追憶-血-
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攘夷戦争。
天人を排する為に攘夷志士達が剣を取り戦った時代。
長きに渡る戦いの後半。勢いが収まりつつあった侍達が再び蜂起した。
若い侍達が集い、お国の為、仲間の為に戦った。
そんな攘夷志士の中に伝説となった男達がいた。
白い衣に敵の返り血を浴び、夜叉の如き強さを誇る──白夜叉
撤退戦に於いてその才を発揮する──狂乱の貴公子
鬼のような戦力を持つ部隊の長──鬼兵隊総督
彼らの武力を支える武器の要──桂浜の龍
後に攘夷四天王と呼ばれる彼らを中心に戦は回っていた。
そして、四天王に引けを取らない者がもう一人──
「ヅラァ、そっち行ったぜ!」
「ヅラじゃない桂だ!俺が引き付ける。高杉、頼んだぞ」
「云われるまでもねェ。辰馬、援護だ!」
「了解じゃ!ブチかますぜよ」
四人が出れば、戦いはあっという間に収束していく。
他の志士達は邪魔にならない位置で彼らの戦ぶりを見守っていた。
「どけェ、銀時!」
「!…あぶねっ!」
銀時の横を晋助の刀が紙一重で通過し、其処にいた敵に突き刺さった。
「何すんだ!高杉」
「どけって云ったろ」
「もっと早く云えよ!見ろ!俺の髪が斬れたじゃねーか」
「ア?髪くらいでなんだよ、女々しい奴だな」
「ノーコンが偉そうにすんな!」
「それくらい避けねェのがワリィ」
「んだと?ゴメンの一言とか云えねーのかよ」
「謝る義理なんざねェだろうが」
「オイオイ。態度とプライド高すぎ君よ、テメェのミスぐれぇ認めろや」
「細けェこと気にし過ぎで毛根ネジ曲がってるぜ?」
「はぁ?曲がってねーよ!何云ってんの!?」
「現実逃避すんなよ天パ夜叉」
「テメェも現実見ろやチビっ子総督」
「アァ!?」
「っんだコラァ!!」
戦場のど真ん中で額をぶつけ合う銀時と晋助。
「おまんらやめんか!喧嘩は戻ってからにせぇ!」
辰馬のデカイ声が二人を制止するも、二人は無視して云い争う。
「銀時!高杉!来てるぞ!」
小太郎の緊迫した声がした。
ハッと我に戻って殺気を感じるままに振り向けば、有に3Mはある巨体が二人の間近に迫っていた。
「ゲェ!?」
「チィ!」
巨体の割りに速い動作で振り上げていた巨大な棍棒を二人目掛けて降り下ろした。
油断したつもりは無かったが、互いに喧嘩をすれば多々周りが見えなくなる時があった。
すっかり反応が遅れた二人は、避ける事は諦めてその場に踏ん張って受け止めようと腹に力を込めた。
巨体が繰り出す巨大な獲物攻撃は、恐らく威力も凄いだろう。
骨の五~六本は覚悟した。
「ゴアアアア」
耳を劈くような声を上げて、巨体は腕を振り切った。
ドガァッッッ!!
衝撃音と土埃が辺りを襲う。
小太郎と辰馬が二人の名を叫んでいる。
銀時と晋助は…
「…………………あれ?」
「コイツァ………」
無傷。それどころか攻撃を喰らわなかった事に怪訝がる。
だが、その理由も土埃が収まったら直ぐに判明した。
二人の目の前にあの巨体が転がっていた。
その巨体の上に…
「仲良し過ぎるのも考え物だね」
刀を巨体の心臓に突き刺して立っている影があった。
巨体が二人に棍棒を当てるよりも速く巨体に突進して倒し、心臓を一突き。
そんな所業が出来るのは、彼ら四人の他には一人しかいない。
神速を誇り、清廉な立ち姿からは想像出来ない程荒々しい戦ぶりを発揮する女武者。
「仲良しじゃねーよ!!」
「気色ワリィこと言うんじゃねェ!」
「え?だって、喧嘩する程仲が良いって云うでしょ」
「仲良くねーから喧嘩になんだよ!!」
「紫乃!テメェちょっと降りて来い」
「嫌だね」
二人に睨まれた紫乃は、二人とは反対側に着地し、小太郎達の方へと走って行った。
「ったく。アイツの眼は節穴かよ」
溜息を吐いて銀時も小太郎達の方へと歩き出した。
それを見てすっかり興が冷めた晋助も、舌打ちをして足を踏み出した。
彼ら五人が悠々と去る戦場には、無数の天人の死体が転がっていた。
敵生存数───0。
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