戸惑い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「いえ、これはっ……」
月島の手が、決して引っ込むはずがない。付き合いの短い奏子でも分かることだったが、鯉登と月島、二人の絆の深さを知った今、この手紙を月島に披露するのはためらわれた。
「奏子殿、思うまま言葉にすればよい」
その時、鯉登が頷いた。
「愛子殿を想うお気持ちこそ大切にするのが、あなたが大切にすべき気持ちだ」
「鯉登さま……」
「告げた言葉で相手がどうするか、それは相手が決めることだ」
鯉登の言葉に、月島も頷く。
「……月島さま」
奏子は、逡巡したのち手紙を月島に渡した。
「この手紙に、姉は一切関わっておりません。私の希望、願望のみ綴っております」
「重々承知しております」
月島は小さく笑い、手紙を開いた。そこには、月島になら姉を任せられる、だが、姉は軍と懇意になる気はない、姉と一緒になるなら月島が軍を辞めるしかないと書かれていた。
「……鯉登大尉殿、あの方はやはり私と似ていますな」
「似た者同士、お似合いだと思うぞ。が、少なくとも私は承認しかねる」
そう言って、鯉登は茶を啜った。
「お前が停限年齢まで私の側にいてくれないと、色々困る」
「分かっております。私も、ふらふら出歩くあなたを置いて軍を辞めるのはしのびない」
「言い方が辛辣だな」
苦笑する鯉登に、月島も続いた。
「……だが、友としての立場で言えば、お前が側からいなくなるのは寂しい」
「友、とは、ずいぶん身に余るお言葉ですね」
「兄弟の方が良かったか?」
「どちらにせよ、そのように思ってくださるから、私はあなたの側を離れられないのですよ」
「あまつさえ、私と結婚したのかと言われるしな」
二人のやりとりを改めて見ていた奏子は、月島が机に置いた手紙をそっと閉じた。
「読んでくださり、ありがとうございます」
「いえ、元はといえばこちらが仕掛けたことです。それが、こちらに戻って来たというだけのこと。すべては、鯉登大尉殿が私を思ってなさったこと。……一下士官として、これ以上の幸せはないですよ」
柔らかく笑った口元に、鯉登はしばらくして声をあげ笑った。
「これでは、お前と結婚したと言われても仕方がないな。休日も、たまに二人で家で過ごしているしな」
だが、と続ける。
「私の気持ちが、未練が、……甘えが、お前個人の幸せを遮ってしまうのなら、それを手放さねばならん」
「鯉登大尉殿、私は別にあなたの甘えに応えるため軍に残っているわけではありませんよ」
茶を啜り、月島はもう一度笑った。
「私は私なりに、この国を守りたいと思うようになっただけのこと。それは、あなたが私に見せてくれた姿のおかげです。そして、この国を守ることで想い人を守れるのなら、と思うようになっただけです」
「え……」
戸惑う奏子に、月島は目を見返しこう告げた。
「私は、愛子殿を好いております」
その顔は、とても清々しかった。
月島の手が、決して引っ込むはずがない。付き合いの短い奏子でも分かることだったが、鯉登と月島、二人の絆の深さを知った今、この手紙を月島に披露するのはためらわれた。
「奏子殿、思うまま言葉にすればよい」
その時、鯉登が頷いた。
「愛子殿を想うお気持ちこそ大切にするのが、あなたが大切にすべき気持ちだ」
「鯉登さま……」
「告げた言葉で相手がどうするか、それは相手が決めることだ」
鯉登の言葉に、月島も頷く。
「……月島さま」
奏子は、逡巡したのち手紙を月島に渡した。
「この手紙に、姉は一切関わっておりません。私の希望、願望のみ綴っております」
「重々承知しております」
月島は小さく笑い、手紙を開いた。そこには、月島になら姉を任せられる、だが、姉は軍と懇意になる気はない、姉と一緒になるなら月島が軍を辞めるしかないと書かれていた。
「……鯉登大尉殿、あの方はやはり私と似ていますな」
「似た者同士、お似合いだと思うぞ。が、少なくとも私は承認しかねる」
そう言って、鯉登は茶を啜った。
「お前が停限年齢まで私の側にいてくれないと、色々困る」
「分かっております。私も、ふらふら出歩くあなたを置いて軍を辞めるのはしのびない」
「言い方が辛辣だな」
苦笑する鯉登に、月島も続いた。
「……だが、友としての立場で言えば、お前が側からいなくなるのは寂しい」
「友、とは、ずいぶん身に余るお言葉ですね」
「兄弟の方が良かったか?」
「どちらにせよ、そのように思ってくださるから、私はあなたの側を離れられないのですよ」
「あまつさえ、私と結婚したのかと言われるしな」
二人のやりとりを改めて見ていた奏子は、月島が机に置いた手紙をそっと閉じた。
「読んでくださり、ありがとうございます」
「いえ、元はといえばこちらが仕掛けたことです。それが、こちらに戻って来たというだけのこと。すべては、鯉登大尉殿が私を思ってなさったこと。……一下士官として、これ以上の幸せはないですよ」
柔らかく笑った口元に、鯉登はしばらくして声をあげ笑った。
「これでは、お前と結婚したと言われても仕方がないな。休日も、たまに二人で家で過ごしているしな」
だが、と続ける。
「私の気持ちが、未練が、……甘えが、お前個人の幸せを遮ってしまうのなら、それを手放さねばならん」
「鯉登大尉殿、私は別にあなたの甘えに応えるため軍に残っているわけではありませんよ」
茶を啜り、月島はもう一度笑った。
「私は私なりに、この国を守りたいと思うようになっただけのこと。それは、あなたが私に見せてくれた姿のおかげです。そして、この国を守ることで想い人を守れるのなら、と思うようになっただけです」
「え……」
戸惑う奏子に、月島は目を見返しこう告げた。
「私は、愛子殿を好いております」
その顔は、とても清々しかった。