荒姫
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ほんの一瞬だけだった。
それでも確かに先生は、居た。
弟子が腑甲斐無いばかりにその手を煩わせてしまったらしい。
「ご免なさい。先生」
どうやら肋がいったが、そんな事に構っていられない。
モニターで虚と彼の男──星海坊主が対峙しているのを眼の端に入れ、部屋を出て行く。
先生にも逃げろと云われ、戦況はアイツらに分がある以上、此処に残る理由も無くなった。虚に捕まる前に小型艇を拝借して一足先にこの星を立ち去った。
取り敢えず近くの星に移動し、情報を整理させていると良からぬ事態を耳にした。アルタナのある星が悉く暴走と消滅を果たしているという。そして、そんな星々の者達が決起していると。
何かが始まろうとしていた。
私も時間を置いて再び宇宙へ飛び出したが、行く宛は無かった。
何時までも独りで居たって状況が変わる事はない。しかし裏切った手前、鬼兵隊の下へは行けない。
こんな時、頼りにするのがあの男しか居ないというのも哀しいけれど、他に手は無い。その連絡先に通信を入れた。
発信音を鳴らした後、すぐに通信が繋がる。
『…はい。こちらぁ快援隊です』
訛りの強い声が雑音混じりに聴こえる。
「あ、えっと……辰馬くん居ますか?」
柄にも無く緊張した声で返すと、向こうで小さな微笑を感じた。
『辰馬はわしですけんども、そちらはぁ紫乃さんですかぁ?』
「…ん」
『どうしたんじゃ?そがな改まって』
直ぐに気付いてもらえる事に気恥ずかしさを覚えながら、用件を伝える。
「あの…辰馬の船に乗せてくれないかしら?」
『おー。かまんき。何処におるんじゃ?』
暢気な声も二つ返事も相変わらずな辰馬に苦笑を漏らして、座標を教えれば一時間くらいで向かうと通信を切った。
終戦前に離脱した辰馬は、宇宙へ飛び出して商いをしていた。
快援隊を設立して、宇宙を駆け回っている。
私が情報屋として宇宙を駆け回るようになれば、その道中に辰馬と再会するのは必然だったのかもしれない。物を売買するか情報を売るかの違いだけで、遣っている事は同じようなもの。
時に船に乗せてもらったり、時に快援隊へ情報を提供したり、かつての戦友の中で一番良い関係を保てているのが辰馬だ。
素直に頼み事を出来るのも今では辰馬くらいしか居ない。
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