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<家康編>
「名前、待たせたな」
夜、会社からほと近い居酒屋で徳川くんと待ち合わせをした。
「ううん、わたしは平気。徳川くんこそ、引き継ぎとかあるのにこんなに早く上がって大丈夫なの?」
「大丈夫だ。転勤があることは分かっていたからな。引き継ぎは早々に済ませておいた」
さすがは社内でも1、2位を争う出世頭だな。
「で、ワシを呼び出したということは、ワシが望む答えをくれると思っていいんだな?」
満面の笑みの中に少し緊張感が漂っている。さすがの徳川くんでも、怖いことってあるみたいだ。
その怖いものがわたしって、何だか優越感。
「何を笑っているんだ?」
「ううん、わたしでも徳川くんに勝てることがあるんだなって思ったら、なんか嬉しくって」
クスッと笑うと、徳川くんは肩をすくめた。
「お前がワシに勝っている点はたくさんある。お前が気付いていないだけだ」
「そう? まあ、お弁当のおかずの数は勝ってたわよね」
「はは、その通りだな。味も、お前の方が繊細で愛情深く、手間がかかっているのがよく分かった」
「三成の方が、そういうこと敏感だと思ったけど、ちゃんと気付いてくれてたのね」
「当たり前だ」
言い合った後、二人して飽きるまで笑い合った。そして、ゆっくりと見つめあった。
「名前、お前の作る料理を、ワシはずっと食べていたい。弁当に限らず、家でもだ」
「……はい」
答えは決まっていたけど、改めて答えたらすごく恥ずかしくて、答えた後でものすごく真っ赤になってしまった。そんなわたしを見て、徳川くんも珍しくちょっと赤くなって照れくさそうに頭を掻いていた。
「そう言ってもらえて嬉しいな。ありがとう。名前、本当にありがとう!」
徳川くんは、わたしの頭をポンと軽く叩くと、口をつけないままになっていたグラスをようやく持ち上げた。
「お前のことだ、引き継ぎがうまくいくまで辞めるつもりはないのだろう?」
「うん、だから今すぐついていくのは無理なんだ。ごめんね」
「いや、構わない。営業マンとしても、お前のその姿勢はありがたい。では、しばらくは遠距離恋愛ということだな」
「休みの日には、お弁当持って会いに行くわ」
徳川くんは何度も頷き、嬉しそうにグラスを重ねた。騒がしい店内なのに、手元で聞こえる甲高いグラス音はとてもはっきりと聞こえ、いつまでも耳の奥にこだましていた。
(家康編・了)
「名前、待たせたな」
夜、会社からほと近い居酒屋で徳川くんと待ち合わせをした。
「ううん、わたしは平気。徳川くんこそ、引き継ぎとかあるのにこんなに早く上がって大丈夫なの?」
「大丈夫だ。転勤があることは分かっていたからな。引き継ぎは早々に済ませておいた」
さすがは社内でも1、2位を争う出世頭だな。
「で、ワシを呼び出したということは、ワシが望む答えをくれると思っていいんだな?」
満面の笑みの中に少し緊張感が漂っている。さすがの徳川くんでも、怖いことってあるみたいだ。
その怖いものがわたしって、何だか優越感。
「何を笑っているんだ?」
「ううん、わたしでも徳川くんに勝てることがあるんだなって思ったら、なんか嬉しくって」
クスッと笑うと、徳川くんは肩をすくめた。
「お前がワシに勝っている点はたくさんある。お前が気付いていないだけだ」
「そう? まあ、お弁当のおかずの数は勝ってたわよね」
「はは、その通りだな。味も、お前の方が繊細で愛情深く、手間がかかっているのがよく分かった」
「三成の方が、そういうこと敏感だと思ったけど、ちゃんと気付いてくれてたのね」
「当たり前だ」
言い合った後、二人して飽きるまで笑い合った。そして、ゆっくりと見つめあった。
「名前、お前の作る料理を、ワシはずっと食べていたい。弁当に限らず、家でもだ」
「……はい」
答えは決まっていたけど、改めて答えたらすごく恥ずかしくて、答えた後でものすごく真っ赤になってしまった。そんなわたしを見て、徳川くんも珍しくちょっと赤くなって照れくさそうに頭を掻いていた。
「そう言ってもらえて嬉しいな。ありがとう。名前、本当にありがとう!」
徳川くんは、わたしの頭をポンと軽く叩くと、口をつけないままになっていたグラスをようやく持ち上げた。
「お前のことだ、引き継ぎがうまくいくまで辞めるつもりはないのだろう?」
「うん、だから今すぐついていくのは無理なんだ。ごめんね」
「いや、構わない。営業マンとしても、お前のその姿勢はありがたい。では、しばらくは遠距離恋愛ということだな」
「休みの日には、お弁当持って会いに行くわ」
徳川くんは何度も頷き、嬉しそうにグラスを重ねた。騒がしい店内なのに、手元で聞こえる甲高いグラス音はとてもはっきりと聞こえ、いつまでも耳の奥にこだましていた。
(家康編・了)