フェイクマイタイプ
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「じゃあ、せーので指差せよ?…せーの!」
そんな合図とともに何本もの指がそこにある本の上に乗った。
「あー、やっぱデカイ方がいいよな」
「あ?黒尾、お前は違うのな」
「デカけりゃいいなんて、サルですか?大事なのはカタチだろ」
「確かに黒尾が指してる子キレイな胸してるよな」
「いやいや、男なら巨乳を好きにしたいだろーが!」
なんて熱弁を始める俺らの手元にある本は、グラビア。
部活が休みの放課後にコイツらに捕まって、どれがタイプか指差しゲームをするハメになった。
「んじゃ、次。髪型な。せーの!」
次から次へと細かくパーツ分けしてやってる、ま…遊び感覚。男なら誰しもが通る道だろう。
「ロングのストレート一択だろ」
「セミのが大人っぽい」
「うなじ見えてる方がエロい」
バカな会話だが、嫌いじゃない。
「んじゃ、最後。総合的にどれがいいか…せーの!」
総合と言われ、みんなも少し迷いながら指を差していく。
さて、俺はどうしようかね。
あんまり待たせると白けさせるから、すぐに指を本に乗せた。
「へぇ?お前そういうのがいいんだ?」
「お前も結構エグいな」
「黒尾もやっぱエロボディが好きなんだな」
「ん…あー、まあね」
誰もいない教室で男4人、ゲラゲラ笑ってたワケだか…
「で、そっちのお前は…………ん?」
友人が本に乗ったもう一つの指を見て聞くが、俺らは4人。
なんで1本多いの?
しかも俺らより一回り小さくてしなやかな指。
更にはその指が差している女の子が、どことなくアイツに似ていて…
一瞬ぎょっとした皆が一斉にその指を辿って見上げた。
そこには、アイツ……
「詩庵!」
が、何食わぬ顔で立っていた。
「あ…黒尾のカノジョちゃん?」
「あー…これは気まずいわ」
他人事のように友人が呟くが、構ってらんねぇ。
「お待たせ、てつろー」
「あ、うん。そんなに待ってない、かな」
「だろうね。楽しそうだったし」
「いや?別に楽しんではいなかった…かなぁ」
「嘘つけー。結構ノリノリだったじゃねぇかー」
「ちょっと黙ってろ!」
「てつろーってこういう人が好きなんだね」
「え、あ…違う違う。こんなのテキトーに答えただけだから」
「えー?黒尾さっきからずっとこんな感じの娘選んでたじゃんよー」
「黙って!」
「おっぱいはカタチが大事ってな。彼女ちゃんそうなの?」
「黙ってください!お願いします」
「髪型だって違うよなぁ」
あー!もう!
コイツら面白がりやがって!
不機嫌になってく詩庵と余計なコト言いそうなコイツらを、とにかく引き離そう。
「帰るぞ、詩庵」
鞄と詩庵の手を掴んで教室を飛び出す。
背後から茶化す声がしたが気にしたら負けだ。
「ああいうのは…」
「ん?」
「ウソでも私に近い子選ぶとかしてほしかった」
手を引かれて後ろを歩く詩庵を振り返れば、ぶすくれた顔があった。
ほっぺ膨らますとか可愛すぎか!
「そりゃあ、あんなエロい雑誌に似てる人なんておこがましいけどもね」
「ただのグラビアだっつの」
「せめて髪型だけでもさ…」
髪型は、確かにいた。現にさっき詩庵が指差したのがそうだし。
「あれはマジでただの遊びなの。お前似の子ばっか選んでたらアイツらにからかわれるだけだしな」
「からかわれるのが嫌だからテキトーに選んでた?」
「そう!」
「けど、テキトーってつまりは無意識だよね?無意識ってコトは深層心理でのてつろーの好みはあのエロボディ…」
「むっつりみたいに言うのやめてください」
「……………」
あーあ、本格的に拗ねたよ。
要らない勘違いしちゃって。
担任に呼び出されてた詩庵待つ為に教室残ってあんな遊びしてたのは俺だけどさ。まさか3年の教室に入ってくるとは思わなかったんだよ。
いや、コイツのコトだから上級生の教室だろうと物怖じも遠慮もしないのは解ってたけどね。
チャラい男どもがいたら、廊下から声かけてくれるだろうなとも思っちゃってたワケだ。
はあ…今回は自分の非を素直に認めよう。
昇降口でお互いの靴箱に向かう為に一度別れて、靴を履き替えればすぐに詩庵が外に出ていく。
早ぇーなオイ!
慌てて追いかけて隣に並ぶ。チラッと顔を窺ってみれば、仏頂面。
「おーい黒尾ー!」
校舎の方から声がして振り向けば、教室の窓からアイツらが手を振っていた。
「彼女ちゃんの機嫌は直りましたかぁ?」
ちょ!そういうコト言うのやめて!
隣から聞こえた舌打ちに俺は頭を抱える。
「カノジョちゃーん!黒尾に愛想尽かしたらオレのトコおいでよー!」
あーもうアイツらマジで覚えてろよ?
「愛想尽かすなんてあるワケないじゃん」
「………え?」
隣からボソッと聞こえた声に詩庵を見れば、俺をじっと見上げる視線とぶつかった。
何、その上目遣い。ワザと?あざとすぎだっつの。
ま、詩庵になら何されたって安請け合いしますけど?
「詩庵」
「なに───っん?」
肩を抱いて引き寄せて、拗ねて尖らせていた唇を奪ってやった。
途端に奴らがギャーギャー騒ぎ出す。
黒尾テメー!とか見せつけんな!とか聞こえる中、詩庵の唇を舐めて離れる。
離れて再度視線を絡ませれば、詩庵はその頬を急激に赤らめた。
この瞬間が可愛くて好きだ。
もう何回もしてんのに、普段は飄々としてるのに、コイツの表情を変えられるのが俺だけって、こんなに嬉しいコトはない。
緩みかける口角を吊り上げて振り仰ぐ。
アイツらに舌を突き出して挑発してやった。
サイッコーに悔しがるアイツらに満足し、詩庵の肩を抱いたまま学校をあとにした。
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