キミとの再会
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そこに何かがあるわけでもないのに、彼女はずっと見つめていた。迅が入室してきたことにも気づかぬほどに。
「相馬さん」
何度目かの呼びかけに、ようやく気付いた彼女が弾かれたように顔を上げた。
「あ……」
「大丈夫だよ」
立ち上がろうとするのを手で制す。
「用事、済んだんですか?」
「ああ。ねえ、何見てたの?」
「見てたんじゃなくて、瞑想、してたんです」
「へえ」
椅子に座ると、勇を観察することにした。
「瞑想、よくするの?」
「心を、落ち着かせたい時に」
「じゃあ、今落ち着いてないんだ」
息を吸い込む音がした。図星らしい。
(見たままの人間なら、嘘はついていないのだろうな)
今見せている落ち着きのなさが本当なのだとしたら、今置かれている状況にプレッシャーを感じていることは間違いない。逃げるそぶりを見せないのも、自分が疑われる存在であることは理解しているようだし、置かれている立場も分かっているように見える。
(では、怯えているように見えるのは何故だ)
必死に自分を落ち着かせようとしている様は、まるで何かに追われている逃亡者が見せるそれに似ている。
(ゲートの向こうから逃げて来たのか?)
もう一度注意深く観察しようと視線を向けた時、過去の記憶が突然頭を過った。
『落ち着かない時は、瞑想しなさいって教えてもらったの』
それは、旧ボーダー時代の記憶だった。
今の玉狛支部が本部だった時代、リビングで、ベランダで、支部近くの河原で。
彼女はいつもそうしていた。
「君……、もしかして健悟さんの妹の勇ちゃん?」
勇は、大きく目を見開いた。
迅の予想は正しかった。
勇は、かつての仲間だった相馬健悟の妹で、彼がボーダーに入るきっかけを作った人間だった。
「どうも、妹が何かに狙われている節があって」
その頃のボーダーは知る人ぞ知る組織だったため、こういった類の相談をしに来る者は少なく、迅はこの時の出来事をよく覚えていた。
大人たちは、健悟を今は支部長室になっている当時の司令室に案内すると、扉を固く閉ざしてしまった。
締め出された迅は、今はリビングにいるという妹を興味本位で覗きに行った。
そこには、自分と同じ年頃の女の子が瞑目していた。
「ねえ」
声をかけると、ビクッと驚いたのち顔を向けてきた。
「君、さっきのお兄さんと一緒に来たの子?」
「え、あ、うん……」
「ふーん」
台所に入ると、湯を沸かしお茶を淹れた。
「一応、お客さんだから」
緑茶と、個別梱包の揚げせんを出した。
「あ、ありがとう……」
「さっき、何してたの?」
勇は、お茶を一口飲んでからこう答えた。
「瞑想」
「瞑想? お坊さんとかがやるやつ?」
「そう。心を落ち着かせたい時にやるといいって、お兄 が」
お兄、つまり健悟のことである。
「落ち着かない時は、瞑想しなさいって教えてもらったから」
「今、落ち着いてないの?」
この時も、勇は息を吸い込み顔色を変えた。
「……どこから見られてるか、分からないから」
「見られる? ネイバーにってこと?」
「ネイバー?」
「あー、何でもない」
外部の人間に、ネイバーの存在が知れたらパニックになるからと、そのことはまだ公にされていないことを思い出し、迅は慌てて言葉を濁した。
「何かは分からないんだけど……、いつも何かに監視されてる感じがあるの」
だから、自分を落ち着かせるために瞑想をしているのだと勇は言った。
「相馬さん」
何度目かの呼びかけに、ようやく気付いた彼女が弾かれたように顔を上げた。
「あ……」
「大丈夫だよ」
立ち上がろうとするのを手で制す。
「用事、済んだんですか?」
「ああ。ねえ、何見てたの?」
「見てたんじゃなくて、瞑想、してたんです」
「へえ」
椅子に座ると、勇を観察することにした。
「瞑想、よくするの?」
「心を、落ち着かせたい時に」
「じゃあ、今落ち着いてないんだ」
息を吸い込む音がした。図星らしい。
(見たままの人間なら、嘘はついていないのだろうな)
今見せている落ち着きのなさが本当なのだとしたら、今置かれている状況にプレッシャーを感じていることは間違いない。逃げるそぶりを見せないのも、自分が疑われる存在であることは理解しているようだし、置かれている立場も分かっているように見える。
(では、怯えているように見えるのは何故だ)
必死に自分を落ち着かせようとしている様は、まるで何かに追われている逃亡者が見せるそれに似ている。
(ゲートの向こうから逃げて来たのか?)
もう一度注意深く観察しようと視線を向けた時、過去の記憶が突然頭を過った。
『落ち着かない時は、瞑想しなさいって教えてもらったの』
それは、旧ボーダー時代の記憶だった。
今の玉狛支部が本部だった時代、リビングで、ベランダで、支部近くの河原で。
彼女はいつもそうしていた。
「君……、もしかして健悟さんの妹の勇ちゃん?」
勇は、大きく目を見開いた。
迅の予想は正しかった。
勇は、かつての仲間だった相馬健悟の妹で、彼がボーダーに入るきっかけを作った人間だった。
「どうも、妹が何かに狙われている節があって」
その頃のボーダーは知る人ぞ知る組織だったため、こういった類の相談をしに来る者は少なく、迅はこの時の出来事をよく覚えていた。
大人たちは、健悟を今は支部長室になっている当時の司令室に案内すると、扉を固く閉ざしてしまった。
締め出された迅は、今はリビングにいるという妹を興味本位で覗きに行った。
そこには、自分と同じ年頃の女の子が瞑目していた。
「ねえ」
声をかけると、ビクッと驚いたのち顔を向けてきた。
「君、さっきのお兄さんと一緒に来たの子?」
「え、あ、うん……」
「ふーん」
台所に入ると、湯を沸かしお茶を淹れた。
「一応、お客さんだから」
緑茶と、個別梱包の揚げせんを出した。
「あ、ありがとう……」
「さっき、何してたの?」
勇は、お茶を一口飲んでからこう答えた。
「瞑想」
「瞑想? お坊さんとかがやるやつ?」
「そう。心を落ち着かせたい時にやるといいって、お
お兄、つまり健悟のことである。
「落ち着かない時は、瞑想しなさいって教えてもらったから」
「今、落ち着いてないの?」
この時も、勇は息を吸い込み顔色を変えた。
「……どこから見られてるか、分からないから」
「見られる? ネイバーにってこと?」
「ネイバー?」
「あー、何でもない」
外部の人間に、ネイバーの存在が知れたらパニックになるからと、そのことはまだ公にされていないことを思い出し、迅は慌てて言葉を濁した。
「何かは分からないんだけど……、いつも何かに監視されてる感じがあるの」
だから、自分を落ち着かせるために瞑想をしているのだと勇は言った。