戦国bsr読み切り短編集
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身体という呪縛から解き放たれた俺は今、奥州の空にいる。
左頬に傷のあったあの身体に縛られてた頃には、育った環境や傷、立場など、随分と色んな感情に苛まされてきたもんだなと思う。
まあ、身体があればこその思いでもあるし、こうして国境も何も関係ねえ存在になった今だからこそ言えることでもある訳だが。
俺は一つ笑うと、もっと空高くへと舞い上がった。
戦国の世にあって、寿命をまっとう出来たのは全て政宗さまのおかげだ。
共に戦い、駆け、あの方に賭けた俺の人生は、結果的に大正解だった。やりたいようにやってきたことが、結果的に当たっていると気分がいい。
死んで、俺は初めて俺自身を誉めた。
見慣れた白石の町並みが視界に入り、ふとあの木のことを思い出した。
誰かが、大袈裟に墓を建てようなどと言いやがったので、俺はたいした家臣じゃねえんだからと反対したのだが(生前に墓の話をされるのもどうかと思うが)、とんでもないと逆に大反対を受け、なら代わりにと提案したのが墓標代わりとなる杉であった。
今、俺の目の前にある、墓標代わりのこいつのことだ。
『悪いな。墓標なんか頼んじまって』
そっと触ると、杉が微笑んだ。
と、誰かが手を合わせている姿が目に入った。
この時、俺は墓標代わりでも残してやって良かったと思った。墓標が、残された人間の慰みものになると分かったからだ。
『俺は、ここにいるぜ』
そう言っても、生きている人間には届かない。
当然、俺の大切な人たちにも、だ。
だから、見えるものがあることで、互いが慰められるならいいじゃないか――。
そう思うことにして、俺はこっそり政宗さまの様子を見に行くことした。
まあ、身のないなりでこっそりも何も、ねえんだけどな。
『杉、あとは頼んだぜ』
ふわり飛翔すると、雷が遠くで鳴った気がした。
(了)
左頬に傷のあったあの身体に縛られてた頃には、育った環境や傷、立場など、随分と色んな感情に苛まされてきたもんだなと思う。
まあ、身体があればこその思いでもあるし、こうして国境も何も関係ねえ存在になった今だからこそ言えることでもある訳だが。
俺は一つ笑うと、もっと空高くへと舞い上がった。
戦国の世にあって、寿命をまっとう出来たのは全て政宗さまのおかげだ。
共に戦い、駆け、あの方に賭けた俺の人生は、結果的に大正解だった。やりたいようにやってきたことが、結果的に当たっていると気分がいい。
死んで、俺は初めて俺自身を誉めた。
見慣れた白石の町並みが視界に入り、ふとあの木のことを思い出した。
誰かが、大袈裟に墓を建てようなどと言いやがったので、俺はたいした家臣じゃねえんだからと反対したのだが(生前に墓の話をされるのもどうかと思うが)、とんでもないと逆に大反対を受け、なら代わりにと提案したのが墓標代わりとなる杉であった。
今、俺の目の前にある、墓標代わりのこいつのことだ。
『悪いな。墓標なんか頼んじまって』
そっと触ると、杉が微笑んだ。
と、誰かが手を合わせている姿が目に入った。
この時、俺は墓標代わりでも残してやって良かったと思った。墓標が、残された人間の慰みものになると分かったからだ。
『俺は、ここにいるぜ』
そう言っても、生きている人間には届かない。
当然、俺の大切な人たちにも、だ。
だから、見えるものがあることで、互いが慰められるならいいじゃないか――。
そう思うことにして、俺はこっそり政宗さまの様子を見に行くことした。
まあ、身のないなりでこっそりも何も、ねえんだけどな。
『杉、あとは頼んだぜ』
ふわり飛翔すると、雷が遠くで鳴った気がした。
(了)