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<三成編>
帰社後の仕事ぶりを見て、おそらくメールで約束した待ち合わせ時間に間に合わないだろうと思い、場所と時間を変更しようと提案したのは定時20分前。退社して5分後に、
『了解』
という題名のみのメールが返ってきたので、待ち合わせ時間まで職場近くのカフェで適当に時間を潰していた。
(三成に早く答えを伝えたいな。でも、幼馴染だから言わなくても分かっているって言いそうだから、何か伝え甲斐がない気もする……)
ワクワクとした感覚と、気心知れた間柄ゆえに特に期待するものもないという、いい意味での安堵感が心の中でせめぎ合い、せっかくのカフェオレボールでのカフェオレの味が全然分からなかった。
約束の時間近くになって、
『もう少しで終わる、待っていろ』
と、同じく題名にそう記載されたメールが来たので、それならば会社とカフェの中間にある公園で待ってる、その方が早いからとメールしブランコに腰かけたところで彼が現れた。
「早かったね、三成」
にこっと笑って見せたが、返ってきたのはいつものお小言だった。
「こんな場所で一人待つなど、貴様には自覚がないのか!」
「危ないって自覚、あるよ。だから、街灯が当たってるこのブランコにしたの。それに、三成に早く会いたかったから」
その言葉を聞いて少し照れた三成は、照れ隠しにフンと言って隣のブランコに腰かけた。
「ねえ、覚えてる? 昔、二人でよくこうして漕ぎ合ったよね」
「……忘れた」
「どっちが高く速く漕げるか競争して、わたしがブランコから落っこちたことがあったね。あの時も、三成はずっとわたしの心配してくれてたよね」
「貴様は、見ていないと危ないからな」
「ちゃんと覚えてるんじゃない」
苦笑すると、またフンと言われた。さっきより大きい声が照れ度の度合いを示していた。
「あの時だけじゃない。離れても、三成はずっとわたしのことを心配してくれてたよね」
「当たり前だ。貴様を心配していいのは、私だけだからな」
「じゃあさ」
ブランコから降り、三成の隣に立った。
「今度は、わたしにも三成の心配をさせて」
三成は、ゆっくりとわたしを見つめた。
「貴様に、私の心配は出来ない」
「出来るよ。お弁当とかで」
三成がゆっくりと立ち上がる。
「注文弁当も美味しかったけど、今度は一緒に作ったりしてみたいなって……」
言い終えるより先に、三成の腕に閉じ込められた。
「遅い。私を待たせるな」
「言わなくてもわたしの答えは分かってるって言ってたの、誰かな~?」
「う、うるさいっ」
ぎゅっと、抱きしめる力がもっと強くなる。
「転勤先、滋賀だったよね」
「ああ」
「大阪と滋賀なら中間に住めばいいよね。仕事、続けてもいいでしょ?」
「……」
「お弁当もご飯も、ちゃんと作るよ?」
「……よろしく頼む」
顔は見えないけど、きっと珍しく口元に笑みを浮かべているであろう恋人の、それが返答だった。
(三成編・了)
帰社後の仕事ぶりを見て、おそらくメールで約束した待ち合わせ時間に間に合わないだろうと思い、場所と時間を変更しようと提案したのは定時20分前。退社して5分後に、
『了解』
という題名のみのメールが返ってきたので、待ち合わせ時間まで職場近くのカフェで適当に時間を潰していた。
(三成に早く答えを伝えたいな。でも、幼馴染だから言わなくても分かっているって言いそうだから、何か伝え甲斐がない気もする……)
ワクワクとした感覚と、気心知れた間柄ゆえに特に期待するものもないという、いい意味での安堵感が心の中でせめぎ合い、せっかくのカフェオレボールでのカフェオレの味が全然分からなかった。
約束の時間近くになって、
『もう少しで終わる、待っていろ』
と、同じく題名にそう記載されたメールが来たので、それならば会社とカフェの中間にある公園で待ってる、その方が早いからとメールしブランコに腰かけたところで彼が現れた。
「早かったね、三成」
にこっと笑って見せたが、返ってきたのはいつものお小言だった。
「こんな場所で一人待つなど、貴様には自覚がないのか!」
「危ないって自覚、あるよ。だから、街灯が当たってるこのブランコにしたの。それに、三成に早く会いたかったから」
その言葉を聞いて少し照れた三成は、照れ隠しにフンと言って隣のブランコに腰かけた。
「ねえ、覚えてる? 昔、二人でよくこうして漕ぎ合ったよね」
「……忘れた」
「どっちが高く速く漕げるか競争して、わたしがブランコから落っこちたことがあったね。あの時も、三成はずっとわたしの心配してくれてたよね」
「貴様は、見ていないと危ないからな」
「ちゃんと覚えてるんじゃない」
苦笑すると、またフンと言われた。さっきより大きい声が照れ度の度合いを示していた。
「あの時だけじゃない。離れても、三成はずっとわたしのことを心配してくれてたよね」
「当たり前だ。貴様を心配していいのは、私だけだからな」
「じゃあさ」
ブランコから降り、三成の隣に立った。
「今度は、わたしにも三成の心配をさせて」
三成は、ゆっくりとわたしを見つめた。
「貴様に、私の心配は出来ない」
「出来るよ。お弁当とかで」
三成がゆっくりと立ち上がる。
「注文弁当も美味しかったけど、今度は一緒に作ったりしてみたいなって……」
言い終えるより先に、三成の腕に閉じ込められた。
「遅い。私を待たせるな」
「言わなくてもわたしの答えは分かってるって言ってたの、誰かな~?」
「う、うるさいっ」
ぎゅっと、抱きしめる力がもっと強くなる。
「転勤先、滋賀だったよね」
「ああ」
「大阪と滋賀なら中間に住めばいいよね。仕事、続けてもいいでしょ?」
「……」
「お弁当もご飯も、ちゃんと作るよ?」
「……よろしく頼む」
顔は見えないけど、きっと珍しく口元に笑みを浮かべているであろう恋人の、それが返答だった。
(三成編・了)
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