拾伍

配り終えたバレンタインチョコ。
だけど、もう一つ。
鞄に忍ばせている・・・唯一の手作り。
「どうやって渡そうかなぁ・・・」
勿論、三成さん宛て。
本当は市販のチョコにしようと思ったんだけど。
私は、三成さんに伝えたかったから。
ちょっと見た目が悪くっても、手作りで三成さんに渡したかった。
と、云っても。
三成さんに渡せるとは限らない。
何より会社が違うし・・・。
だからって仕事中にチョコを渡すだけで外出する訳にもいかない。
じゃあ会社帰りに・・・とも思ったけど。
三成さんの退社時間も知らない私は。
「ああ~!!いつ渡そう・・・」
と、仕事中なのに。
そればっかり考えていた。
そんな時。
「戦国株式会社に・・・ですか?」
「悪いが、行ってくれんか?」
趙雲さんと劉備部長の会話が飛び込んで来た。
耳をそばだてていると・・・。
どうやら、劉備部長は戦国株式会社に資料を今直ぐに届けなければならないらしい。
けど、これから来客が合って行けない。
代わりに趙雲さんが届けてくれないか・・・。
って。
チャンスじゃん!
戦国株式会社に行ける口実ゲット!?
私はそう思って。
「劉備部長!私が行ってきます!!」
勢いよく云った。
のに、渋る劉備部長。
「しかし・・・資料の説明もあるのだが・・・」
んなモン、気合いでやりますって。
とは云わず。
「大丈夫です。春夏のプレゼンの資料ですよね?私も把握してますから!」
勉強も兼ねて、任せて下さい!と意気込んだ私。
劉備部長は、
「分かった・・・任せるが・・・趙雲、お前も一緒に行ってくれ」
と、若干任せてくれた。
趙雲さんが一緒か・・・まぁ、心配はないけど。
三成さんと二人っきりにはなれないかもしれないな・・・。
でも、三成さんにチョコは渡せるかもしれない。
私は不純な動機を抱いて、資料を受け取った。
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