戦国bsr読み切り短編集
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今日はヒロイン名前と小十郎の結婚式。
式は和式、披露宴を兼ねた食事会は洋式で行うことに決めたため、ヒロイン名前はドレスを身にまとっている。
そのドレスは肩を出すスタイルで、小十郎が選んだものだ。
「ドレスには、“運命の一着”と言うものがあるんですよ」
アドバイザーから言われた通り、何十着もある中から小十郎が選んだそれはヒロイン名前のために生まれたようで、ヒロイン名前も即決したお気に入りだ。
当初計画していた食事会はガーデンパーティー形式で、肩口をさらすそれは不向きだったが、運命の代物を変える気はなかったし、ゲストのことを考えても室内パーティーにした方がいいという結論に至り、ドレスは無事ヒロイン名前の運命の一着となったのであった。
とは言え、会場に隣接するガーデンは眺めるだけでは勿体ない造りで、二人はサプライズ演出としてお色直し後にここから入場することにしたのだが――。
「やっぱり、この格好はまだ寒かった……!」
ヒロイン名前は、外気にさらされた剥き出しの肩をさすった。
啓蟄が過ぎ日に日に春めいてはいるが、日によってはまだ寒さが厳しい季節。肩を出すスタイルは、まさに寒さとの戦いだった。
「せっかくのヒロインが、猫背でどうすんだ」
一生に一度の姫姿にも関わらず、いつも寒い時にする姿勢のヒロイン名前に小十郎は苦笑した。
「う~、だって寒いんだもん!」
腕を高速でさすっていると、介添人が気を利かせてケープを持ってきてくれた。
「ありがとうございます!わあ、かわいいっ!」
空色のドレスによく合う、白色のケープ。
もこもこの感触を楽しんでいると、小十郎が後ろから羽織らせてくれた。
「早く羽織れ。着るために持ってきて下さったんだから」
「だって、ねこちゃんの毛みたいで気持ちいいんだもん。羽織るより頬擦りしたい」
「化粧がつくからやめとけ。化粧も直してもらったばっかりじゃねえか」
小十郎はまた笑った。
「今日の小十郎、ずっと笑ってるね」
「お前がすげえと思ってな」
尚も喉を鳴らし笑う夫に、ヒロイン名前は首をかしげた。
「何がすごいの?」
「“いつも”と変わらねえだろ?最初から、ずっと緊張してねえし。お前が羨ましいぜ」
「へ?羨ましい?」
目をしばたかせると、小十郎は肩をすくませた。
「着慣れねえ衣装着てんのに慌てねえ。来賓を見ても動じねえ。自分が一番注目される日なのに変わらねえ。俺なんか、所詮花嫁の添え物だってのに、昨日から緊張しっぱなしだからな」
「そりゃ、花婿は色んな“窓口”じゃない。その点、花嫁は座って笑ってたらいいポジションだもの。これほど楽なポジションはないわ」
「そう考えられるから、すげえんだよ」
しまいに、小十郎は声を上げて笑った。
「“花嫁”をそう思えるお前は最強だな」
「最強だなんて……。なんか、嬉しくない」
ぷう、と頬を膨らませれば、入場の時間となった。
「まあ、かたいことは考えっこなしね!楽しまなきゃ損よ!」
男前なしぐさでケープを脱ぐと、ヒロイン名前は小十郎をぐいぐいリードし入り口の袖に立った。
「そうだな。……分かったぜ。俺も男だ、腹据えてやる」
小十郎は両手を髪に当て、撫で付けた。
「そうそう、その調子!」
リードして、とヒロイン名前が手を差しだし、小十郎が出した腕にそれを絡め二人は寄り添った。
「では新郎さま、お願いしますね」
介添人がクスクス笑うのが気になりつつ、ヒロイン名前は小十郎に導かれるまま入り口でお辞儀をした。
室内から拍手と喝采、カメラのフラッシュ音が聞こえてきた。
「ヒロイン名前」
顔を上げると、小十郎は突然腕組を解きヒロイン名前の腰をぐいと寄せた。
打ち合わせでは、腕を組んだままテーブルまで進むことになっている。
違うと小十郎を見た時、サプライズが起こった。
「んっ!?」
なんと、小十郎にキスされたのだ。
歓声と更なるフラッシュの中、ヒロイン名前はしばらくされるがままだった。
「……お前へのサプライズ演出なんだよ。皆の前で、お前への愛を示せってな」
ようやく解放されると、同じく耳まで真っ赤な小十郎に教えられ、さすがのヒロイン名前も棒立ちするしかなかったのだった。
(了)
式は和式、披露宴を兼ねた食事会は洋式で行うことに決めたため、ヒロイン名前はドレスを身にまとっている。
そのドレスは肩を出すスタイルで、小十郎が選んだものだ。
「ドレスには、“運命の一着”と言うものがあるんですよ」
アドバイザーから言われた通り、何十着もある中から小十郎が選んだそれはヒロイン名前のために生まれたようで、ヒロイン名前も即決したお気に入りだ。
当初計画していた食事会はガーデンパーティー形式で、肩口をさらすそれは不向きだったが、運命の代物を変える気はなかったし、ゲストのことを考えても室内パーティーにした方がいいという結論に至り、ドレスは無事ヒロイン名前の運命の一着となったのであった。
とは言え、会場に隣接するガーデンは眺めるだけでは勿体ない造りで、二人はサプライズ演出としてお色直し後にここから入場することにしたのだが――。
「やっぱり、この格好はまだ寒かった……!」
ヒロイン名前は、外気にさらされた剥き出しの肩をさすった。
啓蟄が過ぎ日に日に春めいてはいるが、日によってはまだ寒さが厳しい季節。肩を出すスタイルは、まさに寒さとの戦いだった。
「せっかくのヒロインが、猫背でどうすんだ」
一生に一度の姫姿にも関わらず、いつも寒い時にする姿勢のヒロイン名前に小十郎は苦笑した。
「う~、だって寒いんだもん!」
腕を高速でさすっていると、介添人が気を利かせてケープを持ってきてくれた。
「ありがとうございます!わあ、かわいいっ!」
空色のドレスによく合う、白色のケープ。
もこもこの感触を楽しんでいると、小十郎が後ろから羽織らせてくれた。
「早く羽織れ。着るために持ってきて下さったんだから」
「だって、ねこちゃんの毛みたいで気持ちいいんだもん。羽織るより頬擦りしたい」
「化粧がつくからやめとけ。化粧も直してもらったばっかりじゃねえか」
小十郎はまた笑った。
「今日の小十郎、ずっと笑ってるね」
「お前がすげえと思ってな」
尚も喉を鳴らし笑う夫に、ヒロイン名前は首をかしげた。
「何がすごいの?」
「“いつも”と変わらねえだろ?最初から、ずっと緊張してねえし。お前が羨ましいぜ」
「へ?羨ましい?」
目をしばたかせると、小十郎は肩をすくませた。
「着慣れねえ衣装着てんのに慌てねえ。来賓を見ても動じねえ。自分が一番注目される日なのに変わらねえ。俺なんか、所詮花嫁の添え物だってのに、昨日から緊張しっぱなしだからな」
「そりゃ、花婿は色んな“窓口”じゃない。その点、花嫁は座って笑ってたらいいポジションだもの。これほど楽なポジションはないわ」
「そう考えられるから、すげえんだよ」
しまいに、小十郎は声を上げて笑った。
「“花嫁”をそう思えるお前は最強だな」
「最強だなんて……。なんか、嬉しくない」
ぷう、と頬を膨らませれば、入場の時間となった。
「まあ、かたいことは考えっこなしね!楽しまなきゃ損よ!」
男前なしぐさでケープを脱ぐと、ヒロイン名前は小十郎をぐいぐいリードし入り口の袖に立った。
「そうだな。……分かったぜ。俺も男だ、腹据えてやる」
小十郎は両手を髪に当て、撫で付けた。
「そうそう、その調子!」
リードして、とヒロイン名前が手を差しだし、小十郎が出した腕にそれを絡め二人は寄り添った。
「では新郎さま、お願いしますね」
介添人がクスクス笑うのが気になりつつ、ヒロイン名前は小十郎に導かれるまま入り口でお辞儀をした。
室内から拍手と喝采、カメラのフラッシュ音が聞こえてきた。
「ヒロイン名前」
顔を上げると、小十郎は突然腕組を解きヒロイン名前の腰をぐいと寄せた。
打ち合わせでは、腕を組んだままテーブルまで進むことになっている。
違うと小十郎を見た時、サプライズが起こった。
「んっ!?」
なんと、小十郎にキスされたのだ。
歓声と更なるフラッシュの中、ヒロイン名前はしばらくされるがままだった。
「……お前へのサプライズ演出なんだよ。皆の前で、お前への愛を示せってな」
ようやく解放されると、同じく耳まで真っ赤な小十郎に教えられ、さすがのヒロイン名前も棒立ちするしかなかったのだった。
(了)