お弁当と告白
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会社の昼休憩。
今日はこんなことがあった。
「あれ?徳川くん、今日はお弁当なんだ?」
昼休憩、珍しく事務所に人がいた。それが、同期で、同じ部署、デスクが隣同士の徳川家康くんだった。
彼はエースなので、休憩時間は対外交渉や先輩たちとの情報交換のために外食することが殆どだ。
ちなみに、わたしはこの部署の事務員で、節約と健康のことを考え、日々自作弁当を絶賛持参中である。
ところで、うちの会社、この間から昼休憩中は留守録に切り替えたので、わたし以外事務所に残る人がいなくなった。
弁当組も勿論いるけど、近くに公園があるから出払ってしまう。
だから、冒頭のセリフになるのだけど、更に驚いたのがデスクに広げられたお弁当であった。
「おう、名前か。たまには腕を振るわんと鈍るからな」
「え、料理するんだ。すごい!」
「いや、ワシがやるのは焼く・炒めるくらいだ」
いやいや、十分すごいでしょ。
「そういう名前こそ、毎日弁当じゃないか」
「わたしは節約のため。あと、外食だと吹き出物出やすいから」
いただきますをして、早速弁当にぱくついた。
「和食か。いいな」
声が近いと思ったら、いつの間にか弁当を覗き込まれていた。
「ちょ!見ないでよ、恥ずかしい!」
「恥ずかしがることはない。なんなら、ワシのも見せてやる」
笑って見せてくれた中身は、ザ・焼肉定食的な内容。ニンニクのいい香りが、食欲をそそる。
「美味しそう。いいじゃん」
「そうか。なら、交換せんか?」
「へ?」
「名前の煮物が食いたい」
箸を構え、取る気マンマンの彼。
「……味、保証しないよ?」
言い出したらてこでも動かないのを知ってるから、早々に折れ、弁当箱を差し出した。
「……うん、うまい」
「お世辞でも嬉しいよ」
「ワシが世辞を言うタイプに見えるか?」
意外な言葉に振り向くと、少し怒った顔をしていた。
「前から思っていたが、お前は自分を卑下しすぎだ。もっと自信を持っていい」
「は、はあ」
「分かったならそれでいい」
その後も彼は煮物をぱくつき、わたしは代わりに焼肉をいただいた。味付けが少し濃かったけど、玄米がすすむ美味しさだった。
それを正直に伝えたら、そうかと満面の笑みを見せた。
持参番茶を淹れてあげると、食後の一服にと煎餅をくれた。
弁当を持参した理由を、健康診断で気になる数値があったからと話してくれた。
「接待とかでよくお酒飲んでるみたいだから、仕方ないのかも」
「ああ。だから、せめて昼くらいは気を付けようと思ってな」
「なら、お弁当箱買ったら?タッパーじゃ、液だれとか心配でしょ」
「そうだな。じゃあ、今日一緒に買いに行ってくれ」
突然の誘いに、番茶でむせてしまった。
「箱なんて、好きなものでいいんだよ?」
「いや、お前に選んでもらいたい」
頭の上にクエスチョンマークをたくさん掲げていると。
「お前の弁当が食いたいからだ」
目が点になった。
「い、いやいや、そういうことは彼女さんの……」
「だから、お前にその彼女になって欲しいんだ」
…………………………はい?
今、わたしコクられた?
徳川くん、いつもと変わらない爽やかスマイルなんですけど?
「聞こえなかったのか?」
もう一度言うぞという勢いだったので、慌てて手を振った。
「……ダメなのか?」
悲しげに眉をひそめたから、これまた慌てて手を振った。
「ち、ち、違う!いきなりすぎて、慌ててるだけ」
「なら、いいのか?」
どっちなんだと迫られ、思わず椅子を後ろに引いた。
「あ、あの、えっと、弁当箱を買いに行くのは付き合う。でも、中身を詰めるのと彼女になる話は、もうちょっと後にして欲しいの」
徳川くんは、じっと話の続きを待ってくれた。
「まずは、お弁当交換から始めたいなって。……焼肉、美味しかったから」
安堵からか、徳川くんが深く息を吐いたのが分かった。
「それなら、お安い御用だ。では、まずはそこから始めるか」
右手を差し出されたので、そのまま握手した。
「お前の胃袋、ワシが先に掴んでみせるぞ」
なかばプロポーズ的な告白までさらりとされ、終始あわあわしていたのは言うまでもない。
今日はこんなことがあった。
「あれ?徳川くん、今日はお弁当なんだ?」
昼休憩、珍しく事務所に人がいた。それが、同期で、同じ部署、デスクが隣同士の徳川家康くんだった。
彼はエースなので、休憩時間は対外交渉や先輩たちとの情報交換のために外食することが殆どだ。
ちなみに、わたしはこの部署の事務員で、節約と健康のことを考え、日々自作弁当を絶賛持参中である。
ところで、うちの会社、この間から昼休憩中は留守録に切り替えたので、わたし以外事務所に残る人がいなくなった。
弁当組も勿論いるけど、近くに公園があるから出払ってしまう。
だから、冒頭のセリフになるのだけど、更に驚いたのがデスクに広げられたお弁当であった。
「おう、名前か。たまには腕を振るわんと鈍るからな」
「え、料理するんだ。すごい!」
「いや、ワシがやるのは焼く・炒めるくらいだ」
いやいや、十分すごいでしょ。
「そういう名前こそ、毎日弁当じゃないか」
「わたしは節約のため。あと、外食だと吹き出物出やすいから」
いただきますをして、早速弁当にぱくついた。
「和食か。いいな」
声が近いと思ったら、いつの間にか弁当を覗き込まれていた。
「ちょ!見ないでよ、恥ずかしい!」
「恥ずかしがることはない。なんなら、ワシのも見せてやる」
笑って見せてくれた中身は、ザ・焼肉定食的な内容。ニンニクのいい香りが、食欲をそそる。
「美味しそう。いいじゃん」
「そうか。なら、交換せんか?」
「へ?」
「名前の煮物が食いたい」
箸を構え、取る気マンマンの彼。
「……味、保証しないよ?」
言い出したらてこでも動かないのを知ってるから、早々に折れ、弁当箱を差し出した。
「……うん、うまい」
「お世辞でも嬉しいよ」
「ワシが世辞を言うタイプに見えるか?」
意外な言葉に振り向くと、少し怒った顔をしていた。
「前から思っていたが、お前は自分を卑下しすぎだ。もっと自信を持っていい」
「は、はあ」
「分かったならそれでいい」
その後も彼は煮物をぱくつき、わたしは代わりに焼肉をいただいた。味付けが少し濃かったけど、玄米がすすむ美味しさだった。
それを正直に伝えたら、そうかと満面の笑みを見せた。
持参番茶を淹れてあげると、食後の一服にと煎餅をくれた。
弁当を持参した理由を、健康診断で気になる数値があったからと話してくれた。
「接待とかでよくお酒飲んでるみたいだから、仕方ないのかも」
「ああ。だから、せめて昼くらいは気を付けようと思ってな」
「なら、お弁当箱買ったら?タッパーじゃ、液だれとか心配でしょ」
「そうだな。じゃあ、今日一緒に買いに行ってくれ」
突然の誘いに、番茶でむせてしまった。
「箱なんて、好きなものでいいんだよ?」
「いや、お前に選んでもらいたい」
頭の上にクエスチョンマークをたくさん掲げていると。
「お前の弁当が食いたいからだ」
目が点になった。
「い、いやいや、そういうことは彼女さんの……」
「だから、お前にその彼女になって欲しいんだ」
…………………………はい?
今、わたしコクられた?
徳川くん、いつもと変わらない爽やかスマイルなんですけど?
「聞こえなかったのか?」
もう一度言うぞという勢いだったので、慌てて手を振った。
「……ダメなのか?」
悲しげに眉をひそめたから、これまた慌てて手を振った。
「ち、ち、違う!いきなりすぎて、慌ててるだけ」
「なら、いいのか?」
どっちなんだと迫られ、思わず椅子を後ろに引いた。
「あ、あの、えっと、弁当箱を買いに行くのは付き合う。でも、中身を詰めるのと彼女になる話は、もうちょっと後にして欲しいの」
徳川くんは、じっと話の続きを待ってくれた。
「まずは、お弁当交換から始めたいなって。……焼肉、美味しかったから」
安堵からか、徳川くんが深く息を吐いたのが分かった。
「それなら、お安い御用だ。では、まずはそこから始めるか」
右手を差し出されたので、そのまま握手した。
「お前の胃袋、ワシが先に掴んでみせるぞ」
なかばプロポーズ的な告白までさらりとされ、終始あわあわしていたのは言うまでもない。
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