相棒刀
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
鬼兵隊は、宇宙海賊春雨第七師団の団長・神威と結託した。
此方の仕事を手伝ってもらう代わりに、彼らの仕事も手伝う。
その為に現在、とある星で裏切り者の粛清をしている最中だ。
春雨を裏切り、抜けた部隊。第七師団が粛清を任されたらしく、鬼兵隊も共に駆り出していた。
星に降り立ち、早速狩りを始めたが如何せんその部隊は数を誇るらしく、一日で終わる事は無かった。
その夜──
「まるでゴキブリだね。ワラワラと切りがないよ」
「幸い武力はこっちが上だ。このまま畳み掛けるか?団長」
神威と阿伏兎が策を練るのを、少し後ろで訊いている晋助。
今回は、神威が指揮を執る為に晋助は自ら動かない。
不本意だろうが、神威の指示に従う。
「そうだなぁ……ねぇ、シンスケ」
「なんだ」
「シンスケならこの数を一瞬で消す為にどの駒を使う?」
「………………」
今回は受け身の筈だが、意見を求められてはそうも云っていられない。
晋助は煙管の煙を吐き出してから、答えた。
「オレなら……武力百の手練三枚、といった所だな」
「3枚って……3人ってコトか?オイオイ、それじゃ一瞬で終わるワケねぇだろう」
阿伏兎が顔を顰めて抗議するが、晋助は笑みを深める。
「いや、この駒なら一瞬だ。他の駒は一切船から出ねェのが前提でな」
「どういうコトだ?その駒ってのは一体…?」
本当にその策は可能なのか俄かには信じ難いが、晋助は出来ない事は豪語さえしない。
そういう男。
「まず、主軸にテメェの団長」
「俺か。うん、それは当然だよね。俺抜きでなんて有り得ない」
腰に手を当てて胸を張る姿は、子供のよう。
「その右翼を──オレが務めよう」
「シンスケが?出てくれるなら俺とシンスケの2人で充分じゃない?」
二人の戦力は、格別。確かに充分過ぎる。
けれど、晋助は慢心なんてしない。もう一つ確実なモノを策に練り込む。
あぁ…嫌な予感。
「それじゃあ、一瞬とまではいくまい。一瞬でと云ったのはおめェだろうが」
「ふむ。確かにあの数じゃ俺達2人でも一瞬は難しいか。でも、もう1人入れただけでそれを一瞬に出来るなんて、俺達以外にそんな武力…………」
神威もはたと気付いたらしい。
そして、視線をゆっくりと向けてくる。
「在るじゃねェか。今ココに………なぁ?紫乃」
晋助さえも此方に愉悦な視線を向けてきた。
嫌な予感は得てして当たり易い。
「なるほど、紫乃は確かシンスケと一緒に戦ってたんだよね?」
「コイツが左翼を固めりゃあ一瞬で終わるが、どうだい?団長殿のお気に召したか?」
「あぁ。やっぱり最高だね、シンスケは」
勝手に話が決まっていくが、見逃せないのは当人である私。
「待って。私は戦を退いているの。そんな武力があったのは昔の話よ?」
「テメェは鈍っちゃいねェよ。それでも暗殺は幾度もしてきただろう?」
「………最低限の労力しか使ってないわ」
「だからこそじゃねェか」
「え?」
晋助がゆっくりと此方に歩み寄る。
目の前に立たれると、手を取られた。
「そろそろ暴れてェだろ?その機会をやるっつってんだ」
不敵に歪めた口許。愉しげに細められる隻眸。
見上げて気を取られていると、その手に何かを握らされた。
妙にしっくりと来るソレを見下ろして、胸が熱くなるのを感じる。
「こんなモノまで用意していたの?」
「どうやら刀を棄てたらしいからな。取り戻してやったまでだ」
「余計な事を」
手を持ち上げてソレを見詰めると、あの頃の情景が蘇る。
攘夷戦争の折、私と共に在った相棒。
今では帯に隠せる小刀しか使っていないが、こんなものを渡されると…
「太刀もあるが、お前にはソレが一番だろう?」
幼馴染というのは、こういう時に困る。
何が良くて何が駄目か、どうすれば炎が灯るのか、熟知しているのだから。
「………えぇ。わざわざ拵えたの?」
「荒姫仕様の特注だ。泣いて悦びな」
「本当、泣きたくなる程腹立たしいわね」
あの頃のモノと遜色無い。やってくれたわね。
沸々と沸き上がる忘れていた昂りは、もう暴れる事でしか鎮められそうにない。
私は、その脇差を帯の結びに差して顔を上げた。
「へぇ?これが荒姫…………いいね、本気でヤリ合いたくなってきた」
「残念ながら相手は蟻の大群だ」
「よし。一瞬で踏み殺してこよう」
「紫乃、気分はどうだい?」
「アンタのお蔭で最悪に最高よ」
「ソイツは結構。ほら、団長…出陣の合図だ」
「わかった。阿伏兎、ココは任せたよ」
「はいはい。仰せのままに」
「それじゃあ、3怪物突撃ぃ!」
気の抜ける号令に晋助も私も溜息一つ残して、船を飛び出した。
1/2ページ