決して心変わりしない
貴女のお名前
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・・・お前は・・・俺の全てだ・・・。
酒宴が酣を迎える頃、決まって酔った孫権の悪癖が顔を出す。
孫権は周泰を側に呼び付け、服を脱ぐように言うと、皆の前で彼の体に残る傷跡の一つ一つの由来を時に誇らし気に、時に涙ぐみながら語るのだ。
戦場に在れば、傷を負うのは当然の事、況してや信ずる主君の為なら命の一つや二つ、差し出すのが臣下だ。
常からそう心得ていれば、周泰は孫権を守る為に傷を負った事に後悔もなければ、寧ろ、誇らしく、同時に今度は守れたのだと、喜ばしくすら思っていた。
反対に、涙ながらに語られるのを苦手としている。
そんな時は、孫権が口にする感謝の言葉を有り難く思いながらも、早く酒宴が終わらないものかと、ひたすら、時間が過ぎるのを待っていた。
幸い、今夜の孫権は陽気に出来上がっていて、彼の口調は明るく、冗談すら口に上らせている。
その様子に、内心で安堵していた周泰は、ちらりと視線を走らせた。
彼にはもう一人、孫権の他に、様子が気になる人物が居るのだが、生憎と視線の先、宴が始まった頃には埋まっていた席が、今は空いていた。
今夜も駄目だったか、周泰はこっそりと肩を落とすと、最後の傷の一つの由来を語り終えた孫権に言葉も短く、退席を申し出た。
未だ賑やかな宴の席を後にした周泰は、脇目も振らずに廊下を進む。
目的の部屋に辿り着いた所で、足を止め、扉を叩いた。
「・・・名無しさん・・・」
と、中に声を掛けるが、返事がない。
しかし、気配はある。
夜とは言え、眠るには未だ早い時刻だ、起きているだろう。
周泰は扉に手を掛けると、ゆっくりと押し開いた。
蝶番が微かに軋む音を立てる。
「・・・入るぞ・・・」
断ってから室内に足を踏み入れた周泰は、迷う事なく寝室に向かった。
覗いてみれば思った通り、掛布を頭からすっぽりと被り、寝台の上で丸まっている姿が目に映る。
周泰は態と足音を立てて側に寄ると、寝台の縁に腰掛けた。
その拍子に、寝台が僅かに沈み、掛布に包まった体が揺れる。
自分が側に来た事は分かる筈だ、それでも顔を見せない恋人に、周泰は優しい声で彼女の名を呼んだ。
「・・・名無しさん・・・」
そっと手を伸ばし、掛布の上から名無しさんに触れる。
「・・・顔が、見たい・・・」
そう言えば大抵、直ぐに顔を出すのだが、何故か今夜の彼女は頑なで、出て来ようとしなかった。
いつもより酷いか、周泰は掛布の上に置いた手で優しく名無しさんを撫でる。
その気になれば、女の抵抗など物ともせずに掛布を引き剥がせるのだが、それをしては意味がない。
周泰は無言で彼女の体を掛布越しに撫で続けた。
やがて、絆されたのか、それとも息苦しくなったのか、ごそごそと名無しさんの体が動き、周泰は撫でていた手を浮かせる。
「・・・名無しさん・・・」
そこでもう一度、彼女の名を呼ぶと、名無しさんは丸めていた体を起こし、掛布から顔を出した。
「周泰様」
気まずそうな声で自分を呼ぶ名無しさんに、やっと顔を見せたかと、周泰は頬を緩める。
頭から掛布を被ったままの姿だったが、顔が見れただけでも良い。
酒宴が酣を迎える頃、決まって酔った孫権の悪癖が顔を出す。
孫権は周泰を側に呼び付け、服を脱ぐように言うと、皆の前で彼の体に残る傷跡の一つ一つの由来を時に誇らし気に、時に涙ぐみながら語るのだ。
戦場に在れば、傷を負うのは当然の事、況してや信ずる主君の為なら命の一つや二つ、差し出すのが臣下だ。
常からそう心得ていれば、周泰は孫権を守る為に傷を負った事に後悔もなければ、寧ろ、誇らしく、同時に今度は守れたのだと、喜ばしくすら思っていた。
反対に、涙ながらに語られるのを苦手としている。
そんな時は、孫権が口にする感謝の言葉を有り難く思いながらも、早く酒宴が終わらないものかと、ひたすら、時間が過ぎるのを待っていた。
幸い、今夜の孫権は陽気に出来上がっていて、彼の口調は明るく、冗談すら口に上らせている。
その様子に、内心で安堵していた周泰は、ちらりと視線を走らせた。
彼にはもう一人、孫権の他に、様子が気になる人物が居るのだが、生憎と視線の先、宴が始まった頃には埋まっていた席が、今は空いていた。
今夜も駄目だったか、周泰はこっそりと肩を落とすと、最後の傷の一つの由来を語り終えた孫権に言葉も短く、退席を申し出た。
未だ賑やかな宴の席を後にした周泰は、脇目も振らずに廊下を進む。
目的の部屋に辿り着いた所で、足を止め、扉を叩いた。
「・・・名無しさん・・・」
と、中に声を掛けるが、返事がない。
しかし、気配はある。
夜とは言え、眠るには未だ早い時刻だ、起きているだろう。
周泰は扉に手を掛けると、ゆっくりと押し開いた。
蝶番が微かに軋む音を立てる。
「・・・入るぞ・・・」
断ってから室内に足を踏み入れた周泰は、迷う事なく寝室に向かった。
覗いてみれば思った通り、掛布を頭からすっぽりと被り、寝台の上で丸まっている姿が目に映る。
周泰は態と足音を立てて側に寄ると、寝台の縁に腰掛けた。
その拍子に、寝台が僅かに沈み、掛布に包まった体が揺れる。
自分が側に来た事は分かる筈だ、それでも顔を見せない恋人に、周泰は優しい声で彼女の名を呼んだ。
「・・・名無しさん・・・」
そっと手を伸ばし、掛布の上から名無しさんに触れる。
「・・・顔が、見たい・・・」
そう言えば大抵、直ぐに顔を出すのだが、何故か今夜の彼女は頑なで、出て来ようとしなかった。
いつもより酷いか、周泰は掛布の上に置いた手で優しく名無しさんを撫でる。
その気になれば、女の抵抗など物ともせずに掛布を引き剥がせるのだが、それをしては意味がない。
周泰は無言で彼女の体を掛布越しに撫で続けた。
やがて、絆されたのか、それとも息苦しくなったのか、ごそごそと名無しさんの体が動き、周泰は撫でていた手を浮かせる。
「・・・名無しさん・・・」
そこでもう一度、彼女の名を呼ぶと、名無しさんは丸めていた体を起こし、掛布から顔を出した。
「周泰様」
気まずそうな声で自分を呼ぶ名無しさんに、やっと顔を見せたかと、周泰は頬を緩める。
頭から掛布を被ったままの姿だったが、顔が見れただけでも良い。