The High Priestess
Name change
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カモシダパレスが消えた翌日、学校へ行った蓮達からカモシダが自主的に自宅謹慎をしたという話を聞いた。
きっと、自責の念に苛まれている事だろう。
彼らを退学だと言い渡す予定だった理事会が5月2日にある為、何かアクションを起こすとしたらその日だ。
あと数日、私達は様子見するしか出来なかった。
「…ヤマダ、アキヒコ……ササキ、マリコ……タヤマ、シンタロウ…」
『候補が見つかりません』
「ホソヤ、キミヨ……」
その数日間、私達は各々の時間を過ごした。私は渋谷の駅前広場で一人スマホに向かって名前を述べていた。
ただただ適当に名前を挙げていく。
もうどれくらい名前を言ったか分からない程の名前を疲れながら呟いた時…
『ヒットしました』
「!…やっと当たったぁ」
無機質な音声に私は少し脱力した。
そして、すぐに──
『ナビゲーションを開始します』
と告げて、その直後にそこを行き交う人混みが一斉に消えた。
やっと入る事が出来た。
「よし!ユエも無事に入れたな」
「お待たせモルガナ」
階段の柵の上に立つモルガナに歩み寄る。
ここは、《メメントス》。前に入る事が出来なかった場所だ。
私のスマホにもしっかりと入っているイセカイナビを使って、ようやく入れた。
「んじゃ、行くか!」
柵から飛び降りて階段を下へと向かうモルガナに続く。
モルガナは蓮が他の誰かと過ごしている時は邪魔しないように別行動を取るらしく、この日もまた別行動だと言うから、私がメメントスへ行く事を提案した。
行き先は、ずっと下の地下鉄のある場所。
エレベーターがその入口らしく、入って降下して扉が開けばそこがメメントスだ。
二頭身になったモルガナと改札を抜けて、すぐにある動かないエスカレーターを降りて行った。
「うわ、広そう」
「あぁ。それにシャドウもいるみたいだ」
「ここを、奥に行くんだよね?」
「そうだな。ずっと奥だ…たぶん」
「………………」
降りた先には地下鉄の線路が迷路のように続いていた。
薄暗い線路へと降りて取りあえず歩き出す。右か左か迷いながら、シャドウを避けながら線路の上を歩いて、ホームを見つけ、そこにあるエスカレーターをまた下へ。
「…?行き止まりか?」
そこは、両側が線路のホーム。真っ直ぐ行った先に壁が立ちはだかっていた。
「壁?……なんか扉っぽくも見えるけど…」
「開く気配はねぇか」
「やっぱり壁?メメントスってこんな何もない場所だっけ?」
「いや、そんなはずはない……まだ奥があるはずだ」
「もしこれが扉だとしたら、開く条件とかがあるのかな」
「かもしれん。…今日の所はここまでだな」
踵を返し、歩き出すモルガナ。
「え?帰るの?」
「これ以上は行けないんだ。戻るしかないだろ?何かあんのか?」
「いや…またあの長い迷路みたいな所歩くんだと思うと」
「疲れたか?」
「精神的に、ね。暗いし道分からないから、億劫っていうか」
「けど、歩かなきゃ帰れねぇ」
「うん、そうだよね」
ボヤいても仕方ないから足を動かす事にした。
エスカレーターを上がって、前のフロアに戻る。
「え?うそでしょ…?」
「マジかよ!?道が変わった!?」
来た時と違う道に私もモルガナも驚いた。こんな風になるとは思わなかったから。
「なるほど。ここは確かなカタチがない。だから、フロアも入るたびに変わるんだな」
「え…それじゃあ、帰り道は……」
「わからん」
きっぱりと言われ、もう途方に暮れるしかなかった。
「ああ、乗り物とかあれば…」
「乗り物……」
「車とか、もうこの際自転車でもいいかな。歩くより速いし」
「ユエ」
神妙に呼ばれて、怪訝にモルガナを見下ろす。
「ワガハイ、乗り物になれる気がする」
モルガナも疲れちゃったの?何言ってるの?
「なんだ、その目?信じてないな?」
「だって…さすがにそれは、ねぇ…」
「まぁ、見てろ!」
そう言うから、何も言わずに見てる事にした。
「おりゃー!」「とォ!」「うおおお!」なんて声を上げながら、多分何かをしようとしているモルガナ。短い手足だし動きがよく分からないから、もがいているようにしか見えない。
私はただの人間だという事が判明したけど、モルガナの正体は不明なまま。現実では猫の姿になるからもしかしたら人間ではないのでは?と疑問も浮かぶが、それを直接モルガナに問う勇気はなかった。
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