The Emperor②
Name change
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斑目の逆鱗に触れたのか、私達は告訴を言い渡された。
告訴なんてされたら、退学になるかもしれないし、蓮は保護観察の身だからどうなるか分からない。私達自身でまいた種とはいえ絶対に失敗出来なくなった。
期限は、斑目の個展が終わるまで。会期中は告訴をしないだろうと読んでの事だ。
弟子だった人にもたった一人残った弟子にも改心を頼まれたし、やる事は決まってる。
こちらは戦力も増えた。前のようにやれば大丈夫。
人の強い欲望の歪みの認知が具現化した異世界《パレス》。
シャドウをペルソナに変えたペルソナ使いには、出来る事の無い世界。
異世界へ入る為に用いられるのが《イセカイナビ》というスマホに入っているアプリ。
《名前》と《場所》と《歪み》を入力すればいい。
おさらい的に情報を整理させ、改めて《マダラメパレス》へ潜入だ。
さて、入ってすぐ最初にしなきゃならない事がある。
新入り──祐介のコードネームを決める事。
「ここは“キツネ”でしょ」
パンサーがすかさず候補を挙げる。
「ちげえねぇ、インパクトあるしな」
「尻尾ももふもふしてるしね」
腰元にくっついた白い尻尾は触り心地が良さそうだ。
「俺の事か?」
美術館を眺めていた祐介が此方を振り返る。
その顔に狐面を付けているし、ここはキツネしかないと思う。
「こっちでの名前、何がいい?」
パンサーが聞くと、祐介は腕を組んで思案する。
「──“ダヴィンチ”かな」
「ボツ」
すぐにスカルが首を振る。
カッコイイと思ったけど、それが気に入らなかったとみた。
「キツネの面に…妙な尻尾だろ…?」
そして、スカルが直々に考える。
キツネでいいと思うけどな…。
「よし、“アブラアゲ”だ!」
「ブフッ…」
モナが思わず吹くほどのインパクトは確かにあった。
「まあよかろう」
祐介は全く気にしていないみたいで即決。
「決まりだな、“アブラアゲ”」
「可愛いかも、“アブラアゲ”!お揚げくんって呼んでいい?」
「やめろっつの!」
スカルに乗れば、パンサーに叱られた。
それも可愛いと思ったんだけどな。
「ジョーカー、なんか別のない?」
ここはやっぱりジョーカーか。
けど、ジョーカーもなかなかのネーミングセンスだったような。
「──【フォックス】」
キツネを英語にしただけだけど、カッコ良く聞こえる。
モナがどうだ?と聞けば、祐介は「別に構わん」と答える。
ダヴィンチが却下されたからか後はどうでも良いみたいだ。
本人も異論が無く、私達も賛成したから祐介の名前は【フォックス】で決まりだ。
名前も決まった事だし、改めて攻略再開だ。
人数も増えてきた事から、前線で戦うメンバーと後衛でのサポートメンバーをしっかりと分けてバトルもスマートに進める。
相変わらずの赤外線に注意しながら、足止めを食らった庭園まで来ると扉はちゃんと開いたままだったようで一安心だ。
宝物殿への建物に入って、此方も警戒しながら先へと進んだ。
途中でパンフレットの《下》を見つけ、館内の全貌も確認出来た。オタカラは最奥のメインホールという所だろう。その為にいくつか部屋を通過しなくてはならない。
セキュリティ解除の為に行ったり来たりし、巨大な絵画の中を歩いたり、異世界は思ってもみない事が起こる。
ギャラリーでも同じように絵画に入り、そこでマダラメの内面に触れたが反吐が出る思いで道を拓いていく。
ギャラリーも抜けた先は、全てが黄金に輝く階段が上下左右へと視界と平衡感覚が狂わされるような建物の形も成さない歪みの酷い空間だった。
行けそうな所へ行っても元の道に戻される。布の張りぼてで隠された通路と、サユリの真贋を見抜く事で、先へと進めた。
それらを苦労しながら越えていくと、やっとメインホールがあった。
その中央に台座があり、上で光の玉がもやもやと輝いている。
あれがオタカラなのはモナの反応で間違いないが、台座は例によって赤外線に四方を囲まれ、その周囲に警備員が多数。そして、真ん前に殿様マダラメが堂々と立っている。
これではまだルート確保には難しい。
マダラメに見つからないようにメインホールを調査し、あれこれ考えてみる事にした。
配電室らしき場所で電気系統の端末を見つける。
オタカラを囲む赤外線だけはマダラメ本人じゃないと切れないようになっていた。
だが、代わりに館内の電源を切る事は可能だ。すぐに予備電源が作動するが。
そして、上の方に行くとホールの仕掛けや装置を作動させる部屋を見つけた。
吊り物だらけのホールを天井の装置で動かす──というフォックスの観察眼だ。
部屋は、キャットウォークに繋がっていて、オタカラの真上にワイヤーフックがあった。
ワイヤーを作動させるレバーを引いてみると、ワイヤーは下降を始める。真っ直ぐにオタカラへと降りていく事を確認し、モナが一つの作戦を思い付いたようだ。
「うむ。使えそうだ」
「あのフックで降りるつもりか?降りた途端に見つかってしまうだろう?」
「いや、そうとも限らないぜ」
フォックスの当然の疑問にもモナは首を振る。
「闇に乗じるのか」
気付いたようにジョーカーが言った。
なるほど。一瞬だけなら電源を落とせる。
だけど、今居る場所と制御室は、どんなに急いでも電気が消えている間にたどり着ける距離じゃない。
そこで、どうするか…
「手分けするんだよ。制御室で電気を消す係と、クレーンを操作する係と、降りるワガハイ」
つまり、制御室で電気を消したと同時にここでクレーンを操作し、ワイヤーにぶら下がったモナがオタカラを引き上げる…という事だ。
確かにこれだけの人数なら手分けして出来る。
「大丈夫か?最後まで気付かれないで上手くいくのかよ」
「他にイイ手もないだろ。時には大胆さが大事だぜ?」
スカルが不安になるのも分かるが、確かに他に思いつく手はない。
「構わない。それで行こう」
ここでは大胆な人が大胆な案に大胆に賛成する。
ジョーカーは、本当こっちでは頼もしすぎる。向こうでも頼りになるには変わりないけど。
リーダーが頷いたし、他の方法を思い付かないのであればこれでルート確保だ。
不安は多々あるが、怪盗らしくオタカラを盗んでみせよう!
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