秋・一部
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「離せ」
「離さねぇよ、やっと会えたってのに」
「じゃれるなら他の奴にしろや。あたしは忙し……、っ!」
鎖骨がきしむ。腕の力の入り具合から、彼が本気なのが分かる。
「オレの電話には出ねぇくせに、小十郎なら出るのかよ。いつだってオレはお前しか見てねぇし、お前しか欲しくねぇってのによ」
力が入れば入るほど体は密着していき、政宗の慟哭が耳に直接吹き込まれる。
「止めろ。こんなことされたって、気持ちは変わんねえよ」
「……なら、力ずくでこっちを向かせてやる」
片方の腕が腰に回り、もう片方が服の上から胸を揉み始めた。
「っ、止めろ!」
良佳はすぐに抵抗したが、力の差は如何ともしがたく体を壁に押し付けられ、胸を掴まれていた手で今度は両手首を握られた。腰に回された腕のおかげで体に衝撃はこなかったものの、全く身動きが取れない。
「言って分からねぇなら、身体に教えてやるよ。ここでヤラれたら、さすがのお前でも気が変わるだろ?」
耳元で囁かれた言葉に、全身の毛が逆立った。政宗が怖いと思った。
思った瞬間、体が震え始めた。
「……い」
「Ah?」
「怖い、政宗が……」
良佳の消えそうな声に、政宗は己がしでかしたことと抑え付けている手首が震えていることに気付いた。
「良佳……」
背を向けたまま肩を震わせている。泣いているのかもしれない。
(オレは、好きな女を泣かすことしか出来ねぇのかよ!)
身体はこんなに密着しているのに、手は確かに良佳の温もりを感じ取っているのに、肝心の心が遠すぎる。心は手を伸ばしても届かない距離にあって、無理矢理掴もうとすると砕けてしまう。
「良佳」
もう一度声をかけるが、相変わらず返事はなく肩は震えたままだ。
「……Don’t cry」
髪の毛にキスを落とす。全身がびくっと震えた。良佳が政宗を全身で拒んでいる証明で、政宗は唇を噛んだ。
「もうやらねぇ。お前を泣かすようなことは一生やらねぇよ。……でも、謝らねぇ。これがオレの気持ちだからな」
返事はなかった。だが、今はそれでいいと思った。
今は届かなくても、いつかは届いて欲しい。ずっと後でもいい、ふいに思い出して欲しい。届かぬ声とは、そのために上げるのだから。
そんな願いを込め、政宗は好きだと言ってもう一度髪の毛にキスした。
学園祭最終日。
紗智は眠れない身体を無理に起こし、休日のキャンパスへ向かった。キャンパスは、学園祭最終日ということもあって人でごった返していた。
紗智は、ここ数日睡眠不足に悩まされていた。
それの原因は、上杉謙信から世界へ出ろと進言されたこと、政宗もそれに諸手を上げて賛成し一緒に家内の古き体制を壊すよう言われたこと、そして、偶然見てしまった政宗と良佳の修羅場だった。
『もうやらねぇ。お前を泣かすようなことは一生やらねぇよ。……でも、謝らねぇ。これがオレの気持ちだからな』
煙草が切れたので、小十郎に買ってきて貰おうと研究棟に立ち寄ったのが間違っていた。
ここまで己の行動を否定したのは初めてかもしれない。それ程に、心をかき乱し嫉妬心を煽り立てるシーンだった。同時に、己がどれ程政宗という男に恋焦がれているか思い知らされた出来事でもある。
(許婚がいるのにね)
豊臣グループの研究員である竹中半兵衛との婚約が正式に決まり、紗智はいよいよ伊達グループの敷いたレールに乗せられることとなった。
ただ、この話が決まったその日に政宗から成実の携帯に電話がかかってき、紗智の世界進出計画に変わりはないと告げれらた。
ふらふらする足取りで辿り着いた研究棟は、今までとは打って変わって静寂が支配している。人の気配すら感じられない棟に、たった一人在室している者がいた。
「紗智さま、どうなさったのです?」
部屋に到着するなりへたりこんだ紗智に、小十郎は慌てて駆け寄った。
「ただの貧血、大丈夫だから……」
「お言葉ですが、体が随分と冷えておいでです。それに、顔も青い。ソファに横になって下さい」
否定しようにも身体に力が入らない。失礼と断りを入れられてから膝の下に腕を入れられた。どうやら小十郎に抱かれる格好で運ばれているようだが、意識が朦朧としている最中ではそんなことはどうでもいいことに感じられた。
「離さねぇよ、やっと会えたってのに」
「じゃれるなら他の奴にしろや。あたしは忙し……、っ!」
鎖骨がきしむ。腕の力の入り具合から、彼が本気なのが分かる。
「オレの電話には出ねぇくせに、小十郎なら出るのかよ。いつだってオレはお前しか見てねぇし、お前しか欲しくねぇってのによ」
力が入れば入るほど体は密着していき、政宗の慟哭が耳に直接吹き込まれる。
「止めろ。こんなことされたって、気持ちは変わんねえよ」
「……なら、力ずくでこっちを向かせてやる」
片方の腕が腰に回り、もう片方が服の上から胸を揉み始めた。
「っ、止めろ!」
良佳はすぐに抵抗したが、力の差は如何ともしがたく体を壁に押し付けられ、胸を掴まれていた手で今度は両手首を握られた。腰に回された腕のおかげで体に衝撃はこなかったものの、全く身動きが取れない。
「言って分からねぇなら、身体に教えてやるよ。ここでヤラれたら、さすがのお前でも気が変わるだろ?」
耳元で囁かれた言葉に、全身の毛が逆立った。政宗が怖いと思った。
思った瞬間、体が震え始めた。
「……い」
「Ah?」
「怖い、政宗が……」
良佳の消えそうな声に、政宗は己がしでかしたことと抑え付けている手首が震えていることに気付いた。
「良佳……」
背を向けたまま肩を震わせている。泣いているのかもしれない。
(オレは、好きな女を泣かすことしか出来ねぇのかよ!)
身体はこんなに密着しているのに、手は確かに良佳の温もりを感じ取っているのに、肝心の心が遠すぎる。心は手を伸ばしても届かない距離にあって、無理矢理掴もうとすると砕けてしまう。
「良佳」
もう一度声をかけるが、相変わらず返事はなく肩は震えたままだ。
「……Don’t cry」
髪の毛にキスを落とす。全身がびくっと震えた。良佳が政宗を全身で拒んでいる証明で、政宗は唇を噛んだ。
「もうやらねぇ。お前を泣かすようなことは一生やらねぇよ。……でも、謝らねぇ。これがオレの気持ちだからな」
返事はなかった。だが、今はそれでいいと思った。
今は届かなくても、いつかは届いて欲しい。ずっと後でもいい、ふいに思い出して欲しい。届かぬ声とは、そのために上げるのだから。
そんな願いを込め、政宗は好きだと言ってもう一度髪の毛にキスした。
学園祭最終日。
紗智は眠れない身体を無理に起こし、休日のキャンパスへ向かった。キャンパスは、学園祭最終日ということもあって人でごった返していた。
紗智は、ここ数日睡眠不足に悩まされていた。
それの原因は、上杉謙信から世界へ出ろと進言されたこと、政宗もそれに諸手を上げて賛成し一緒に家内の古き体制を壊すよう言われたこと、そして、偶然見てしまった政宗と良佳の修羅場だった。
『もうやらねぇ。お前を泣かすようなことは一生やらねぇよ。……でも、謝らねぇ。これがオレの気持ちだからな』
煙草が切れたので、小十郎に買ってきて貰おうと研究棟に立ち寄ったのが間違っていた。
ここまで己の行動を否定したのは初めてかもしれない。それ程に、心をかき乱し嫉妬心を煽り立てるシーンだった。同時に、己がどれ程政宗という男に恋焦がれているか思い知らされた出来事でもある。
(許婚がいるのにね)
豊臣グループの研究員である竹中半兵衛との婚約が正式に決まり、紗智はいよいよ伊達グループの敷いたレールに乗せられることとなった。
ただ、この話が決まったその日に政宗から成実の携帯に電話がかかってき、紗智の世界進出計画に変わりはないと告げれらた。
ふらふらする足取りで辿り着いた研究棟は、今までとは打って変わって静寂が支配している。人の気配すら感じられない棟に、たった一人在室している者がいた。
「紗智さま、どうなさったのです?」
部屋に到着するなりへたりこんだ紗智に、小十郎は慌てて駆け寄った。
「ただの貧血、大丈夫だから……」
「お言葉ですが、体が随分と冷えておいでです。それに、顔も青い。ソファに横になって下さい」
否定しようにも身体に力が入らない。失礼と断りを入れられてから膝の下に腕を入れられた。どうやら小十郎に抱かれる格好で運ばれているようだが、意識が朦朧としている最中ではそんなことはどうでもいいことに感じられた。