シタタルチャーム
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ガッシャーン!!!
「………………」
「安孫子くん、ちょっといいかな?」
「……………はい」
友達とちょっとフザケて遊んでたら、校長の大切な陶器を派手に割ってしまった。
なんでそんな大事なモノを無防備に飾っておくかな!なんて文句もあったけど、やってしまったのは自分なので与えられた罰は甘んじて受けようと思う。
「で、コレがその罰なんだ?」
「プール掃除とか…面倒」
「私も面倒だけど仕方ないじゃん」
「てか、なんでおれまで」
「まぁまぁ研磨。この暑い日に水浴びなんてラッキーだろ?」
「浴びたくないし。エアコンの方がいいし」
「分かる!快適な部屋でまったりしたい!」
「おいこら詩庵、お前は言える立場じゃねーだろ」
「言うだけならいいでしょー」
「言うより手を動かす!なんで俺の方が働いてんの?」
「頼りになるからね、てつろー」
「籠ってねーよ気持ちが」
与えられた罰は、プール掃除。
そこそこ広いプールを掃除しなさいと命じられ、一人でとは言われなかったからすぐに助っ人を求めた。
最初はクラスの友達に頼もうとしたけど、濡れるの嫌とか面倒とか薄情な断られ方をした。
「黒尾先輩に頼めば?」という言葉で鉄朗の下に駆け込んだ。
部活もあるし、鉄朗にも断わられるだろうと思ってたけど、30分間という条件付きで研磨ごと引き受けてくれた。
私と鉄朗でデッキブラシでプールの底をシャカシャカ磨いて、研磨が上から水を撒く。揉めることなく自然と決まった役割分担は長い付き合いが成せる技だ。
「しっかし、こうして見るとプールって思った以上に広いな」
「まだ半分だもんね」
汗を拭いながらプールを眺める鉄朗。
どーせ濡れるからって上半身裸で正直目のやり場に困る。
「30分以内に終わりそうにねーな」
「いーよ。そしたら残りは一人でやるし」
「………」
「ん?何?元々私への罰なんだからフツーでしょ?」
何か言いたげにこっちを見てきた鉄朗に首を傾げた。
最後まで手伝ってくれるつもりなのかな?でも、部活あるじゃん?
「そーだけど…一人ではさすがにキツいだろ。それに心配だし」
「心配?」
「いくら水で涼しいからってこの暑さじゃ、お前ぶっ倒れかねねーし」
あー。そういうことサラッと言っちゃうのが憎らしい。
キュンとしちゃうじゃん。
「でも、てつろーも部活あるでしょ。だから30分って決めたんじゃん」
「30分で終わると思ったからだよ」
「半分行けば充分だよ」
「何も充分じゃねーよ。お前一人には出来ません!」
「けど、てつろーに部活サボッてほしくないし」
「……お前、その顔は卑怯だろ」
どの顔か自分じゃ分からないけど、ショボくれてみたのは確か。
狙ったつもりはないけど、鉄朗を黙らせる効果があったみたい。
何も言えなくなったらしい鉄朗と特に言うことがない私の間に妙な間が出来る。
このまま鉄朗たちを上がらせて一人で続けようかなと思った瞬間、その思考はものスゴい勢いで掻き消された。
ブシャーーー!!!
「んに゙ゃー!?」
「どわっ!?」
水が私と鉄朗を襲った。
その水が飛んできた方を見れば、デッキの上で研磨がこっちにホースを向けて立っている。
ホースの先を指で摘まんで威力を上げて…
ブシャーーー!!!
「ちょーっ、研磨!何すんの!」
「そんな勢いあるモノ人に向けちゃいけません!」
「あーあ、二人ともビショ濡れだね」
いや、研磨がやったんじゃん。
どーした?暑さと面倒さから壊れたか?
「クロもそれだけ濡れたんじゃすぐに部活は無理だよね」
「お前がやったんだろ!」
「おれはもう行くけど、クロは乾くまでいなよ」
「え?」
「監督にはちゃんと言っておくから」
「オイ、研磨」
「じゃあ、ガンバッテネ」
籠ってない激励を残して、研磨はホースをプールに垂らしてその場を後にした。
遠ざかってそしていなくなる背中を私と鉄朗は唖然と見つめていた。
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