冬・二部
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セットした目覚ましで小十郎は目を覚ました。
(起こしたか)
ベッドの良佳を見たが、目覚ましに気付いた様子はなくぐっすり寝ている。
(シャワー借りるぞ)
持参したタオルと下着を持って浴室に入った。
良佳が心配だが、休む訳にはいかない。手短にシャワーを済ませると、良佳の食事を作る。小さい頃によく作ってやった卵粥を小分けにし、自身はモーニングの店に行こうと決めた。
「ここに、置いておくからな」
額に手を当てると、また熱が上がったらしく熱かった。目を覚ます気配はない。
「じゃあな、行ってくる」
冷却剤を額に当て直し、軽く口付けた。
(色気のねえ泊まりだったな)
ぼやいたが、心は浮かれていた。良佳の側にいて頼られるのは嬉しいらしい。
「かったくっらさーん」
モーニングを済ませ店を出ると、テイクアウトを手にした前田慶次と会った。
「おう、前田か」
「おはよーっす! 見覚えのあるナンバーの車があったから、もしやと思ってさ」
「そうか」
「んー? なんか、ご機嫌だね。あっ! さては、良佳ちゃんと何かあった!?」
否定しようと思ったが、慶次の家は良佳のすぐ隣だ。感付かれたか、あるいは見られたか。
どちらにせよ、慶次が確信犯であることは間違いないだろうから、素直に答えることにした。
「あった。だが、お前が期待することはまだ何もねえ」
小十郎があまりに素直に認めたので、慶次は驚いて目を丸くした。
「そ、そっか。いや、まあ、いずれにせよ前進したんだね」
「そうだな」
「じゃあさ、更に前進しなきゃだね。例えば、二人で遊びに行くとかさ」
「遊びに?」
つまり、デートに誘えと言っているのだ。
「いきなり二人がつらいなら、共通の知り合いで協力してくれそうな人に間に入ってくれるよう頼むとかさ。あ、俺はダメだよ。片倉さん、俺がいたら睨むでしょ」
そんなことはないと言いたかったが、慶次と良佳が話していて、果たして冷静でいられるかと聞かれれば確かに自信はない。
「まあ、考えてみてよ。お節介男からの提案でした☆ じゃ、俺、朝飯食いに職場行くんで」
そう言って、慶次はバイクで去っていった。
「遊びに、な……」
小十郎はため息をついた。
二人で遊んだことはあるが、当然ながら男女のそれではないし、第一子供の頃の話だ。
「共通の、知り合い……」
頭に浮かんだのは、政宗と紗智だった。
と、そこへ輝宗から携帯に連絡が入った。
『おはよう、小十郎。朝早く済まない。今、いいか』
「はい。いかがなさいましたか?」
『来月の中旬の土日、空いているか?』
「来月の、ですか?」
夜。
あらかじめ携帯で良佳に今晩も行くと連絡しておいたので、インターフォンを鳴らすとすぐに出てきた。
「お帰り、こじゅ兄」
「ただいま」
頭をポンポンと撫でると、照れくさそうにはにかんだ。
「熱、下がったみてえだな」
「うん」
「早く治って良かったな」
「こじゅ兄のおかげ。うつってない?」
「大丈夫だ。下がったとはいえ、油断はするなよ」
良佳は頷くと、ベッドに戻った。
「卵粥、美味しかった。懐かしい味」
「作ってやったの、子供の頃以来だからな」
「あのお粥には、お世話になりました」
おどけて頭を下げたので、小十郎は笑った。
「ところで、来月中旬の土日、予定空いてるか?」
「うん、空いてる」
「輝宗さまのお呼び出しで、一緒に仙台に来いとの仰せだ」
「輝宗おじさんが……」
良佳の表情がたちまち曇る。
「おじさんに呼び出される時って、大概嫌な話ばっかなんだもん。気、進まない」
「駄目だ、伊達宗家の命令だ」
「うー……」
血脈からいって、良佳は生粋の茂庭人間ではない。が、幼い頃から伊達イズムはしっかり叩きこまれており、宗家や当主の命令と聞けば断れないよう刷り込まれている。
「分かった、空けとく」
「夜は、政宗さま、紗智さまとの会食があるそうだ」
「さっち来るの?」
途端、機嫌がよくなった。
「ライブ以来だから嬉しい」
「茂庭にも寄りゃいい」
「実家はいい。ツナ兄いないし。どうせなら、温泉入りたい」
「なら、小原か秋保の温泉でも入って帰るか?」
温泉と聞き、朝、慶次に言われたことを思い出したので、冗談のつもりで誘ってみた。
「……行くなら、小原行きたい。ついでに、材木岩公園行きたい」
すると、意外な回答が来た。
「……いいのか?」
「こじゅ兄が言ったんじゃん」
目をしばたかせると、良佳が怪訝な顔をした。
「そ、そうだな。あー……、この話はまた明日にするか。明日出勤するつもりなら、早目に休まねえと」
「あ、うん。ご飯作るよ」
「いや、お前は寝てろ。俺がやるから」
「じゃあ、お願いしよっと」
そう言うと、良佳はDVDデッキの電源をつけ、撮りだめた番組を見始めた。
(まさか、行くと言われるとはな……)
良佳に背を向ける格好で台所に立つと、小十郎の口元は嬉しさのあまり思わず緩んだ。
(起こしたか)
ベッドの良佳を見たが、目覚ましに気付いた様子はなくぐっすり寝ている。
(シャワー借りるぞ)
持参したタオルと下着を持って浴室に入った。
良佳が心配だが、休む訳にはいかない。手短にシャワーを済ませると、良佳の食事を作る。小さい頃によく作ってやった卵粥を小分けにし、自身はモーニングの店に行こうと決めた。
「ここに、置いておくからな」
額に手を当てると、また熱が上がったらしく熱かった。目を覚ます気配はない。
「じゃあな、行ってくる」
冷却剤を額に当て直し、軽く口付けた。
(色気のねえ泊まりだったな)
ぼやいたが、心は浮かれていた。良佳の側にいて頼られるのは嬉しいらしい。
「かったくっらさーん」
モーニングを済ませ店を出ると、テイクアウトを手にした前田慶次と会った。
「おう、前田か」
「おはよーっす! 見覚えのあるナンバーの車があったから、もしやと思ってさ」
「そうか」
「んー? なんか、ご機嫌だね。あっ! さては、良佳ちゃんと何かあった!?」
否定しようと思ったが、慶次の家は良佳のすぐ隣だ。感付かれたか、あるいは見られたか。
どちらにせよ、慶次が確信犯であることは間違いないだろうから、素直に答えることにした。
「あった。だが、お前が期待することはまだ何もねえ」
小十郎があまりに素直に認めたので、慶次は驚いて目を丸くした。
「そ、そっか。いや、まあ、いずれにせよ前進したんだね」
「そうだな」
「じゃあさ、更に前進しなきゃだね。例えば、二人で遊びに行くとかさ」
「遊びに?」
つまり、デートに誘えと言っているのだ。
「いきなり二人がつらいなら、共通の知り合いで協力してくれそうな人に間に入ってくれるよう頼むとかさ。あ、俺はダメだよ。片倉さん、俺がいたら睨むでしょ」
そんなことはないと言いたかったが、慶次と良佳が話していて、果たして冷静でいられるかと聞かれれば確かに自信はない。
「まあ、考えてみてよ。お節介男からの提案でした☆ じゃ、俺、朝飯食いに職場行くんで」
そう言って、慶次はバイクで去っていった。
「遊びに、な……」
小十郎はため息をついた。
二人で遊んだことはあるが、当然ながら男女のそれではないし、第一子供の頃の話だ。
「共通の、知り合い……」
頭に浮かんだのは、政宗と紗智だった。
と、そこへ輝宗から携帯に連絡が入った。
『おはよう、小十郎。朝早く済まない。今、いいか』
「はい。いかがなさいましたか?」
『来月の中旬の土日、空いているか?』
「来月の、ですか?」
夜。
あらかじめ携帯で良佳に今晩も行くと連絡しておいたので、インターフォンを鳴らすとすぐに出てきた。
「お帰り、こじゅ兄」
「ただいま」
頭をポンポンと撫でると、照れくさそうにはにかんだ。
「熱、下がったみてえだな」
「うん」
「早く治って良かったな」
「こじゅ兄のおかげ。うつってない?」
「大丈夫だ。下がったとはいえ、油断はするなよ」
良佳は頷くと、ベッドに戻った。
「卵粥、美味しかった。懐かしい味」
「作ってやったの、子供の頃以来だからな」
「あのお粥には、お世話になりました」
おどけて頭を下げたので、小十郎は笑った。
「ところで、来月中旬の土日、予定空いてるか?」
「うん、空いてる」
「輝宗さまのお呼び出しで、一緒に仙台に来いとの仰せだ」
「輝宗おじさんが……」
良佳の表情がたちまち曇る。
「おじさんに呼び出される時って、大概嫌な話ばっかなんだもん。気、進まない」
「駄目だ、伊達宗家の命令だ」
「うー……」
血脈からいって、良佳は生粋の茂庭人間ではない。が、幼い頃から伊達イズムはしっかり叩きこまれており、宗家や当主の命令と聞けば断れないよう刷り込まれている。
「分かった、空けとく」
「夜は、政宗さま、紗智さまとの会食があるそうだ」
「さっち来るの?」
途端、機嫌がよくなった。
「ライブ以来だから嬉しい」
「茂庭にも寄りゃいい」
「実家はいい。ツナ兄いないし。どうせなら、温泉入りたい」
「なら、小原か秋保の温泉でも入って帰るか?」
温泉と聞き、朝、慶次に言われたことを思い出したので、冗談のつもりで誘ってみた。
「……行くなら、小原行きたい。ついでに、材木岩公園行きたい」
すると、意外な回答が来た。
「……いいのか?」
「こじゅ兄が言ったんじゃん」
目をしばたかせると、良佳が怪訝な顔をした。
「そ、そうだな。あー……、この話はまた明日にするか。明日出勤するつもりなら、早目に休まねえと」
「あ、うん。ご飯作るよ」
「いや、お前は寝てろ。俺がやるから」
「じゃあ、お願いしよっと」
そう言うと、良佳はDVDデッキの電源をつけ、撮りだめた番組を見始めた。
(まさか、行くと言われるとはな……)
良佳に背を向ける格好で台所に立つと、小十郎の口元は嬉しさのあまり思わず緩んだ。