「好きです、名無しさん」


そう云えたら。
どんなに良いか・・・。







蜀に降った当初、右も左も分からない姜維に付けられた女官、名無しさん。
「名無しさんと申します。至らぬ点もあるとは思いますが、よろしくお願いします」
緊張気味にペコリ、と姜維に頭を下げる名無しさん。
その姿が可愛らしく、姜維は名無しさんの肩に触れ、
「こちらこそ。分からない事ばかりで・・・。名無しさん、共に頑張りましょう」
と云って##NAME1##の顔を上げさせる。
「はい。ありがとうございます」
ニッコリ笑って顔を上げる名無しさん。
姜維はその名無しさんの笑顔に魅せられた。







それからと云うもの、姜維は名無しさんの事が気になって仕方がない。
（恋・・・だろうか）
名無しさんが傍にいるといつも緊張して上手く話せない。
名無しさんが誰かに笑顔を向けていたら胸が痛む。
（好きだと伝えたい・・・。だが・・・）
まだまだ学ぶ事がある、早く丞相の役に立ちたい、と思う姜維。色恋にかまけてはいられない、と自分を叱咤する。