The Emperor
Name change
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「ジョーカー!コート危ない!」
「言ってるモノもそのヒラヒラ当たんぞ!」
「煩わしいな。上だ!」
「おお!さすがジョーカー。よく見極めたな」
「って、前!シャドウ来てるって!」
《マダラメパレス》攻略を開始した私達にまず待ち受けていたのは、最初入った時には作動していなかった赤外線の罠だった。
天窓から降りて隣の部屋に移動しようとすると、その境に赤外線が張られていた。僅かな隙間を見つけ、下をくぐったり上を飛び越えたり、一歩進めば赤外線、また一歩進めば赤外線と出だしから苦戦を強いられていた。
モナから貰ったワイヤー装置で赤外線の壁の上を越えたジョーカーに倣って私達も越えると、その先にはシャドウ。
美術館を見回る警備員の格好をしたシャドウと戦闘に入る。
ジョーカーもスカルもパンサーも戦い方のコツが掴めてきたのか、弱点や時には状態異常を利用したテクニカルな攻撃も出来るようになってきた。
ペルソナの使い方も消耗し過ぎず、適度に出来ている。
相変わらずジョーカーは、シャドウと交渉して自身のペルソナにしては使役していて凄いの一言に尽きる。
認知上の弟子達が至る所に飾られた煌びやかな雰囲気は、どうにも馴染めないし、どちらかといえば受け付けない。
そんな館内をマップを見ながら第一展示室、第二展示室と進んでいく。
モナが金ピカオブジェの罠にまんまと嵌り、そのセキュリティを解除する為にパスワードを探したりもしながら。
なんとか第二展示室を抜けると、そこは庭園だった。
中央庭園と書かれているから、きっと美術館の真ん中ら辺に位置してるんだろう。
外が見えても辺りは金ピカの悪趣味な装飾で彩られていて、全く開放的にならない。
庭園の向こう側に一際金ピカで派手な建物があった。
何重もの襖が波になって開く──意味が分からない──と、私達は足を止めた。
止めざるを得なかった。
「げっ、なんだこりゃ…!」
「これ…例の赤外線だよね?こんなの越えらんないじゃん」
スカルとパンサーが驚く通り、赤外線が隙間無く張り巡らされ、ワイヤーを引っ掛けられる場所も見当たらなければこれ以上進みようがない。
これだけ厳重だという事は、この奥に守りたいもの──オタカラがあるのは明白。
パンサーが立て看板を見つけて読み上げる。
警備員への伝言らしかった。
『宝物殿への扉は、館内の警備室のみで開閉が管理される。外からの開閉は不可能』
扉とは、赤外線の向こうの孔雀の羽が描かれた巨大な襖だろう。
どうにかして赤外線を越えられたとしても、その先の扉はあちら側からしか開けない。
「外から絶対開かねーってことかよ!?どうすんだコレ…!」
「待て…あの奥の扉…あの柄、どっかで見た様な…」
お手上げかと思ったが、モナが扉を見つめて何か心当たりを思い出す。
「……そうか!あそこだ!あそこのフスマと同じだ、間違いない!」
何かに気付いたモナが一時引き上げを命じる。
理由が解らないみんなだったが、とにかく一旦戻るぞとモナが来た道を引き返したものだから、それに従うしかなかった。
パレスから現実世界へと戻り、斑目邸前。
「あの先、どうやって進んだらいいの…」
「どっかに仕掛けでもあんのか?見当もつかねえ…」
斑目邸を見上げ、途方に暮れたように杏と竜司が呟く。
そんな二人にモルガナが蓮の鞄からキュピンと顔を出す。
「ワガハイの出番だな」
怪訝がる三人だけど、モルガナがしようとしてる事はきっと《認知の変化》だと推測出来る。
思った通り、モルガナから説明が入る。
あの美術館は、このあばら家だという事。
前に偵察した時に宝物殿の扉と同じ柄の襖を見つけていたという事。
それは、二階の奥。不自然にゴツい鍵まで掛かっていた。
現実世界で斑目の認知が変われば、パレス内の認知も変わる。
つまり、その鍵の掛かった襖の扉を斑目本人の前で開け、《扉は開けられない》という斑目の認知を変える。
そうすれば、パレスの扉も自ずと開くという事だ。
まあ、モルガナ曰く『はず!』だそう。
けど、理屈は合ってると思うからやってみる価値はある。
というか、それしか方法はないだろう。
蓮に同意を求めたモナに、蓮は何となく理解出来たと返す。
私もそれに同意すると、竜司もなんとか納得する。
「けど、やるとしても現実の方にも《ゴツい鍵》があるんでしょ?」
「ワガハイにかかればヘアピン1本で楽勝さ」
杏に自信ありげに返したモルガナだが、多少は時間がかかると続ける。
鍵をこじ開ける所から全てを斑目に見せるのは無理な話だ。
となると、どうするか…
「ほんのちょっとの間、目を逸らしてくれる人が、いたらなぁ…」
大仰に呟いてモルガナは、杏を見やる。
杏はその眼差しの意図に全く気付かないが、竜司はピンと来たようで「あ~」と笑みを浮かべた。
「つーか、部屋に入んのも、どうやるかなー。無理に入ったら今度こそ通報だし…」
竜司も大仰に杏を見るが、杏はやっぱり分かってない。
早く用件を言えとばかりに「なに?」と聞く。
聞いちゃったら最後だよ、杏。
「やっぱ…ヌードしかなくね?」
「はあ…!?」
「奇遇だぜ、リュージ。同じこと考えてた」
ほらね。
「ふざけてんの?」
「別にマジで脱げとは言ってねえよ」
「マダラメの家に怪しまれず入るには、それが一番の口実だ」
竜司とモルガナの考えてる通り、あの家に入れるのは杏しかいない。
「アン殿にひと芝居うってもらいたい」
「急に言われても……それに、その鍵のかかってる場所、私知らないよ?」
「大丈夫、ワガハイも同行する」
「けど実質、私ひとりじゃん…最悪、バレた時どうするの?」
「パレスに逃げ込む!……とか?」
「それ大丈夫なの!?解決になってる!?…てか、自信無さげに言わないでよ」
今回は、杏…そしてモルガナの二人にかかってる。
杏が喜多川君の注意を引いて、その隙にモルガナが鍵開け。そして、斑目に扉が開いた所を見せる。
確かに口で説明するのは簡単だけど、成功するかは分からない。
けどまあ…
「モルガナはやる時はやるね…男だよ」
「今『ネコ』って言おうとしただろ!」
モルガナに睨まれて慌てて首を振った。
そんな私を、杏がそうだ!と見てくる。
「遊江がいるじゃん!」
「私?」
「遊江も一緒に来てよ!」
「え?…無理じゃない?」
杏が嬉々として言ってくるが、私の同行は難しい。
「大丈夫だよ。喜多川くんも女の子相手なら油断するでしょ?」
「あの人、男や女で人を見てないよ。私も警戒の対象で出禁にされてるから」
「そんなぁ…」
喜多川君の私を見る目は、蓮や竜司と同じ。その他で邪魔者。
油断させられるのは、興味を注ぐ杏だけ。
「付いていきたいのは山々だけど…ごめんね、杏」
「私がオトリやるしかない…?」
肩を落として、今一度置かれた状況を考える。
「ちょっと祐介をだまして部屋に連れて行かせて、チャチャっと開けるだけじゃん?」
簡単に言って!と杏も言うが、そうなんだよね。言うのは簡単で、実際は分からない。
「他に方法、無いんじゃ、仕方ない…仕方ない…仕方…ないか…」
呪文のように言い聞かせる杏。損な役回りを押し付けちゃって申し訳ない。
「あぁー!!もう!!!…やるわよ!!正義のためだもん!!」
だけど、吹っ切れたように声を上げて、やけくそのように承知してくれる。
「ホントなんとかしてよ!?」
「アン殿のためならワガハイ、ツメ全部折れても引っ掻くのをやめない!」
「頼んだぞ、モルガナ。祐介に気付かれんなよ?」
「てか、ここまでやってパレス開かなかったら、暴れるからね!?」
「どのみち、悪事のウラ取りしようって流れだし、無駄にはなんねーよ」
まあ、杏には暴れる権利が与えられたから、この作戦の後は好きにしてもらうしかない。
不安も大きいが、ここは杏とモルガナに任せよう。
「よし、早速明日な」
「明日ぁ!?」
「早い方がいいに決まってんだろ?」
「え、でも……そう、喜多川くんがいいっていうかな?」
急すぎるから杏の心の準備も出来てない。喜多川君を引き合いに時間を貰おうとしたのだろうけど、杏には悪いけどあんまり時間をかけるのも良くない。
「んなの『わたし明日じゃないとムリ~』とか、そんなんでよくね?」
「…………」
今のは杏の真似だろうか?
なんかちょっとアホな子っぽかったけど。
「…悪いな、杏」
冷めかけた空気の中、蓮が凛とした声音を発した。
『悪いな』に色んな意味が込められてるようで、杏もこう言われては反論も出来ずに深いため息を吐き出した。
夜にチャットで喜多川君と連絡ついたか竜司が聞いてくる。
明日家に来てくれ、と返ってきたらしい。
本当、杏にモデルを本気でしてもらいたいんだね、喜多川君は。
私がやるしかないんだよね?と杏もまだ少し覚悟を決めかねていたみたいだけど、蓮に『気をつけろよ』と言われて、頷くしかなかった。
竜司がおさらい的に扉を開けさせる意味を復唱するが、結局さっぱりだで終わる。
でも、そんなことより…と続いたメッセージに頬が緩んだ。
『何かあったら連絡しろよ?すぐに飛んでくから』
竜司も蓮も杏の事を心配して、いつでも助けると言ってる。
このメッセージで杏も少しは安心出来たかな。
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