拾壱

来てしまったクリスマス。
私は早めに出勤した。
何故なら。
「よし!誰も居ないな・・・」
誰にも着替えを見られたくなかったからだ。特に尚香さんには。
今日の私はめちゃくちゃ気合い入れてめかし込んでいる。
もし私服姿を万が一にでも見られたら・・・考えるだけで恐ろしい。
私はさっさと着替えて、コーヒーでも飲もうかと自販機に向かった。




こんな時間に誰も居ないだろうと思ってたら、
「あ、甘寧」
驚いた事に甘寧が出勤していた。相当早く来ていたのか、煙草の吸い殻が灰皿に沢山ある。
「よう!早ぇな」
「甘寧こそ。珍しいじゃない」
いつもはギリギリなくせに・・・って笑って云ったら。
「お前を待ってたんだよ」
と、云って何かを私に差し出した。
「何?コレ」
「クリスマスプレゼント」
ああ!私に?いやぁ悪いなぁ!
しかも私の大好きなチョコレート。
「ありがとう!甘寧!!」
あ。でも私、甘寧にクリスマスプレゼントなんて用意してないなぁ・・・。
仕方ない。
「御礼にコーヒー奢るよ」
と、百円玉を取り出して自販機に入れた私に。
「いや、要らねぇ・・・」
甘寧はそう云って、
「え~?じゃ、紅茶?ジンジャーエール?」
―チュ
キスして。
「虫歯になるなよ!」
立ち去った。
私は後ろで自販機に百円玉が落ちる音を聞きながら。
「・・・な、な、な・・・」
そこに座り込んだ。
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