秋・一部
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「Ah? 良佳が携帯不携帯で出かけただぁ? しかも、行き先も告げずにだと?」
一方、不機嫌極まりないのが伊達家の継嗣である。
あの綱元に確認した以上絶対裏がある筈だが、面と向かって彼にそれを問い正す気はない。ああいう風に答えた以上、綱元が本当のことを口にすることはない。そういう男なのだ、茂庭綱元という男は。
「つか、何でよりによって綱元に聞くんだよ、小十郎。家にかけりゃ一発だろうが」
「あれがそうされるのを嫌っていることは、政宗さまもご存知のはず」
そう切り替えされては口を紡ぐしかない。舌打ちすると、幸村に向き直った。
「おい、真田幸村。オレの稽古に付き合いな」
「何と! 手合わせ願えるでござるか!?」
ご当地スイーツをすっかり堪能しつくし、ご機嫌な幸村は途端剣士の顔になった。
二人がとって返した先は大学で、そこは今も学園祭の真っ最中である。ただ、道場は自主練する者もおらず静かであった。
「ちょうどいい、オレとアンタで貸切だ。小十郎、審判しろ」
何故急に稽古などと言い出したのか、答えは簡単である。身近に、幸村という簡単には倒れないかつボコってもいい相手がいたからだ。
政宗のストレス解消法、それが“サドンデス稽古”である。紗智が無心で鍵盤を叩くのと同じで、時間無制限でどちらかが参ったというまで打ち合うというものである。いつもなら小十郎が相手をさせられるのだが、今日は幸村がいる。
(真田、頑張れよ)
サドンデス稽古のハードさを身に沁みて知っている小十郎は、内心幸村に同情した。
稽古を始めて1時間。
「はぁっ!!」
「てえやゃぁ!!」
政宗と幸村の激しい打ち合いは、衰えるどころかますます激しさを増している。生涯唯一のライバルと認めた幸村が相手でなければ、政宗がこうも単純に熱くなることはなかっただろうと小十郎は審判をしながら思った。
それからしばらくしてのこと。突如、場内がにぎやかしくなった。何ごとかと辺りを見渡せば、いつの間にかギャラリーでいっぱいだった。
「ほら、あっちの蒼い帯の人が昨日の演武やった人」
「ほんとだ、カッコイイ!」
どうやら政宗目当ての見物客らしい。昨日の演武で有名になった政宗がキャンパスにいると噂になり、集まってきたのかもしれない。
「政宗さま、この一本で終わりにいたしましょう。場内が少々騒がしくなっておりますゆえ」
「しょうがねぇな。真田幸村、これがlast gameだ」
「心得申した!」
二人は揃って武具を付け直し、居ずまいを正した。本当の試合さながらの雰囲気に、ギャラリーたちも固唾を飲み込み見守った。
小十郎の号令と同時に竹刀の剣先を合わせ、両者打ち合う隙を狙い合う。
有段者同士の戦いは一瞬で、否、竹刀を構えた時点で既に決している。
この日勝ったのは、政宗であった。
「……ったく、何だってんだあの女たちは」
試合後、道場にギャラリーたちが下りて来、政宗は一気に女子に囲まれてしまった。それをかわすのに必死で、おかげで小十郎、幸村とはぐれてしまった。
武具をつけたままで出歩けばそれこそ目立ってしまうので、人気のない研究棟の裏庭に身を寄せ、騒ぎが沈静化するまで待つことにした。
ふと空を見上げれば、夕刻らしく赤みがかった色合いをしていて確実に秋めいてきているのが分かる。
「どうすりゃいいんだか」
「こんなとこにいたのかよ、バカ宗」
横から、聞き慣れた声。振り向けば、不機嫌きわまりない顔をした良佳がそこにいた。
「……お前、何でここに?」
「こじゅ兄から、てめえがヘマやらかしたから助けてやってくれって言われてな」
誰がヘマをと言い返そうとした時、私服を包んでおいた風呂敷が投げつけられた。
「これ、託されてたんで渡しとく。こじゅ兄なら自分の研究室に戻ってるってよ。あと、あのライバルの男の子も一緒らしい」
「どこ行くんだ」
「決まってんだろ、帰るんだよ。試験勉強するためにな」
すぐに踵を返した良佳を呼び止める。更に目尻を吊り上げ睨まれた。
「離せ、あたしは忙しいんだ」
「……小十郎の呼び出しなら応じるのかよ」
「あ?」
ぐいと肩を掴み、良佳を後ろから抱きすくめた。
一方、不機嫌極まりないのが伊達家の継嗣である。
あの綱元に確認した以上絶対裏がある筈だが、面と向かって彼にそれを問い正す気はない。ああいう風に答えた以上、綱元が本当のことを口にすることはない。そういう男なのだ、茂庭綱元という男は。
「つか、何でよりによって綱元に聞くんだよ、小十郎。家にかけりゃ一発だろうが」
「あれがそうされるのを嫌っていることは、政宗さまもご存知のはず」
そう切り替えされては口を紡ぐしかない。舌打ちすると、幸村に向き直った。
「おい、真田幸村。オレの稽古に付き合いな」
「何と! 手合わせ願えるでござるか!?」
ご当地スイーツをすっかり堪能しつくし、ご機嫌な幸村は途端剣士の顔になった。
二人がとって返した先は大学で、そこは今も学園祭の真っ最中である。ただ、道場は自主練する者もおらず静かであった。
「ちょうどいい、オレとアンタで貸切だ。小十郎、審判しろ」
何故急に稽古などと言い出したのか、答えは簡単である。身近に、幸村という簡単には倒れないかつボコってもいい相手がいたからだ。
政宗のストレス解消法、それが“サドンデス稽古”である。紗智が無心で鍵盤を叩くのと同じで、時間無制限でどちらかが参ったというまで打ち合うというものである。いつもなら小十郎が相手をさせられるのだが、今日は幸村がいる。
(真田、頑張れよ)
サドンデス稽古のハードさを身に沁みて知っている小十郎は、内心幸村に同情した。
稽古を始めて1時間。
「はぁっ!!」
「てえやゃぁ!!」
政宗と幸村の激しい打ち合いは、衰えるどころかますます激しさを増している。生涯唯一のライバルと認めた幸村が相手でなければ、政宗がこうも単純に熱くなることはなかっただろうと小十郎は審判をしながら思った。
それからしばらくしてのこと。突如、場内がにぎやかしくなった。何ごとかと辺りを見渡せば、いつの間にかギャラリーでいっぱいだった。
「ほら、あっちの蒼い帯の人が昨日の演武やった人」
「ほんとだ、カッコイイ!」
どうやら政宗目当ての見物客らしい。昨日の演武で有名になった政宗がキャンパスにいると噂になり、集まってきたのかもしれない。
「政宗さま、この一本で終わりにいたしましょう。場内が少々騒がしくなっておりますゆえ」
「しょうがねぇな。真田幸村、これがlast gameだ」
「心得申した!」
二人は揃って武具を付け直し、居ずまいを正した。本当の試合さながらの雰囲気に、ギャラリーたちも固唾を飲み込み見守った。
小十郎の号令と同時に竹刀の剣先を合わせ、両者打ち合う隙を狙い合う。
有段者同士の戦いは一瞬で、否、竹刀を構えた時点で既に決している。
この日勝ったのは、政宗であった。
「……ったく、何だってんだあの女たちは」
試合後、道場にギャラリーたちが下りて来、政宗は一気に女子に囲まれてしまった。それをかわすのに必死で、おかげで小十郎、幸村とはぐれてしまった。
武具をつけたままで出歩けばそれこそ目立ってしまうので、人気のない研究棟の裏庭に身を寄せ、騒ぎが沈静化するまで待つことにした。
ふと空を見上げれば、夕刻らしく赤みがかった色合いをしていて確実に秋めいてきているのが分かる。
「どうすりゃいいんだか」
「こんなとこにいたのかよ、バカ宗」
横から、聞き慣れた声。振り向けば、不機嫌きわまりない顔をした良佳がそこにいた。
「……お前、何でここに?」
「こじゅ兄から、てめえがヘマやらかしたから助けてやってくれって言われてな」
誰がヘマをと言い返そうとした時、私服を包んでおいた風呂敷が投げつけられた。
「これ、託されてたんで渡しとく。こじゅ兄なら自分の研究室に戻ってるってよ。あと、あのライバルの男の子も一緒らしい」
「どこ行くんだ」
「決まってんだろ、帰るんだよ。試験勉強するためにな」
すぐに踵を返した良佳を呼び止める。更に目尻を吊り上げ睨まれた。
「離せ、あたしは忙しいんだ」
「……小十郎の呼び出しなら応じるのかよ」
「あ?」
ぐいと肩を掴み、良佳を後ろから抱きすくめた。