キミと結婚したいんだ
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勇が囚われていたフローティングという星が軌道を逸れ、アフトクラトルへ墜落する軌道上に入ってしまった。
フローティングは、マザートリガーがコアとなって形成されていた星のため、理論上ではマザートリガーをフローティングへ戻せば軌道修正が可能とのことで、勇は迅とともに先日三門を襲撃したマザートリガーのコア部分をフローティングへ戻す作戦を決行した。
軌道は既に修正不可能な位置までずれていたが、何とかアフトクラトルの軌道上からはぎりぎりのところで逸れてくれた。
作戦は成功したものの、フローの瓦解が思った以上に速く、三門と繋ぐ座標が大いにずれてしまい、二人が帰る方法はアフトクラトルに留まっているボーダーの遠征艇に乗るか、ネイバーフッドをあちこち旅して開いたゲートをひたすらくぐり、三門に戻るかの二者択一だった。
迅のサイドエフェクトのおかげで、遠征艇に乗る未来のルートをたどることが出来た。アフトクラトルにつくや、即時戦闘に参加するよう通達を受け、二人は撤退戦の殿 を務め、囚われたC級隊員とレプリカを収容し、無事に三門への帰路に就くことが出来た。
勇は、遠征部隊が出発した直後にフローティングから三門へ逃げて来たため、遠征隊員は彼女のことを誰一人知らない。
いくら迅が共に乗せて欲しいと連れて来た人間とはいえ、見知らぬ者を航路の道中の供とすることに異論を唱える者もいた。
ただ、彼女が長年本部補保管となっていた相馬健悟がブラックトリガーと化したそれを持っていたこと、それを起動させることが出来る者、つまり健悟の身内であることが分かると、古参メンバーである玉狛第一をはじめとした隊員が安堵の言葉を発し、その影響で他の者たちも何も言わなくなった。
勇は、千佳に引けを取らないトリオン量の持ち主のため、当初はトリオン回復のための休息を何度かとる行程になっていたが、彼女が搭乗したことでその必要がなくなり、三門への帰還は約半分の時間で済んだ。
勇と迅が遠征艇と共に帰還すると、19歳組のメンバーが総出で出迎えてくれた。
三門襲撃事件を知らない遠征組は、三門の地形がまた少し変わっていることから何か大きな戦闘が起こったことを察し、そこに勇と迅が大きく関わったことを理解した。
A級の隊長たちは即刻召集され、先日あったフローティングのマザートリガー襲撃事件について知らされた。そして、勇がそのキーパーソンであったこと、彼女が相馬健悟であったブラックトリガーを用いて三門防衛戦を戦い抜いたこと、本部は死者をゼロで押さえた彼女の功績を評価して無試験でボーダー入隊を認めたといった報を受けた。
「認めたというよりは、監視だな」
太刀川がコーヒーのプルトップに手をかけつつ言った。
「仕方ないだろう。身内が誰もいない以上、あの者の身分を証明する術がない。加えて、あのトリオン量とブラックトリガーを操る貴重な人材だ。本部がそれを逃すわけがない」
風間が冷静に分析する。
「二人ともさあ、帰って来てそんな会話はなくない?」
あげせんの袋を差し出しつつ、迅が呆れた。
「いいんだよ、これが楽しいんだから」
「俺は必要事項と判断したから話しているだけだ。こいつと一緒にするな」
いさかか不満げな顔をし、風間はあげせんを頬張った。
「一度手合わせ願いたいな」
「それは俺も同じだ」
「……戦闘バカだな、二人とも」
呆れた声をあげると、それで、と風間が言った。
「何か言いたいことがあるんじゃないのか」
「さすが、風間さん。察しが良いね」
「お、なんだ、言ってみろ、迅。特別に聞いてやるぞ」
はいはいと言い、迅はポケットからある書類を取り出した。
「婚姻届け?」
「何だお前、結婚すんのか?」
「したいなと思ってるんだけど、言葉だけだとちょっとびびられちゃう未来が視えたんだ。だから、外堀を埋めておこうと思って」
「外堀?」
「そ。仲介人にもうサインもらっちゃったんだよねって言ってこれを持っていくといいって未来が視えた」
「お前はヘタレか。堂々としていろ」
「いやだって、嫌だよ、好きだけど結婚できませんとか言われるの」
「で? 相手は誰なんだよ、教えろよ、迅!」
喜ぶ太刀川をよそに、風間は小さくため息をついた。
「お前、気付いていないのか」
「何が、風間さん」
「こいつの言っている相手とは、例の新入りのことだ」
「新入り? ……ああ、あのトリオンモンスター2号機のことか」
人の名前を覚えられない太刀川なりの呼び名がさく裂した。
「え、何で分かっちゃったかな、風間さん……」
自分の言葉をスルーして一人赤面する迅の首を絞めた。
「ちょ、ちょっと、太刀川さんっ! マジで苦しいっ」
「お前が先輩の発言を無視したからだろ!」
「やめろ、話が脱線する。それで、俺達に何をして欲しいんだ」
「さっすがは風間さん」
腕が緩んだところでするりと抜け出し、まずは風間に婚姻届けを差し出した。
「良かったらさ、二人に仲介人のところに名前を書いて欲しいんだ」
風間は受け取ると、続きを促した。
「他の人選も考えたんだけどさ、二人が一番適任だと思ってさ」
「それは、サイドエフェクトによるものか?」
「いや、単に俺個人の勘。二人がトップボーダーだってことももちろんあるんだけどさ、二人とも人望厚いでしょ。二人が認めてくれた間なら、大丈夫って俺自身が思えそうで」
「何でだよ、お前が好きになったんだろう? だったら、誰が何を言おうと関係ねえだろ」
頬いっぱいにあげせんを頬張る太刀川に、風間がまたため息をひとつついた。
「迅、お前、自信がないのか」
図星をつかれ、迅は一瞬言葉を失った。
フローティングは、マザートリガーがコアとなって形成されていた星のため、理論上ではマザートリガーをフローティングへ戻せば軌道修正が可能とのことで、勇は迅とともに先日三門を襲撃したマザートリガーのコア部分をフローティングへ戻す作戦を決行した。
軌道は既に修正不可能な位置までずれていたが、何とかアフトクラトルの軌道上からはぎりぎりのところで逸れてくれた。
作戦は成功したものの、フローの瓦解が思った以上に速く、三門と繋ぐ座標が大いにずれてしまい、二人が帰る方法はアフトクラトルに留まっているボーダーの遠征艇に乗るか、ネイバーフッドをあちこち旅して開いたゲートをひたすらくぐり、三門に戻るかの二者択一だった。
迅のサイドエフェクトのおかげで、遠征艇に乗る未来のルートをたどることが出来た。アフトクラトルにつくや、即時戦闘に参加するよう通達を受け、二人は撤退戦の
勇は、遠征部隊が出発した直後にフローティングから三門へ逃げて来たため、遠征隊員は彼女のことを誰一人知らない。
いくら迅が共に乗せて欲しいと連れて来た人間とはいえ、見知らぬ者を航路の道中の供とすることに異論を唱える者もいた。
ただ、彼女が長年本部補保管となっていた相馬健悟がブラックトリガーと化したそれを持っていたこと、それを起動させることが出来る者、つまり健悟の身内であることが分かると、古参メンバーである玉狛第一をはじめとした隊員が安堵の言葉を発し、その影響で他の者たちも何も言わなくなった。
勇は、千佳に引けを取らないトリオン量の持ち主のため、当初はトリオン回復のための休息を何度かとる行程になっていたが、彼女が搭乗したことでその必要がなくなり、三門への帰還は約半分の時間で済んだ。
勇と迅が遠征艇と共に帰還すると、19歳組のメンバーが総出で出迎えてくれた。
三門襲撃事件を知らない遠征組は、三門の地形がまた少し変わっていることから何か大きな戦闘が起こったことを察し、そこに勇と迅が大きく関わったことを理解した。
A級の隊長たちは即刻召集され、先日あったフローティングのマザートリガー襲撃事件について知らされた。そして、勇がそのキーパーソンであったこと、彼女が相馬健悟であったブラックトリガーを用いて三門防衛戦を戦い抜いたこと、本部は死者をゼロで押さえた彼女の功績を評価して無試験でボーダー入隊を認めたといった報を受けた。
「認めたというよりは、監視だな」
太刀川がコーヒーのプルトップに手をかけつつ言った。
「仕方ないだろう。身内が誰もいない以上、あの者の身分を証明する術がない。加えて、あのトリオン量とブラックトリガーを操る貴重な人材だ。本部がそれを逃すわけがない」
風間が冷静に分析する。
「二人ともさあ、帰って来てそんな会話はなくない?」
あげせんの袋を差し出しつつ、迅が呆れた。
「いいんだよ、これが楽しいんだから」
「俺は必要事項と判断したから話しているだけだ。こいつと一緒にするな」
いさかか不満げな顔をし、風間はあげせんを頬張った。
「一度手合わせ願いたいな」
「それは俺も同じだ」
「……戦闘バカだな、二人とも」
呆れた声をあげると、それで、と風間が言った。
「何か言いたいことがあるんじゃないのか」
「さすが、風間さん。察しが良いね」
「お、なんだ、言ってみろ、迅。特別に聞いてやるぞ」
はいはいと言い、迅はポケットからある書類を取り出した。
「婚姻届け?」
「何だお前、結婚すんのか?」
「したいなと思ってるんだけど、言葉だけだとちょっとびびられちゃう未来が視えたんだ。だから、外堀を埋めておこうと思って」
「外堀?」
「そ。仲介人にもうサインもらっちゃったんだよねって言ってこれを持っていくといいって未来が視えた」
「お前はヘタレか。堂々としていろ」
「いやだって、嫌だよ、好きだけど結婚できませんとか言われるの」
「で? 相手は誰なんだよ、教えろよ、迅!」
喜ぶ太刀川をよそに、風間は小さくため息をついた。
「お前、気付いていないのか」
「何が、風間さん」
「こいつの言っている相手とは、例の新入りのことだ」
「新入り? ……ああ、あのトリオンモンスター2号機のことか」
人の名前を覚えられない太刀川なりの呼び名がさく裂した。
「え、何で分かっちゃったかな、風間さん……」
自分の言葉をスルーして一人赤面する迅の首を絞めた。
「ちょ、ちょっと、太刀川さんっ! マジで苦しいっ」
「お前が先輩の発言を無視したからだろ!」
「やめろ、話が脱線する。それで、俺達に何をして欲しいんだ」
「さっすがは風間さん」
腕が緩んだところでするりと抜け出し、まずは風間に婚姻届けを差し出した。
「良かったらさ、二人に仲介人のところに名前を書いて欲しいんだ」
風間は受け取ると、続きを促した。
「他の人選も考えたんだけどさ、二人が一番適任だと思ってさ」
「それは、サイドエフェクトによるものか?」
「いや、単に俺個人の勘。二人がトップボーダーだってことももちろんあるんだけどさ、二人とも人望厚いでしょ。二人が認めてくれた間なら、大丈夫って俺自身が思えそうで」
「何でだよ、お前が好きになったんだろう? だったら、誰が何を言おうと関係ねえだろ」
頬いっぱいにあげせんを頬張る太刀川に、風間がまたため息をひとつついた。
「迅、お前、自信がないのか」
図星をつかれ、迅は一瞬言葉を失った。