The Magician②
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
雨宮君、坂本君、高巻さん、モルガナ、そして私。
装備や回復アイテムなどをしっかりと準備し──ほとんどを雨宮君に任せてしまったが──、改めてパレス攻略を開始する。
秀尽高校の屋上アジトで彼らが話す内容をモルガナ経由で共有し、路地で彼らが来るのを待った。
「待たせたなユエ」
「モルガナ、すっかり雨宮君の鞄の中だね」
派手な髪の坂本君と高巻さんに続いて来る地味目な雨宮君の鞄からモルガナが姿を見せる。
「よし!じゃあ、行くか」
坂本君が気合いを入れてナビを起動させようとした。
「ちょっと待って」
だが、それを制止したのは高巻さんだった。
「どうしたの?高巻さん?」
尋ねれば、高巻さんはそれ!と私を指差してきた。
「私たち仲間なんだから堅苦しいのはナシにしよ?」
「堅苦しい?」
「そっ。名前…気軽に呼び合わない?」
にっこりと笑った高巻さんに坂本君もそういえばと頷く。
「そうだな。“さん”とか“くん”だと距離あるしな」
「そうそう!私もユエって呼ぶから」
「それじゃあ、あ…杏…」
「うん!二人のことも呼び捨てでいいよね?」
「聞く前から俺のコト呼び捨てなんだけど」
「名前でってこと。いいよね?蓮も!」
「え?あ、ああ…分かった」
ちょっと強引だけど爛漫な笑顔はなんだかなんでも許せてしまえて、高巻さん──改め杏は不思議な女の子だ。モルガナが惹かれるのも分かる気がした。
さて、カモシダパレスに到着。と言っても一歩も動いてないけど。
入った事さえ気付けないから、私達の格好が怪盗服に変わっているとかそういった所で判断するしかない。あとは、目の前に佇む城も目安の一つ。
「それにしても…」
スカルが杏をまじまじと見つめる。
「ん?なに?」
下心丸出しな眼差しで見られても、杏はそんなに気にならないようだ。
「コードネームも決めないとな」
まずはそこからだ。
私達のコードネームも教えて、もう一度杏をじっくりと見るモナとスカル。
「アン殿の格好だと…」
「尻尾といい、こっの格好はもう…」
彼女がつけているのは、猫を思わせる仮面。それに細長い尻尾がチャームによってくっ付いている。
そして、今にもこぼれ落ちそうなバストにきゅっと持ち上がったヒップライン。同性から見てもドキドキするような格好は、普通に羨ましく思う。
「お前はどう思うよ、蓮?」
スカルがジョーカーに尋ねると、ジョーカーもじっくりと杏を見つめた。
「キャットガール……いや、セクシーキャットだな」
「待って!その名前で今後呼ぶ気!?絶対イヤだし!」
大真面目な顔で言ったジョーカーに杏は慌てて首を振る。
「モノは何がいいと思う?」
スカルが今度は私に聞いたから、私も杏をしっかりと見て答えた。
「セクシーレッド」
「すっげーイヤ!」
これでもかってくらい力強く否定されて、ちょっとヘコむ。
「じゃ、何がいんだよ?」
「えっと、……【パンサー】」
杏が自分で考えてポツリと言った。
なるほど猫ではなく豹だったのか。
「どういう意味だ?」
「…豹」
相変わらず英語に弱いスカルが聞く。
「女豹………」
「女豹、言うな!」
ボソッと言ったモルガナに杏が突っ込んだ。
こうして杏のコードネームも決まり、ようやくパレス攻略に出られる。
鎧兵士がうろつくパレスを戦いながら進む。
ジョーカーを中心にカモシダの小細工を解きながら進んでいく。
進んでいても、本当気分の良いものじゃない。
鈴井さんへの執着を思わせる隠し部屋を見つけ、パンサーが改めてカモシダの改心を強く願い、そんな彼女の姿に私達も気持ちを改めた。
そして、パレス最奥。巨大で豪勢な扉の先にあるオタカラ部屋までたどり着く。
豪勢な扉の向こうは、王の間で中央にカモシダが鎮座している。何人もの兵士を従えて。
そんな奴を嘲笑うかのように上の回廊からこっそりと侵入を果たした。
王の間から二つほど扉を隔て、オタカラ部屋は存在した。
「うおおお!何だこの部屋すげぇ!《オタカラ》とか、ぜってーココだろ!」
スカルが興奮しながら部屋を見回す。
金銀財宝宝石、いかにもに煌めく黄金の室内。
その中央にモヤモヤと光の玉が浮かんでいた。
これが《オタカラ》だとモナはみんなに話す。
みんなは、一目で分かる物だと思っていたから怪訝にモナを見る。
オタカラは、こうして場所を突き止めただけでは奪う事が出来ない。
まずは、《実体化》させなければならない。
欲望には元々形なんて無い。自身の欲望が“狙われているオタカラ”だと本人に自覚させ、欲望を“奪われる”と強く意識させる。
それで初めてオタカラは、実体として姿を現す。
「そんなの、どうやってやるの?」
モナの説明にパンサーが首を傾げる。
「本人に予告してやるのさ。“オマエの心を盗むぞ”ってな」
「予告状かよ!?まさに《怪盗》じゃん」
「そうすればオタカラは絶対に出る!…はず!」
「またそれかよ……けど、やってみる価値はあんな!」
段取りは決まった。あとは…
「──決行あるのみ」
そう。ジョーカーの言う通り。やるだけだ。
予告状は本人たっての希望で竜司が作成する事になった。みんなの不安を集めていたが、竜司も言いたい事が山ほどあるらしく、その気持ちを汲んで一任した。
万全の体制を整えてから作戦開始だ──。
1/5ページ