「名無しさん」

木の陰で眠る見目麗しい少女にゆっくり近付く。
・・・起きそうもない。
「名無しさん」
今度は先程より少し大きく。
「んぁ・・・太公望様ぁ～？おはようございます」
名無しさんが瞼を擦りながら体を起こす。・・・が、何故か私の傍に来ない。
いつもなら呼べば直ぐ私の傍へと来るものを。何故か腹立たしい気がする。
「暑くないですか？太公望様」
あぁ、私が日向に居るからか。
「たまには太公望様が来て下さいよ」
此処、涼しいですよ。と、云って自分の隣をぽんぽんと叩く。
全く、仙人ともあろうこの私が。
名無しさんの隣に自ら腰を降ろすとは。
「えへへ・・・」
##NAME1##が私の肩にもたれ掛かり、再び目を閉じようとしている。柔らかい髪を梳きながら
「暑くはないのか」
と尋ねる。

「ん～。暑いですよ？でも日向でこうするより日陰の方がちょっとはマシでしょ？」
そう云って規則正しい寝息をたて始めた。

暑いなら何もくっつかなくても良いだろうに。

そう思うのだが。
名無しさんの体温を感じられる此処から、動きたくはないと思う私がいた。