Melt-Heart
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「じゃあ火神っち、茗子よろしく頼むっス」
「ああ」
「アイツはオレが責任持って倒すんで」
「マジ負けんじゃねーぞ」
「当然っス」
熱りが冷め、短い会話を交わす。
氷室さんとアレックスさんとも別れ、私は火神さんに預けられて客席へと向かう事になる。
コートへ戻る涼太に何か声を掛けるべきなんだろうけど、言葉が何も浮かばなかった。
だから、目が合った時そっと頷いてみせた。
涼太も一つ頷いてから背中を見せた。
「行こう、石丸」
「はい」
涼太に背を向け、火神さんと客席へ向かう。
「大丈夫か?」
「私は大丈夫です」
「てか、黄瀬と付き合ってんの?」
「え?」
「いや…あんなキスしてたし…」
「…………」
そう改まって言われるとなんだか無性に恥ずかしくなってくる。
黒子さんには話したが、火神さんとは連絡先の交換もしていないから話す機会が無かった。
態々黒子さんが話すとも思えないから、火神さんは私らの関係を知らないという事になる。
「お付き合いさせて頂いてます」
「あん時はそんなんじゃねーって言ってたのにな。やっぱそうなったんだな」
何処か悪戯めいて笑う火神さんの横顔をなんとは無しに眺める。
「あの時とは、ストリートコートで会った時の事ですか?」
「ああ。黄瀬の彼女なのかと思って聞いたら、違うって言われた」
「彼女に見えていました?」
「見えてたっつーか、なんかそうなのかなって思っただけだ」
「そうですか」
あの頃の私は、ただ涼太に近付くだけしか考えていなかった。
好意なんて持っていなかった。ただ好い印象を植え付ける為だけだった。
だけど、気付けば時間を忘れて楽しんでいたかもしれない。ただただ楽しかったような気がする。
客席に着けば、黒子さんと、彼と同じジャージを着る人らが居た。
誠凛の皆だろう。
「お帰りなさい、火神君……あれ?石丸さん?」
「今晩は、黒子さん」
目を丸くさせる黒子さんの隣に火神さんが座るのを見て、その隣の空席に腰を降ろす。
「黒子、灰崎って知ってるか?」
「え?何故火神君が彼を…」
「さっき会った」
火神さんが簡単に説明を入れると黒子さんの表情が曇っていく。
そして、黒子さんから聞いた彼はやはり危険な男そのものだった。
「石丸さん…大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です」
って、これも何度目だろう。同じ事をこう何度も言ってるとなんだか可笑しくなってくる。
「これでも色々と切り抜けてきましたから、あの程度では心折れません」
「あの程度って…」
灰崎からのキスなんてあの程度だ。気分は悪いけど大した事は無い。
それなら、強姦未遂の時の方がよっぽど怖かった。
あのまま犯されていたら…。
ミカまで捕らわれてしまっていたら…。
あんな危ない綱渡り、もう二度とご免だ。
けど……
あの時、保健室で涼太に会ったから恐怖が薄れた。
気が動転していたのもあるし、あんな奴らに奪われるくらいなら涼太の方が良いと思って誘ってしまったけど。
あの時の涼太の温もりに助けられた。
灰崎との試合は、序盤涼太が完全に圧されていたが黒子さんの激励に突き動かされ、辛勝。
とても凄い事をやってのけたらしい涼太に拍手を送った。
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