去となった西涼の風景に思いを馳せた。
瞼を閉じれば思い出される幾つもの美しい景色を、彼女にも見せてやりたいと思う。
「うむ・・・もしも叶うものならば、再び西涼に、名無しさんを連れて帰りたいものだ」
「私を、連れて・・・帰る?」
連れて行くではなく、連れて帰る、その言葉の違いに、名無しさんが不思議そうに首を傾げた。
自分が何を口走ったのか気付いた龐徳は、顔を真っ赤にさせると、慌てた様子で言う。
「あ、いや・・・済まぬ、連れて帰るなどと」
未だ、そのような関係ですらないのに、何と不躾な事を先走って吐いてしまった事か。
龐徳は恥じ入って彼女から視線を逸らし、項垂れるように俯いた。
「連れて・・・帰って下さいますか?」
と、名無しさんは小さな声で尋ね、続けて言う。
「私は、生まれてからずっと、この街を出た事がありません」
街の外の事は、話でしか聞いた事がない。
だから、いつも思っていた、見上げるあの雲は、どこへと流れて行くのだろうかと。
その先には、どんな風景が広がっているのだろう。
そこには、どんな人々が暮らしているのだろう。
知らない景色、知らない場所、知らない人々をいつか、この足で、この目で確かめてみたい。
龐徳様と一緒に、名無しさんは頬を染めてそう言うと、彼を窺うように見た。
「いつか・・・私に、龐徳様の故郷を見せて下さいますか?」
俯けていた顔を上げれば、名無しさんの笑顔が龐徳の目に移る。
その頬を染めた彼女の様子に、龐徳は速く脈打つ鼓動のままに言葉を放った。
「名無しさんは・・・それがしの故郷に、興味を持ってくれるか」
名無しさんは頷き、答えて続ける。
「龐徳様の故郷に・・・連れて帰って欲しいです」
「名無しさん・・・」
直接的ではない、しかし、彼女の視線は熱く自分を見詰めていて、龐徳は名無しさんの小さな手を優しく取った。
連れて行くではない、連れて帰ると言う言葉を、彼女は望んでいる。
自分と同じ気持ちであるのだと、龐徳は喜びを覚え、徐に口を開いた。
「ああ、約束しよう。それがしはいつか必ず、名無しさんを西涼に連れ帰り、我が故郷の「なつかしい風景」を見せよう」
そして、二人で一緒にどこまでも共に流れる雲を追い掛け、西涼の美しい景色を目に映して過ごそう。
→あとがき
馬の話の続きから始まった話は、西涼で過ごしていた頃の話へと移り、名無しさんはより興味を示し、その瞳を輝かせる。
心なしか、興奮もしているようで、頬を上気させた彼女は深く息を吐いた。
「西涼って、素敵な所なんですね。見てみたいわ・・・」
ぽつりと呟くように言って視線を遠くに遣る名無しさんの横顔に、龐徳は頬を緩める。
彼女を慕っていればこそ、自分の故郷に興味を示され、行ってみたいと言われて嬉しくない訳がない。
龐徳は、今は遠い過去となった西涼の風景に思いを馳せた。
瞼を閉じれば思い出される幾つもの美しい景色を、彼女にも見せてやりたいと思う。
「うむ・・・もしも叶うものならば、再び西涼に、名無しさんを連れて帰りたいものだ」
「私を、連れて・・・帰る?」
連れて行くではなく、連れて帰る、その言葉の違いに、名無しさんが不思議そうに首を傾げた。
自分が何を口走ったのか気付いた龐徳は、顔を真っ赤にさせると、慌てた様子で言う。
「あ、いや・・・済まぬ、連れて帰るなどと」
未だ、そのような関係ですらないのに、何と不躾な事を先走って吐いてしまった事か。
龐徳は恥じ入って彼女から視線を逸らし、項垂れるように俯いた。
「連れて・・・帰って下さいますか?」
と、名無しさんは小さな声で尋ね、続けて言う。
「私は、生まれてからずっと、この街を出た事がありません」
街の外の事は、話でしか聞いた事がない。
だから、いつも思っていた、見上げるあの雲は、どこへと流れて行くのだろうかと。
その先には、どんな風景が広がっているのだろう。
そこには、どんな人々が暮らしているのだろう。
知らない景色、知らない場所、知らない人々をいつか、この足で、この目で確かめてみたい。
龐徳様と一緒に、名無しさんは頬を染めてそう言うと、彼を窺うように見た。
「いつか・・・私に、龐徳様の故郷を見せて下さいますか?」
俯けていた顔を上げれば、名無しさんの笑顔が龐徳の目に移る。
その頬を染めた彼女の様子に、龐徳は速く脈打つ鼓動のままに言葉を放った。
「名無しさんは・・・それがしの故郷に、興味を持ってくれるか」
名無しさんは頷き、答えて続ける。
「龐徳様の故郷に・・・連れて帰って欲しいです」
「名無しさん・・・」
直接的ではない、しかし、彼女の視線は熱く自分を見詰めていて、龐徳は名無しさんの小さな手を優しく取った。
連れて行くではない、連れて帰ると言う言葉を、彼女は望んでいる。
自分と同じ気持ちであるのだと、龐徳は喜びを覚え、徐に口を開いた。
「ああ、約束しよう。それがしはいつか必ず、名無しさんを西涼に連れ帰り、我が故郷の「なつかしい風景」を見せよう」
そして、二人で一緒にどこまでも共に流れる雲を追い掛け、西涼の美しい景色を目に映して過ごそう。
→あとがき