キミは戦えるか
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バムスターの攻撃を喰らい、トリオン体からトリオンが漏れ始めた。並みの訓練生なら、先ほどの一撃で戦闘体が活動限界を迎えている。
(ブラックトリガー並みのトリオンの影響か)
そして、漏れ出るトリオンもサイドエフェクトによって瞬時に止まった。モニターを通して彼女の様子を見ているであろう上層部は、きっと今頃感嘆の声を挙げているだろう。
だが、喜んでいい事態ではなかった。
「相馬さん、トリガーを起動して!」
声が届いていないのか、勇は一向にトリガーを起動しない。それどころか、その場にへたり込んでしまった。
一旦バムスターを止め、勇に駆け寄る。勇は全身震えていて、呼吸がとても浅くなっていた。
(過呼吸を起こしかけてる)
実験中止を伝えるため、操作室にいた諏訪、堤に手で合図を送る。
「何だ、あんだけでけぇトリオン持ってながら、トリオン兵が怖いってか?」
「戦ったことがないんでしょうかね」
諏訪は肩をすくめ、訓練室の扉を開けた。勇はその音に気付き、少しだけ呼吸を落ち着かせることが出来た。
「大丈夫?」
換装を解いた勇に迅が駆け寄った。引きつるように呼吸を繰り返す彼女の背中に手をやると、ぐっしょりと汗ばんでいた。
「トリオン兵が怖かった? ごめん、戦闘はさすがに急すぎたかな」
勇の呼吸が落ち着くのを待って、話しかけた。
「……う」
「ん?」
「違う、戦ったこと、なら、ある……」
なら、何故今勇は口を手で覆い、嘔吐を必死に止めようとしているのか。
「気持ち悪いなら吐いた方がいい」
だが、勇は首を横に振って聞かなかった。
「ほい」
自販機コーナー。
勇の呼吸と気分が回復したところで、上の命令で操作室に待機していた諏訪、堤も同席しての軽い尋問が行われることになった。
「何があったか、聞いていいかな」
渡されたほうじ茶のペットボトルを口にし、おいしいと言ったあとで勇はぽつり呟いた。
「守れなかった」
「え?」
「守れなかったんです、これだけのトリオンがありながら」
諏訪と堤は顔を見合わせ、迅は勇の動向を注意深く見ていた。
「フローで人間は私一人で、その殆どが人間を忌み嫌っていました。でも、一部のトリオン兵たちは、私に興味を持って優しく接してくれました」
多くは勇をただのトリオン供給体としてのみ扱ったが、勇の世話をしてくれたトリオン兵たちは家族のように接してくれたらしい。
「多分、そういった扱いをした方が逃げないだろうってマザーが思って、彼らをそのようにプログラムしたんだと思うんですけど」
勇は苦笑しながら、それでもその兵たちの存在が辛い拉致監禁生活の心の拠り所だったと言った。
トリオンの扱い方やそれを使っての戦闘も、その兵たちから教わったそうだ。何かあった時、己の身を守れるように、と。
「でも、それがマザーに疑いの目を向けさせる原因になったんです」
ただ搾取するための存在が、トリオンを武器に歯向かってくればどうなるか――。
「マザーは、自分を脅かす存在はすぐに抹殺するようなトリオン兵でした。その兵たちは、私を逃がそうとしたというあらぬ疑いをかけられ、粛清されました。……私の、目の前で」
勇は、トリオンを使って守ろうとした。だが、間に合わなかった。
すべてがトリオンで出来ているフローにおいて、すべてのものはマザーの管理下にあった。勇が持たされたトリガーも、当然マザーの管理下にあるものだった。
「トリガーは、マザーの意思によって凍結されていました」
起動しないトリガーに何度もトリオンを流したが起動するはずもなく、マザーはトリオン兵たちの喉笛を掻き切り、心臓を貫き、トリオンを吸収すると、勇を監禁し、ただただトリオンを供給するための器として使役させた。
(ブラックトリガー並みのトリオンの影響か)
そして、漏れ出るトリオンもサイドエフェクトによって瞬時に止まった。モニターを通して彼女の様子を見ているであろう上層部は、きっと今頃感嘆の声を挙げているだろう。
だが、喜んでいい事態ではなかった。
「相馬さん、トリガーを起動して!」
声が届いていないのか、勇は一向にトリガーを起動しない。それどころか、その場にへたり込んでしまった。
一旦バムスターを止め、勇に駆け寄る。勇は全身震えていて、呼吸がとても浅くなっていた。
(過呼吸を起こしかけてる)
実験中止を伝えるため、操作室にいた諏訪、堤に手で合図を送る。
「何だ、あんだけでけぇトリオン持ってながら、トリオン兵が怖いってか?」
「戦ったことがないんでしょうかね」
諏訪は肩をすくめ、訓練室の扉を開けた。勇はその音に気付き、少しだけ呼吸を落ち着かせることが出来た。
「大丈夫?」
換装を解いた勇に迅が駆け寄った。引きつるように呼吸を繰り返す彼女の背中に手をやると、ぐっしょりと汗ばんでいた。
「トリオン兵が怖かった? ごめん、戦闘はさすがに急すぎたかな」
勇の呼吸が落ち着くのを待って、話しかけた。
「……う」
「ん?」
「違う、戦ったこと、なら、ある……」
なら、何故今勇は口を手で覆い、嘔吐を必死に止めようとしているのか。
「気持ち悪いなら吐いた方がいい」
だが、勇は首を横に振って聞かなかった。
「ほい」
自販機コーナー。
勇の呼吸と気分が回復したところで、上の命令で操作室に待機していた諏訪、堤も同席しての軽い尋問が行われることになった。
「何があったか、聞いていいかな」
渡されたほうじ茶のペットボトルを口にし、おいしいと言ったあとで勇はぽつり呟いた。
「守れなかった」
「え?」
「守れなかったんです、これだけのトリオンがありながら」
諏訪と堤は顔を見合わせ、迅は勇の動向を注意深く見ていた。
「フローで人間は私一人で、その殆どが人間を忌み嫌っていました。でも、一部のトリオン兵たちは、私に興味を持って優しく接してくれました」
多くは勇をただのトリオン供給体としてのみ扱ったが、勇の世話をしてくれたトリオン兵たちは家族のように接してくれたらしい。
「多分、そういった扱いをした方が逃げないだろうってマザーが思って、彼らをそのようにプログラムしたんだと思うんですけど」
勇は苦笑しながら、それでもその兵たちの存在が辛い拉致監禁生活の心の拠り所だったと言った。
トリオンの扱い方やそれを使っての戦闘も、その兵たちから教わったそうだ。何かあった時、己の身を守れるように、と。
「でも、それがマザーに疑いの目を向けさせる原因になったんです」
ただ搾取するための存在が、トリオンを武器に歯向かってくればどうなるか――。
「マザーは、自分を脅かす存在はすぐに抹殺するようなトリオン兵でした。その兵たちは、私を逃がそうとしたというあらぬ疑いをかけられ、粛清されました。……私の、目の前で」
勇は、トリオンを使って守ろうとした。だが、間に合わなかった。
すべてがトリオンで出来ているフローにおいて、すべてのものはマザーの管理下にあった。勇が持たされたトリガーも、当然マザーの管理下にあるものだった。
「トリガーは、マザーの意思によって凍結されていました」
起動しないトリガーに何度もトリオンを流したが起動するはずもなく、マザーはトリオン兵たちの喉笛を掻き切り、心臓を貫き、トリオンを吸収すると、勇を監禁し、ただただトリオンを供給するための器として使役させた。