The Hierophant④
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翌月曜日。
放課後にアジト集合の為、足早に向かおうとしたが先生に足止めを食らい、三人には先に行ってもらって後から合流する事になった。
そんなに時間を取られる事なく先生からの用事を終わらせて、今度こそ足早に学校を出て行く。
あの《銀行》への行き方を考える為の話し合いを、先に始めていいよと連絡を入れておいたから、今頃頭を悩ませているだろうか。
そういう時には甘い物も必要かなと思い、みんなに何か買って行く為にセントラル街のコンビニに立ち寄った。
コンビニに入った時、スマホが鳴った。
見れば、杏からだ。
「どうしたの?杏」
『どうしたのはこっちのセリフ。まだ着かないの?』
心配して掛けてくれたようだ。
コンビニに立ち寄ってると伝え、進捗を確認すればやはり難航していた。
杏の声に混じって、奥の方に微かに竜司の声も聞こえる。
「とにかく、色々買って行くからひと休みしながら考えようよ」
『そうだね。それがい…………なに?』
「杏?」
肯定しかけた声が少し黙ったのちに低くなった。
どうしたのか問いかけても杏から返事はない。
代わりに…
『随分、手こずってる……』
雑踏に紛れて、杏ではない女性声が小さく聞こえた。
この声は、多分…
『様子を見に来たってわけ?いくら生徒会長でも、こっちの仕事の役には立たないから』
杏の声は、しっかり聞き取れる。
やっぱり生徒会長の声で合ってた。
きっと、また彼女が声をかけてきたのだろう。それで、杏がスマホそっちのけで会長に気を取られ、さっきの低い声になったのか。
『高見の見物してればいいのよ。それともお得意の盗聴でもやってみる?』
相変わらず敵対心が強い。
『…さっき貴方たちがしてた話よ。カネシロの居場所が分かればいいんでしょ?』
会長が強気に何かを言っている。
杏達も二三言い返しているみたいだ。
『いいわ、カネシロに会わせてあげる』
意を決したような会長の声がした。
今、カネシロに会わせるって言った?
どういう意味だろう?
彼女が立ち去ったのか、竜司達が色々言い合っている。
『もう!なんなのあの人!』
杏のやり切れないような憤りと共にバタバタとし始める。
「もしもーし!杏?」
一応呼びかけてみたが、すっかりスマホの存在を忘れたらしい杏から返答は無く、騒音だけがノイズのように聞こえる。
一度スマホを切って、私も駅の方へ向かう為にコンビニを出た。
すると、駅方面から走ってくる生徒会長の姿があった。
確か、“カネシロに会わせる”と言っていた。
急いで彼女の後を追って動向を見守ってみると、会長は以前運び屋のバイト話を持ちかけられた路地に入っていった。
その路地には、ガラの悪い男が二人居て、躊躇する事無く会長が彼らに声をかける。
「貴方たち、カネシロって知ってる?」
「はぁ?」
会長の言葉に男が訝しがる。
それもそうだろう。いきなり核心に触れているのだから。
「セントラル街にくれば、カネシロって人に会えるって聞いたんだけど」
──!!
あの人、何するつもり!?
馬鹿正直に正面から行って。相手は平気で人を陥れる犯罪者だというのに!
どうしたらいい!?なんて、考える間も無かった。
「──会長!」
気が付けば、私は会長と男達の前に飛び出していた。
────
「いいわ、カネシロに会わせてあげる」
そう言い残し、アジトから走り去った生徒会長──新島真を追って、蓮達も帝急ビルを飛び出した。
人混みで見失った彼らの元に一本の電話が入る。
自分のスマホが鳴った事に気付いて、蓮はポケットから取り出して電話に出た。
すると…
『もしもし私…新島真』
見失った真からの電話だった。
『いいからこのまま聞いてて。録音も』
少し早口に言われる。
誰から?と竜司と杏が蓮に近付いて、その声を一緒に聞いた。
『貴方たち、カネシロって知ってる?』
『はぁ?』
真の他に男の声がする。
「バ…っ!アイツ、何する気だ!?」
竜司でさえ分かった。
真が聞いた相手が、あのマフィアの一味だという事に。
『セントラル街にくれば、カネシロって人に会えるって聞いたんだけど』
「セントラル街!」
真の居場所が分かって、杏が声を上げる。
「早まりすぎだ!」
真正面から直接アプローチした事に祐介も表情を険しくさせた。
全員が、そんな彼女を追いかける為に走り出そうとした時だった。
『──会長!』
聞き慣れた声が新たにスマホから聞こえた。
「……遊江?」
蓮が呟けば、他の皆も目を瞠った。
「は?なんでアイツが…」
「遊江、セントラル街のコンビニ寄ってて……あ、電話!」
その場に居合わせた事に驚く竜司に杏が説明を加え、そして気付く。
慌てて自分のスマホを確認したが、電話はいつの間にか切れていた。
「ワガハイ達より先に見つけてたのか…」
「お喋りはあとだ!急ぐぞ!」
祐介の張り上げた声に、全員が駆け出した。
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