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「姉は、根っからの職人です。そして、亡き父の思いを継いでいくために生きているところがあります」
実直とは、むしろ姉にこそふさわしい言葉だと奏子は思っている。
「だから、結婚適齢期を過ぎても、それを近所の方から揶揄されても、歯牙にもかけません。姉にとっては、馬具屋がすべてですから」
月島は、表情を変えず奏子の話を聞いていた。
「ですが、姉も女性です。少しだけですが、華やかなことにも興味は持っているんです。以前、紅をさしているところを見たことがありますし、私などを着飾って遊ぶこともあるのですよ、おかしいでしょう?」
「そうですか」
月島は、ふと笑った。
「姉君は、あなたのことが可愛くて仕方ないのでしょうね」
「年が離れていますし、危なっかしいと思っているとは思います」
「いくつ違うのですか」
「八つです」
「そうですか。私と大尉どのはひとまわり違います」
「そんな風には見えないです。月島さま、お若く見えます」
月島は目を点にし、驚いた。
「そのようなことを言われたのは初めてだ」
「そうなのですか?」
「私が若く見えるのだとすれば、それは大尉どののおかげでしょうね。あの方の側にいると、いつも退屈しない」
また、ふと笑った。
「月島さまも、鯉登さまを大切に思っていらっしゃるのですね」
「そうですね。尊敬できる上官であり、命の恩人でもありますから」
命の恩人。
何とも重々しい言葉を、月島はさらりと言ってのけた。
鯉登のことも含めもう少し話を聞いてみようと思ったところへ、連れ立って出て行った姉と鯉登が戻ってきた。
「月島、無粋なことはしなかっただろうな」
「ご心配なく。大尉どのこそ、失礼なことはなさいませんでしたでしょうね」
「抜かせ、誰に聞いている」
「大尉どのです」
とても上官とその部下の会話とは思えないくだけた会話から、奏子は二人の間にある深い絆を感じ取った。
月島は鯉登を命の恩人だと表現したが、奏子から見れば鯉登も月島に心を救われているのではないか、そんなことを感じた。
まるで自分と姉のように、年の離れた兄弟のような二人を見るにつけ、奏子の中で少しだけ二人に対する興味が湧いてきた。
「そうだ、月島。私はこの馬具屋を見学したいので、愛子どのと少し歩いて来い」
「あ、案内ならわたしが……」
奏子の言を遮るように、鯉登は月島の背を押し馬具屋から追い出してしまった。
こうなっては愛子も出るしかない。小さくため息をつき、愛子は月島の背を追いかけた。
「……さて、妹御前には馬具屋を案内していただこうか」
「お断りいたします」
「ほう」
二人の間に、小さな火花が散った。
実直とは、むしろ姉にこそふさわしい言葉だと奏子は思っている。
「だから、結婚適齢期を過ぎても、それを近所の方から揶揄されても、歯牙にもかけません。姉にとっては、馬具屋がすべてですから」
月島は、表情を変えず奏子の話を聞いていた。
「ですが、姉も女性です。少しだけですが、華やかなことにも興味は持っているんです。以前、紅をさしているところを見たことがありますし、私などを着飾って遊ぶこともあるのですよ、おかしいでしょう?」
「そうですか」
月島は、ふと笑った。
「姉君は、あなたのことが可愛くて仕方ないのでしょうね」
「年が離れていますし、危なっかしいと思っているとは思います」
「いくつ違うのですか」
「八つです」
「そうですか。私と大尉どのはひとまわり違います」
「そんな風には見えないです。月島さま、お若く見えます」
月島は目を点にし、驚いた。
「そのようなことを言われたのは初めてだ」
「そうなのですか?」
「私が若く見えるのだとすれば、それは大尉どののおかげでしょうね。あの方の側にいると、いつも退屈しない」
また、ふと笑った。
「月島さまも、鯉登さまを大切に思っていらっしゃるのですね」
「そうですね。尊敬できる上官であり、命の恩人でもありますから」
命の恩人。
何とも重々しい言葉を、月島はさらりと言ってのけた。
鯉登のことも含めもう少し話を聞いてみようと思ったところへ、連れ立って出て行った姉と鯉登が戻ってきた。
「月島、無粋なことはしなかっただろうな」
「ご心配なく。大尉どのこそ、失礼なことはなさいませんでしたでしょうね」
「抜かせ、誰に聞いている」
「大尉どのです」
とても上官とその部下の会話とは思えないくだけた会話から、奏子は二人の間にある深い絆を感じ取った。
月島は鯉登を命の恩人だと表現したが、奏子から見れば鯉登も月島に心を救われているのではないか、そんなことを感じた。
まるで自分と姉のように、年の離れた兄弟のような二人を見るにつけ、奏子の中で少しだけ二人に対する興味が湧いてきた。
「そうだ、月島。私はこの馬具屋を見学したいので、愛子どのと少し歩いて来い」
「あ、案内ならわたしが……」
奏子の言を遮るように、鯉登は月島の背を押し馬具屋から追い出してしまった。
こうなっては愛子も出るしかない。小さくため息をつき、愛子は月島の背を追いかけた。
「……さて、妹御前には馬具屋を案内していただこうか」
「お断りいたします」
「ほう」
二人の間に、小さな火花が散った。