Match-up
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“茗子初めてだし相手黄瀬ちゃんだし、期間は2ヶ月にしたげるよ”
“倍にしても多分無理じゃないかなぁ”
“ま、せいぜい頑張れ”
“リョータの事は私に聞いてよ”
仲間からのサイテーな激励を貰って、私は今サイテーにも黄瀬涼太にストレートに切り込んでいる。
バスケ部の活動場所である体育館のステージの上と下で見つめ合う二人の男女。
この説明だけだとなんともロマンチックじゃないか。
「……………」
だけど現実はそんなに甘くない。
瞠目結舌と私を見遣るイケメンは、思考が停止しているのだろうか。
いつまでもこのままでいるのは疲れるから、私が開口する事にした。
「黄瀬さん、聞いていますか?」
「!……えっ、と…ごめん…今なんて…」
私の声で我に返った黄瀬涼太からの反応はなんとも月並みだった。
「だから、黄瀬さんとヤラせてくださいって言ったんです」
「いや、なんなんスか!?それ!」
「そのままの意味ですけど」
「てか、オレ達初対面っスよね!?それでなんでそんな言葉が出て来るんスか!」
動揺が見て取れる。
こんな反応を示すという事は、彼は遊んでいるタイプでは無いという事だ。
「あ、そっか。そうでした」
「そうっスよ!」
「1年の石丸茗子です」
呆れて頷く彼に告げて頭を下げた。
「は?」
「自己紹介を忘れていましたよね。すみません」
「そういう事じゃなくてっスね」
「名乗りも上げましたし改めて…黄瀬さん、ヤラせてくだ──」
「もう言わなくていいっス!」
「んぐっ」
再度お願いしようとしたら、慌てた彼に両手で口を塞がれた。
「てか、なんなんスか。なんで突然そんな事言うんスか?」
「…………」
「自分で言うのもなんだけど、今まで好きだとか付き合ってとかは散々言われてきたけど、ヤラせてなんて言われたのは初めてっスよ」
「…………」
「えっと、石丸さんだっけ?オレの事好きなんスか?」
「…………」
「付き合いたいって事っスか?」
「…………」
「………なんか言ってもらって、ってああ、これじゃ喋れないっスよね」
私の口を塞いでいる事に気付いた彼は謝りながら手を退かした。
「どういうつもりなんスか?」
「どうもこうも無いですよ?ただヤリたいなって思っただけです」
「……女の子が軽々しく言うもんじゃないっスよ」
動揺は最初だけ。次第に頭が冷えてきたんだろう。
目が徐に冷たくなっていく。嫌悪感さえ孕み始めている。
「女でも性欲ってありますよ?あそこにいる彼女らだって…」
入口で此方を睨んで見ている人だかりを顎で指せば、彼は冷めた視線を私に向けてから入口を一瞥する。
「黄瀬さんに告白した人らだって、黄瀬さんとヤリたいって思ってますよ」
「オレは軽々しく言うなって言ってんの」
「私も軽く言ってるつもり無いんですけどね」
「マジでなんなんだよ、アンタ」
冷たげに眇めた瞳は、モデルがするようなそれとはかけ離れていて、それはそれは素敵だった。
「石丸茗子ですよ?」
「真面目に答えろよ」
「……私が何かは黄瀬さん自身が決めてください。それが正解になりますから」
「………」
「そろそろ笠松さんも戻りますね。休憩の邪魔してすみませんでした。返事は3日後に聞きに来ますから用意しておいてください。では」
「は?あ、ちょっと待っ──」
矢継ぎ早に告げてからステージを華麗に降り、入口へと向かう。
呆気に取られる彼が慌てて呼び止めてきたけど、私は振り返る事無く体育館を後にした。
あの嫉妬の塊の中をするりと抜けて体育館を出ると、丁度笠松さんが戻って来た。
うん。タイミングばっちり!
笠松さんに軽くお礼を述べてから帰路に立った。
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