冬・二部
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いつの間にか眠っていたらしい。額がひんやりと気持ちよくて目が覚めた。
「起こしたか」
目を開けると、ベッドサイドに小十郎がいた。
「こじゅ、兄……?」
「ああ」
見ると、右手を両手で握ってくれていた。
「帰ったんじゃ、ないの……?」
「帰ったぞ。それから、ドラッグストア寄って戻ってきた」
「戻っ、て……」
自然と涙がこぼれた。
「何、泣いてんだ」
「こじゅ兄、家に帰ったと思ったから……」
「こんな状態のお前を置いて帰ったりしねえよ」
頭を撫でると、目に手を当てた。
「側にいてやれるうちはずっといるから、安心して寝ろ。今お前がやることは、寝ることだ」
「う、うん……」
薬の効果のせいか、目を閉じると簡単に眠りが訪れた。
「ったく、心配でお前を無理やり仙台に連れて帰りたくなるじゃねえか」
良佳の反応はもうない。
「……お前は、思えばガキの頃からずっと俺を救ってくれたよな」
反応がないことをいいことに、小十郎は良佳に語りかけた。
「養子先から帰ってきて荒れてた俺を立ち直せてくれたし、いつも真っ直ぐに愛情を向けてくれたおかげで、また人を信用出来るようになった」
先ほどつけてやった冷却剤が、もう温くなっている。新しいのと取り替え、頬に軽く口付けた。
「俺は、お前に愛情をもらってばっかだった。それが当たり前になってた。俺は、お前に甘え依存してたんだ。……だが、これからは違う」
繋いだ手を固く握った。
「今度は、俺がお前に愛情を渡す番だ。お前がいらねえって言っても止めてやらねえ。……だいたいな」
小十郎は、人の悪い笑みを浮かべた。
「お前は、俺がいねえと駄目なように育てたようなもんだ。俺から離れられる訳ねえだろ? だから、気にせず依存すりゃいい。いくら依存されても俺の気持ちは切れたりしねえし、むしろそれが俺を成り立たせる」
ヒューヒューと続く浅い呼吸が耳に届く。
汗でしっとりと濡れた前髪をすくう。治るようにと額に口付けし、再び頬に口付けた。
「側にいる、ずっとな」
最後に、薄く開かれた唇に自分のを押し当てた。
「……ん」
目が覚めると、身体がとても軽かった。発熱が、一時的だがおさまったからだろう。
「うわ、汗……」
寝間着がぐっしょりと濡れていて、不快な気分になった。
「パジャマ……」
起き上がろうとして、右手に何かの感触があることに気が付いた。
「手、こじゅ兄の……」
夢うつつに小十郎の姿を見た記憶はあるが、現実だと思わなかった。
「ん……」
うつ伏せでベッドサイドに眠る小十郎が目を覚ました。
「起きたんだな」
「うん……」
「顔色がいい。あとは……」
額に手を当てる。
「今は、熱下がったみてえだな。薬飲むか。と、その前に軽く飯だな。どんだけ食える?」
「おにぎり一個ぐらい。それと、喉乾いた」
「ぬるめのポカリでよけりゃ、目覚まし時計の側にあるぜ」
ありがとうと言ってキャップをひねる。いささか物足りない冷たさだったが、キンキンに冷えたのよりは胃に優しかった。
「うわ、夜中の3時じゃん。こじゅ兄寝ないと、明日しんどいよ」
「看病のためにここにいるんだ。それに、寝不足にゃ慣れてる。気にすんな」
そう言われては何も言えない。おとなしく言うことを聞くことにした。
手渡されたおにぎりをなんとか腹におさめ、薬を口にして再び横になろうとしたが、衣服が濡れていることを思い出した。
「どうした?」
「寝間着が汗で濡れてて……。新しい寝間着、取って」
「ああ。ついでに身体拭くか」
「じゃあ、上半身だけ」
小十郎は一つ頷くと、指示された場所から寝間着を取り出し、ぬるめのお湯に浸したタオルと一緒に手渡した。
「向こう行ってて、こじゅ兄」
「恥ずかしがることねえだろ。ガキの頃は、よく一緒に風呂入ってただろうが」
「今と昔を一緒にしないでよっ」
「なんなら俺が拭いてやる。その方が早いだろ」
「遠慮する!」
「何だ、恥ずかしいのか?」
にやりと笑うと、良佳の上着を無理やりめくった。
「ぎゃっ!!」
「何だ、色気のねえ声だな。安心しろ、拭くのは背中だけにしといてやる」
「あ、当たり前!」
良佳は、慌てて布団を掴み前を覆った。
撫でるように、軽く叩くように拭いていた手が止まる。
「ガキん時に茂庭でつけられた跡、消えてねえんだな」
ある箇所を指で叩いた。
背中のちょうど真ん中あたり、兄姉たちの暴行でついた傷跡がうっすらと残っている。どうやら、そのことを言っているらしい。
「だいぶ薄くなったけどね。しょうがない」
「しょうがない、じゃねえだろ」
そう言うと、小十郎は唇を跡に押し付けた。
「こ、こじゅ兄!?」
リップ音を立て、何度も唇を這わす。
「や、やだっ、止め、んっ!」
喘ぎそうになるのを必死で止める。
「これで、この傷は俺のもんだな」
「は!?」
「嫌な過去は、俺が上書きしてやる。助手席同様な」
背中に小十郎の額が当てられる。じんわりと伝わる熱が、良佳の中に発熱と違う熱を発生させた。
「タオル、温め直してくる」
良佳の頭をくしゃりとすると、小十郎は台所に向かった。
「ぇ、ぁ……、~っ!!」
良佳はしばらく呆然としていたが、慌てて新しい寝間着に着替えると、頭から布団をかぶり中にこもった。
「良佳?」
それを見た小十郎は小さく笑った。
(布団にこもっての拒否反応。……ガキの頃となんら変わらねえな)
こうなっては、何を言っても出てこない。
用済みのタオルをハンガーに吊るして部屋にかけ、借りた布団をベッドの横に敷き直すと、おやすみと言って自身も横たわった。
「起こしたか」
目を開けると、ベッドサイドに小十郎がいた。
「こじゅ、兄……?」
「ああ」
見ると、右手を両手で握ってくれていた。
「帰ったんじゃ、ないの……?」
「帰ったぞ。それから、ドラッグストア寄って戻ってきた」
「戻っ、て……」
自然と涙がこぼれた。
「何、泣いてんだ」
「こじゅ兄、家に帰ったと思ったから……」
「こんな状態のお前を置いて帰ったりしねえよ」
頭を撫でると、目に手を当てた。
「側にいてやれるうちはずっといるから、安心して寝ろ。今お前がやることは、寝ることだ」
「う、うん……」
薬の効果のせいか、目を閉じると簡単に眠りが訪れた。
「ったく、心配でお前を無理やり仙台に連れて帰りたくなるじゃねえか」
良佳の反応はもうない。
「……お前は、思えばガキの頃からずっと俺を救ってくれたよな」
反応がないことをいいことに、小十郎は良佳に語りかけた。
「養子先から帰ってきて荒れてた俺を立ち直せてくれたし、いつも真っ直ぐに愛情を向けてくれたおかげで、また人を信用出来るようになった」
先ほどつけてやった冷却剤が、もう温くなっている。新しいのと取り替え、頬に軽く口付けた。
「俺は、お前に愛情をもらってばっかだった。それが当たり前になってた。俺は、お前に甘え依存してたんだ。……だが、これからは違う」
繋いだ手を固く握った。
「今度は、俺がお前に愛情を渡す番だ。お前がいらねえって言っても止めてやらねえ。……だいたいな」
小十郎は、人の悪い笑みを浮かべた。
「お前は、俺がいねえと駄目なように育てたようなもんだ。俺から離れられる訳ねえだろ? だから、気にせず依存すりゃいい。いくら依存されても俺の気持ちは切れたりしねえし、むしろそれが俺を成り立たせる」
ヒューヒューと続く浅い呼吸が耳に届く。
汗でしっとりと濡れた前髪をすくう。治るようにと額に口付けし、再び頬に口付けた。
「側にいる、ずっとな」
最後に、薄く開かれた唇に自分のを押し当てた。
「……ん」
目が覚めると、身体がとても軽かった。発熱が、一時的だがおさまったからだろう。
「うわ、汗……」
寝間着がぐっしょりと濡れていて、不快な気分になった。
「パジャマ……」
起き上がろうとして、右手に何かの感触があることに気が付いた。
「手、こじゅ兄の……」
夢うつつに小十郎の姿を見た記憶はあるが、現実だと思わなかった。
「ん……」
うつ伏せでベッドサイドに眠る小十郎が目を覚ました。
「起きたんだな」
「うん……」
「顔色がいい。あとは……」
額に手を当てる。
「今は、熱下がったみてえだな。薬飲むか。と、その前に軽く飯だな。どんだけ食える?」
「おにぎり一個ぐらい。それと、喉乾いた」
「ぬるめのポカリでよけりゃ、目覚まし時計の側にあるぜ」
ありがとうと言ってキャップをひねる。いささか物足りない冷たさだったが、キンキンに冷えたのよりは胃に優しかった。
「うわ、夜中の3時じゃん。こじゅ兄寝ないと、明日しんどいよ」
「看病のためにここにいるんだ。それに、寝不足にゃ慣れてる。気にすんな」
そう言われては何も言えない。おとなしく言うことを聞くことにした。
手渡されたおにぎりをなんとか腹におさめ、薬を口にして再び横になろうとしたが、衣服が濡れていることを思い出した。
「どうした?」
「寝間着が汗で濡れてて……。新しい寝間着、取って」
「ああ。ついでに身体拭くか」
「じゃあ、上半身だけ」
小十郎は一つ頷くと、指示された場所から寝間着を取り出し、ぬるめのお湯に浸したタオルと一緒に手渡した。
「向こう行ってて、こじゅ兄」
「恥ずかしがることねえだろ。ガキの頃は、よく一緒に風呂入ってただろうが」
「今と昔を一緒にしないでよっ」
「なんなら俺が拭いてやる。その方が早いだろ」
「遠慮する!」
「何だ、恥ずかしいのか?」
にやりと笑うと、良佳の上着を無理やりめくった。
「ぎゃっ!!」
「何だ、色気のねえ声だな。安心しろ、拭くのは背中だけにしといてやる」
「あ、当たり前!」
良佳は、慌てて布団を掴み前を覆った。
撫でるように、軽く叩くように拭いていた手が止まる。
「ガキん時に茂庭でつけられた跡、消えてねえんだな」
ある箇所を指で叩いた。
背中のちょうど真ん中あたり、兄姉たちの暴行でついた傷跡がうっすらと残っている。どうやら、そのことを言っているらしい。
「だいぶ薄くなったけどね。しょうがない」
「しょうがない、じゃねえだろ」
そう言うと、小十郎は唇を跡に押し付けた。
「こ、こじゅ兄!?」
リップ音を立て、何度も唇を這わす。
「や、やだっ、止め、んっ!」
喘ぎそうになるのを必死で止める。
「これで、この傷は俺のもんだな」
「は!?」
「嫌な過去は、俺が上書きしてやる。助手席同様な」
背中に小十郎の額が当てられる。じんわりと伝わる熱が、良佳の中に発熱と違う熱を発生させた。
「タオル、温め直してくる」
良佳の頭をくしゃりとすると、小十郎は台所に向かった。
「ぇ、ぁ……、~っ!!」
良佳はしばらく呆然としていたが、慌てて新しい寝間着に着替えると、頭から布団をかぶり中にこもった。
「良佳?」
それを見た小十郎は小さく笑った。
(布団にこもっての拒否反応。……ガキの頃となんら変わらねえな)
こうなっては、何を言っても出てこない。
用済みのタオルをハンガーに吊るして部屋にかけ、借りた布団をベッドの横に敷き直すと、おやすみと言って自身も横たわった。