The Empress
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
中間試験最終日の朝。
渋谷駅で杏と合流する。
昨日、早速丸喜先生の所へ赴いた杏は、どうやら鴨志田の件で色々と溜め込んでいたものを吐き出せたらしく少しだけスッキリした表情をしていた。
だけど、もう一つの問題は解決していない。
杏とホームへ行くと、蓮と竜司の姿があった。
「ふぁ…おはよー」
欠伸を漏らしながら二人に挨拶する杏。テスト勉強をしっかりしていて寝不足らしい。
「流石はアン殿。どっかのバカ猿とは大違いだな」
「あ?テメェの方が脳みそ小っせぇくせに偉そうに言うなよ」
「“無用の長物”って知ってるか?デカくてもスカスカじゃ意味ないぞ」
「んだと、コラ!?」
「あーもう、朝からうるさい!覚えた年号忘れちゃ…っ!?」
モルガナと竜司がわいわい言い合っているのを止めようとした杏だったが、不意に背後を振り返った。
「気のせいかな…」
そう呟く杏だけど、私も今微かに視線みたいなものを感じた。
これがきっと杏を見ているという謎の視線だろう。
蓮と竜司は、気付いてないみたいでどうしたのか杏を窺うが、杏はなんでもないと来た電車に乗るよう促した。
「ねぇ、杏。気のせいじゃないよね」
電車に乗って、隣に立つ杏に小声で話しかける。
「うん…なんか一緒の電車乗ったっぽい」
不安げな杏だけど、現段階ではどうする事も出来ない。
近くには蓮と竜司も居るし、大丈夫だとは思うけど。
対策も立てられずに蒼山に着いた。
そして、降車。改札を抜けてエスカレーターで地上へ向かう中、杏はどうしても気になるらしく後ろを振り返った。
「嘘っ、アイツ降りて来た!」
どうやら視線の正体が電車を降りて追ってきているらしい。
「ヤバくない!?」
「ど、どうしようか…」
ついに行動を起こされてしまっては、杏も狼狽えるし、杏への心配が募る。
「ふぁーあ」
「てか、もうちょっと心配してよ!」
竜司は暢気に欠伸をするだけ。それには杏もむくれる。
蓮もそんな杏に小さく笑みを浮かべるだけ。
「しょうがねぇなあ…来いよ」
そう言って、竜司がエスカレーターを上がって行く。
訳も分からず、私達は竜司に続いて地上へと向かった。
「お前ここでストップな」
「え?なんで?」
地上に出て割とすぐの所で杏に立ち止まるよう指示を出す。
「手っ取り早く済ませるには、現行犯で捕まえんのが一番だろ」
竜司にしては機転が利く。が、杏を一人残して私達は少し離れた場所に待機というのは、どうしても心配になる。
「絶対助けてよ!?」
「見捨てはしない」
「ならいいけど」
蓮がしっかり頷くと、杏も納得して大人しくなる。
「ほら、遊江はこっちだ」
竜司に引っ張られて杏と離されると、すぐ近くの物陰に隠れた。
「本当に大丈夫?」
「もしもの時はワガハイが行く」
蓮の鞄から今にも飛び出しそうな体勢になったモルガナが言うが、不安は拭えない。
杏を一人残して待つ事、ほんの僅か。階段口から一人の人影が杏に歩み寄っていった。
あれが視線の正体だ!
手を伸ばして今にも杏に触れそうになった時、気配に振り返った杏の前に蓮と竜司が躍り出た。私は後ろから杏の肩を支えていつでも逃げられる体勢を取る。
危害を加えようものなら、とは思うが……
前に立って、その人影をしっかりと見ると…
その人物が不思議そうにきょとんとしていたものだから、此方まで同じようにきょとんとなってしまう。
軽く傾げた顔に前髪がひと房はらりと落ちる。そんな姿がとても絵になる…なんというか美形の男の子。
人を見た目で判断してはいけないだろうが、ストーカーというにはあまりにも…世間一般的に言うならイケメンすぎる。
スラリと長い手脚のスタイルの良い長身。鼻梁の整った綺麗な小顔。
「なあ、マジでコイツ?お前のジイシキカジョーじゃね?」
竜司も訝しがって逆に杏を疑い始めるほどに、彼はイケメンだった。
1/5ページ