懐かしい感情だ。





「初めてお目に掛かります。本日からお世話をさせて頂きます、名無しさんと申します。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げる名無しさん。
「・・・・・・・・はっ！・・あぁ、よろしく頼むぞ」
微妙に間を開けて曹操が名無しさんに返事をした。
「はい」
名無しさんは気にする事もなく、もう一度礼をして、曹操の前から去って行った。
「どうした、孟徳。らしくないな。考え事か？」
傍に居た夏侯惇が話し掛ける。
「考え事をするのが、らしくない、と云いたいのか？」
曹操はムッとして夏侯惇に詰め寄る。
「儂とて考え事の一つや二つ・・・」
「今日の昼飯と夕飯か？」
「・・・儂を何だと思ってるのだ。・・夏侯惇・・・」




その日から名無しさんは曹操の食事、着替え、雑用、執務の手伝い、と常に曹操にくっついていた。
（むぅ・・・名無しさんは出来た女官よのぅ・・）
と、名無しさんの働きっぷりに曹操は日々、満足する。
（それに・・・・）
チラリと名無しさんを盗み見れば
「どうかなさいましたか？曹操様」
名無しさんが曹操の視線に気が付き、ニッコリと微笑む。