キミは戦えるか
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そんな日々は、勇の心から感情の起伏を奪っていった。
皮肉にも、それが勇を動じさせない性格へと変えていき、将来的にマザートリガーを追い詰め躊躇なくとどめを刺す要因となるのだが、それはまだ先の話である。
「……とにかく、この実験は一旦中止だ」
人員の心身の健康を第一に考える忍田の言葉に、鬼怒田は密かにため息をついた。
迅の予想では、近々大規模侵攻並みの戦闘がこの三門で繰り広げられる可能性があるという。
今の人員で何とかするしかないとは言え、A級部隊がこぞって遠征に出払っている今となっては、戦える人数は多ければ多いほど良い。
しかも、お蔵入り同然のあのブラックトリガーが起動できる可能性を秘めた存在だとすれば、期待値は否が応でも上がる。
「行こう、相馬さん」
迅に促され、勇はゆっくりと立ち上がり、上層部とボーダー隊員たちに頭を下げた。
勇には、人間離れした察知能力が開花している。人は無意識下の意識で繋がっているが、その意識は通常眠りについた時に繋がりやすい。
勇は、マザートリガーの仕打ちのせいで余計な‟私”が取り除かれており、起きていても無意識下の意識と繋がりやすくなっている。
その意識から、彼らの三門を思う気持ちが伝わってきて、自分のこの無駄だと思っていた力はその三門を守るために切望されていることが分かり、勇としても応えたいと思った。
けれど、あの時のトラウマが原因で体の方が動いてくれなかった。
(もう、何年も経ったことなのに)
迅に誘われ、屋上に出る。
空は春霞でぼんやりとしているが、風に乗って届く春の匂いに、地球に戻ってきたことを強く実感した。
「期待に答えなきゃとか、今は考えなくていいよ」
勇の心を見透かしたように、迅が言った。
「大丈夫、キミは戦える」
「……え?」
「俺のサイドエフェクトが、そう言ってる」
青く澄んだ双眸に見つめられ、一瞬だけ心臓がキュッと縮まる。
「誰かのために今を何とかしたいって思える人は、戦えるよ」
身は風に任せておきながらさらりと言ってのけた彼こそ、ずっと今まで誰かのために戦ってきたのだろう。
「でも、まずは相馬さんが自分のために戦えるようになって欲しいと俺は思う。それが、皆を守ることに繋がるから」
皆を守る――。
この言葉に、勇はマザートリガーの追跡がこの地球に迫っていることを強く感じた。
自分のせいで、この故郷が戦火に巻き込まれることだけは避けたかった。
だが、自分が逃げてもその未来が変わらないのならば、迎え撃つしかない。
「……そうだ、この後出かけてみない?」
決心新たに拳を握ったところで、迅から思いがけない誘いを受けた。
皮肉にも、それが勇を動じさせない性格へと変えていき、将来的にマザートリガーを追い詰め躊躇なくとどめを刺す要因となるのだが、それはまだ先の話である。
「……とにかく、この実験は一旦中止だ」
人員の心身の健康を第一に考える忍田の言葉に、鬼怒田は密かにため息をついた。
迅の予想では、近々大規模侵攻並みの戦闘がこの三門で繰り広げられる可能性があるという。
今の人員で何とかするしかないとは言え、A級部隊がこぞって遠征に出払っている今となっては、戦える人数は多ければ多いほど良い。
しかも、お蔵入り同然のあのブラックトリガーが起動できる可能性を秘めた存在だとすれば、期待値は否が応でも上がる。
「行こう、相馬さん」
迅に促され、勇はゆっくりと立ち上がり、上層部とボーダー隊員たちに頭を下げた。
勇には、人間離れした察知能力が開花している。人は無意識下の意識で繋がっているが、その意識は通常眠りについた時に繋がりやすい。
勇は、マザートリガーの仕打ちのせいで余計な‟私”が取り除かれており、起きていても無意識下の意識と繋がりやすくなっている。
その意識から、彼らの三門を思う気持ちが伝わってきて、自分のこの無駄だと思っていた力はその三門を守るために切望されていることが分かり、勇としても応えたいと思った。
けれど、あの時のトラウマが原因で体の方が動いてくれなかった。
(もう、何年も経ったことなのに)
迅に誘われ、屋上に出る。
空は春霞でぼんやりとしているが、風に乗って届く春の匂いに、地球に戻ってきたことを強く実感した。
「期待に答えなきゃとか、今は考えなくていいよ」
勇の心を見透かしたように、迅が言った。
「大丈夫、キミは戦える」
「……え?」
「俺のサイドエフェクトが、そう言ってる」
青く澄んだ双眸に見つめられ、一瞬だけ心臓がキュッと縮まる。
「誰かのために今を何とかしたいって思える人は、戦えるよ」
身は風に任せておきながらさらりと言ってのけた彼こそ、ずっと今まで誰かのために戦ってきたのだろう。
「でも、まずは相馬さんが自分のために戦えるようになって欲しいと俺は思う。それが、皆を守ることに繋がるから」
皆を守る――。
この言葉に、勇はマザートリガーの追跡がこの地球に迫っていることを強く感じた。
自分のせいで、この故郷が戦火に巻き込まれることだけは避けたかった。
だが、自分が逃げてもその未来が変わらないのならば、迎え撃つしかない。
「……そうだ、この後出かけてみない?」
決心新たに拳を握ったところで、迅から思いがけない誘いを受けた。