私を喜ばせたいとお望みなら
貴女のお名前
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飾らない貴方が好き。
待ち合わせ場所の城門前に、約束した時間よりも早く遣って来ていたのだろう、人待ち顔で佇む恋人の姿を見付けた名無しさんは、彼の装いが普段と違う事に違和感を覚えた。
「徐晃様・・・お待たせしました」
と、掛ける声にも、どことなく、躊躇うような色が滲む。
彼も、徐晃もまた、自分の装いにしっくり来ていなかったのか、
「うむ・・・矢張、似合わないだろうか」
名無しさんの視線を追って、自身の衣装を見下ろした。
「最近、流行りの柄だと聞いたのだが、拙者にはどうも・・・」
「いいえ、そんな事は・・・」
名無しさんは慌てて否定すると、再び、視線を上下させる。
似合ってない、とは思わない。
けれど、彼にしては少々、派手ではないだろうか。
どちらかと云えば、普段の素朴な柄の方が人柄に合っているように名無しさんには思えた。
それに、最近の流行りを気になさるなんて、徐晃様らしくない。
どう云った心境の変化かしら?
そう思ったが、見慣れないだけで可笑しい訳ではない、敢えて何も問わず、名無しさんはにっこりと笑顔を浮かべて云った。
「いつもの徐晃様と雰囲気が違うから、ちょっと驚いただけで・・・とても素敵です」
「そ、そうか・・・ならば良いのだが」
徐晃は安堵の息を吐き、照れたように頭を掻いた。
名無しさんがそう云うのならば、大丈夫だろう。
折角、二人で城下へ出掛けるのだ、隣を歩きたくない等と云われては堪らない。
「では、名無しさん、参ろうか」
「はい」
名無しさんは徐晃の隣に立つと、二人は並んで歩き出した。
城下に二人で出掛けて来た時はいつも辿る道程が決まっていて、名無しさんは当然のようにその道に行こうと足を向ける。
しかし、今日はどうした事か、徐晃がそれを引き留めた。
「名無しさん、今日は違う所へ行かぬか」
「違う所って、どこですか?」
てっきり、今日も変わらないものだとばかり思っていた名無しさんは、徐晃の提案に、珍しい事もあるものだ、と首を傾げて尋ねる。
「今日は何やら、雑技や舞踊の催しがあると聞いた。良ければ観に行こうと思ったのだが」
「そうなんですか!?」
雑技や舞踊と聞いて、名無しさんは目を輝かせた。
それは楽しそうだと胸を踊らせる。
これまで、宮廷で宴が催された折に何度か観た事があるが、女官の名無しさんは始終、給仕や雑多な事に忙しくしている、観たと云っても垣間見る程度でしかない。
偶然にも、それを観られるのだ、何と云う幸運だろう。
是非、観に行きたいと云い掛けて、名無しさんは、ふと気付いて口を開いた。
「・・・でも、きっと混んでますよね」
「それなら心配無用。前以て席を取っているでござる」
徐晃はそう云うと、次には申し訳なさそうな表情を浮かべ、続けて云う。
「ただ、生憎と端の方しか空いてなかったが・・・」
それでも席は席に違いない、名無しさんは感激して両手を胸の前で組んだ。
「嬉しい!ありがとうございます、徐晃様」
満面に可憐な花のような笑顔を浮かべる彼女の様子に、徐晃は僅かに頬を染める。
どうやら、喜んでもらえたようだ。
「直に始まるであろう、少し急ぐとしよう」
徐晃は名無しさんを促して、手を差し出した。
するりと名無しさんの小さな手が滑り込んで来る。
「どんなのが観れるのかしら。楽しみだわ」
と、云う名無しさんの声は弾んでいた。
待ち合わせ場所の城門前に、約束した時間よりも早く遣って来ていたのだろう、人待ち顔で佇む恋人の姿を見付けた名無しさんは、彼の装いが普段と違う事に違和感を覚えた。
「徐晃様・・・お待たせしました」
と、掛ける声にも、どことなく、躊躇うような色が滲む。
彼も、徐晃もまた、自分の装いにしっくり来ていなかったのか、
「うむ・・・矢張、似合わないだろうか」
名無しさんの視線を追って、自身の衣装を見下ろした。
「最近、流行りの柄だと聞いたのだが、拙者にはどうも・・・」
「いいえ、そんな事は・・・」
名無しさんは慌てて否定すると、再び、視線を上下させる。
似合ってない、とは思わない。
けれど、彼にしては少々、派手ではないだろうか。
どちらかと云えば、普段の素朴な柄の方が人柄に合っているように名無しさんには思えた。
それに、最近の流行りを気になさるなんて、徐晃様らしくない。
どう云った心境の変化かしら?
そう思ったが、見慣れないだけで可笑しい訳ではない、敢えて何も問わず、名無しさんはにっこりと笑顔を浮かべて云った。
「いつもの徐晃様と雰囲気が違うから、ちょっと驚いただけで・・・とても素敵です」
「そ、そうか・・・ならば良いのだが」
徐晃は安堵の息を吐き、照れたように頭を掻いた。
名無しさんがそう云うのならば、大丈夫だろう。
折角、二人で城下へ出掛けるのだ、隣を歩きたくない等と云われては堪らない。
「では、名無しさん、参ろうか」
「はい」
名無しさんは徐晃の隣に立つと、二人は並んで歩き出した。
城下に二人で出掛けて来た時はいつも辿る道程が決まっていて、名無しさんは当然のようにその道に行こうと足を向ける。
しかし、今日はどうした事か、徐晃がそれを引き留めた。
「名無しさん、今日は違う所へ行かぬか」
「違う所って、どこですか?」
てっきり、今日も変わらないものだとばかり思っていた名無しさんは、徐晃の提案に、珍しい事もあるものだ、と首を傾げて尋ねる。
「今日は何やら、雑技や舞踊の催しがあると聞いた。良ければ観に行こうと思ったのだが」
「そうなんですか!?」
雑技や舞踊と聞いて、名無しさんは目を輝かせた。
それは楽しそうだと胸を踊らせる。
これまで、宮廷で宴が催された折に何度か観た事があるが、女官の名無しさんは始終、給仕や雑多な事に忙しくしている、観たと云っても垣間見る程度でしかない。
偶然にも、それを観られるのだ、何と云う幸運だろう。
是非、観に行きたいと云い掛けて、名無しさんは、ふと気付いて口を開いた。
「・・・でも、きっと混んでますよね」
「それなら心配無用。前以て席を取っているでござる」
徐晃はそう云うと、次には申し訳なさそうな表情を浮かべ、続けて云う。
「ただ、生憎と端の方しか空いてなかったが・・・」
それでも席は席に違いない、名無しさんは感激して両手を胸の前で組んだ。
「嬉しい!ありがとうございます、徐晃様」
満面に可憐な花のような笑顔を浮かべる彼女の様子に、徐晃は僅かに頬を染める。
どうやら、喜んでもらえたようだ。
「直に始まるであろう、少し急ぐとしよう」
徐晃は名無しさんを促して、手を差し出した。
するりと名無しさんの小さな手が滑り込んで来る。
「どんなのが観れるのかしら。楽しみだわ」
と、云う名無しさんの声は弾んでいた。