恋は年齢を問わぬもの
貴女のお名前
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どれだけ離れていても、この気持ちは押さえられない。
昼間の鍛練場は、訓練する若い者たちの熱気で溢れていて、足を踏み入れた程普は体が若返るような気がした。
そう感じてしまう事自体、老いたと云う事の証明に他ならないか、と内心、苦笑いを浮かべる。
老将の来訪を遠巻きに眺めている兵たちには構わず、程普は人を探して辺りを見回した。
大抵、この時間には鍛練場に居ると云っていた筈だ。
「程普様!」
と、自分が見付けるより早く、相手に見付けられ、名を呼ばれた程普は声の聞こえた方角に顔を巡らせる。
視線の先に、若い将に紛れ、一人の女性が手を振っているのが見えた。
彼女は二言、三言、他の将に何かを云ってから彼らに背を向け、此方に向かって駆け寄って来る。
その姿は親を見付けた子供か、それとも主人に駆け寄る子犬か、どちらにしろ小さなものの仕草のようで、程普は思わず、頬を緩めていた。
「程普様っ!」
彼の元へ遣って来た彼女は嬉しそうな笑顔を浮かべていて、つい、その頭を撫でてやりたくなる衝動を、程普は無理矢理、押さえ込む。
年の頃は若いが、歴とした一武将だ、多くの兵の前で扱い方を間違えてはいけない。
無論、それは彼女自身にも云える事で、
「名無しさん、兵の前だ、将がそのように駆けて来ては威厳の一つも示せぬぞ」
と、小言を口にする程普に、彼女は、名無しさんは小さく舌を出した。
「はい、すみません」
素直に謝ってみせるが、恐らく、反省などしていないだろう。
程普とて、自分を見付けた途端に駆け寄って来る名無しさんを憎からず思っているが故に、本気で小言を云っていた訳でもないのだから、それを承知の上での態度なら、舌を出す姿すら愛らしく思ってしまう。
どうにも、我輩は名無しさんに甘い、と程普は苦笑いで返す。
「程普様、それでどうかなさったんですか?」
と、尋ねて来る名無しさんに、程普は当初の目的を思い出して云った。
「うむ、珠には若輩たちと武器を交えてみようかと思ったのでな」
「じゃあ、私のお相手をお願いします」
すかさず、名無しさんが声を上げる。
元より、彼女に声を掛けるつもりでいた程普は、勿論だと頷くと、
「どうせだ、二、三人連れて来い。何、老いぼれだからと遠慮は要らん」
「はいっ!」
名無しさんが満面の笑顔で答え、先程まで話していた将たちを呼びに戻って行った。
程普は駆けて行く彼女の背中に、再び苦笑いを浮かべる。
全く、先程云ったばかりだと云うのに、いや、いつまでも、引き摺らないのが名無しさんの良い所だと云う事にしておこう。
ああ、やはり、我輩は名無しさんに甘い。
我輩も、もう少し若ければ・・・。
そこ迄考えて、程普は慌てて、その思考を追い出した。
年甲斐もなく、娘のような年頃の女性に懸想しているなど、彼女にとっては迷惑以外の何ものでもないだろうと自分に強く云い聞かせる。
懐いて来る名無しさんを将として、部下としてだけではなく、一人の女性として見るようになったのはいつからだったか。
自分の恋情に気付いてしまってからと云うもの、彼女の一挙一動に、愛らしい笑顔に、程普は胸を初恋のように高鳴らせていた。
その度に、沸き上がる恋情を奥へ奥へと追い遣るのに、必死になる程に彼女に惹かれている。
程普は、自分を呼んで手を振る名無しさんに向かって、殊更、ゆっくりと歩を進めた。
昼間の鍛練場は、訓練する若い者たちの熱気で溢れていて、足を踏み入れた程普は体が若返るような気がした。
そう感じてしまう事自体、老いたと云う事の証明に他ならないか、と内心、苦笑いを浮かべる。
老将の来訪を遠巻きに眺めている兵たちには構わず、程普は人を探して辺りを見回した。
大抵、この時間には鍛練場に居ると云っていた筈だ。
「程普様!」
と、自分が見付けるより早く、相手に見付けられ、名を呼ばれた程普は声の聞こえた方角に顔を巡らせる。
視線の先に、若い将に紛れ、一人の女性が手を振っているのが見えた。
彼女は二言、三言、他の将に何かを云ってから彼らに背を向け、此方に向かって駆け寄って来る。
その姿は親を見付けた子供か、それとも主人に駆け寄る子犬か、どちらにしろ小さなものの仕草のようで、程普は思わず、頬を緩めていた。
「程普様っ!」
彼の元へ遣って来た彼女は嬉しそうな笑顔を浮かべていて、つい、その頭を撫でてやりたくなる衝動を、程普は無理矢理、押さえ込む。
年の頃は若いが、歴とした一武将だ、多くの兵の前で扱い方を間違えてはいけない。
無論、それは彼女自身にも云える事で、
「名無しさん、兵の前だ、将がそのように駆けて来ては威厳の一つも示せぬぞ」
と、小言を口にする程普に、彼女は、名無しさんは小さく舌を出した。
「はい、すみません」
素直に謝ってみせるが、恐らく、反省などしていないだろう。
程普とて、自分を見付けた途端に駆け寄って来る名無しさんを憎からず思っているが故に、本気で小言を云っていた訳でもないのだから、それを承知の上での態度なら、舌を出す姿すら愛らしく思ってしまう。
どうにも、我輩は名無しさんに甘い、と程普は苦笑いで返す。
「程普様、それでどうかなさったんですか?」
と、尋ねて来る名無しさんに、程普は当初の目的を思い出して云った。
「うむ、珠には若輩たちと武器を交えてみようかと思ったのでな」
「じゃあ、私のお相手をお願いします」
すかさず、名無しさんが声を上げる。
元より、彼女に声を掛けるつもりでいた程普は、勿論だと頷くと、
「どうせだ、二、三人連れて来い。何、老いぼれだからと遠慮は要らん」
「はいっ!」
名無しさんが満面の笑顔で答え、先程まで話していた将たちを呼びに戻って行った。
程普は駆けて行く彼女の背中に、再び苦笑いを浮かべる。
全く、先程云ったばかりだと云うのに、いや、いつまでも、引き摺らないのが名無しさんの良い所だと云う事にしておこう。
ああ、やはり、我輩は名無しさんに甘い。
我輩も、もう少し若ければ・・・。
そこ迄考えて、程普は慌てて、その思考を追い出した。
年甲斐もなく、娘のような年頃の女性に懸想しているなど、彼女にとっては迷惑以外の何ものでもないだろうと自分に強く云い聞かせる。
懐いて来る名無しさんを将として、部下としてだけではなく、一人の女性として見るようになったのはいつからだったか。
自分の恋情に気付いてしまってからと云うもの、彼女の一挙一動に、愛らしい笑顔に、程普は胸を初恋のように高鳴らせていた。
その度に、沸き上がる恋情を奥へ奥へと追い遣るのに、必死になる程に彼女に惹かれている。
程普は、自分を呼んで手を振る名無しさんに向かって、殊更、ゆっくりと歩を進めた。