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黄瀬涼太に借りていた物を返す為に体育館へ向かえば、笠松さんに捕まった。
そして、咎められる。
…のだが、
「……………」
「石丸、返事は!」
「………いやっ、ちょ、ちょ…はぁ?」
「お前が取り乱すなんてよっぽどだな、珍しいモン見れたよ」
「激レアですよ。良かったですね」
じゃなくて、ちょっと待って。今、笠松さんなんて言った?
「で、返事は?」
「いやいやいやいや!待ってください!も、も一回言ってください」
「聞こえなかったのか」
「いえ、耳がおかしくなったみたいで…」
「ほぉ?なんて聞こえた?」
「…………ボール磨きが嫌なら、黄瀬さんに──告白しろ、と」
「ちゃんと聞こえてんじゃねぇか」
「いやいやいやいやっ…はぁ!?」
「お前が感情剥き出しにするなんて珍しいな」
「スーパーレアですよ。おめでとうございます」
って、ボケてる場合じゃなくて、聞き間違いじゃなかったら一体何を言っているんだ?
「というか、笠松さん…何を寝惚けた事を言っているんですか?」
「あ?」
「私が黄瀬さんに告白!?一体何を告白しろと?」
「澪田から聞いたぞ?お前らの馬鹿げたゲームの事」
「は?アカネさんが…言ったんですか?」
「ああ。ったく、お前らは本当どうしようもないな」
呆れてはいても軽蔑などはされなくて、笠松さんは構わず続ける。
「お前が急に黄瀬を紹介しろっつった理由がやっと解った」
「そ、それで何故私が黄瀬さんに告白となるんですか?叱られるのならまだしも」
「お前、黄瀬の事好きだろ」
「はぁっっ!!??」
「あんまデカイ声出すと皆に聞こえるぞ?」
笠松さんの冷静な声にハッとすれば何人もが此方を見ていた。
漏れず黄瀬涼太も驚いたように目を丸めて私を見てくる。
慌てて逸らして、居住まいを正す。
息を一つ吐いてから笠松さんを見た。
「笠松さん、本当どうしたんですか?」
「俺はどうもしねぇよ」
「いやいや、私が黄瀬さんを好きだなんて正常じゃないです」
「正常じゃないのはお前だろ?」
「私はいつも通りですよ」
「いつも通りならなんで直ぐに違うと言わねぇ?」
「っ!?」
「前にもお前に聞いた事があったよな?その時は即答してただろ」
「あ、ありましたっけ?そんな事」
「お前の記憶力で忘れるなんて事はねぇよな」
「………」
「あの時と違って即答出来ねぇって事は、そういう事なんだよ。いい加減気付けバカヤローが」
「……………」
「お前は、他人の気持ちはこえーぐらい読めるのに自分の事となると無頓着すぎんだよ」
「………ハッ。そんな事あります?私が黄瀬涼太を好き?」
「…………」
「知ってるなら言いますけど、あの人に関わったのはゲームの為だけなんですよ!?何処に好きになる要素があるというんですか?」
「…………」
「そんな感情、私が持てる訳も無いでしょう!?」
「………もう持ってるじゃねぇか」
「だからっ、何処にそんな──」
「ムキになってんのが何よりの証拠だ」
「っ!」
「初めて見るよ。一人の人間に対して感情を露にするお前は」
「………………」
「客観的に自分の心見てみろ。答えはハッキリしてるはずだ」
「………………」
「………………」
「…………は、話は以上ですか?」
「ああ。言いたい事は言った」
「じゃ、じゃあ…か、帰ります……」
「これはどうする?」
「か、笠松さんから…返しておいてください。流石にキャパシティーが限界です」
「分かった」
「失礼、します…」
借りた物の袋を笠松さんに託し、私はステージを降りた。
あ、ヤバイ…脚に全然力入らない。
なんとか鼓舞して、よろよろと入口まで歩く。
入口でまるで見張るように此方を見ていた安芸野さんだったが、構う余裕が全く無い今、軽く会釈して体育館を離れた。
衝撃が強すぎる。笠松さんから諭された言葉は私を動揺させるに充分過ぎた。
私が黄瀬涼太を好き…?
何度も疑問視して、その度に否定してきた想い。
芽生える筈の無い想いが、まさか私の中にあるというのか?
私は自分を客観視しない。大切なのは相手の気持ちなのだから、自分の気持ちなんて二の次でいい。
だから、笠松さんに指摘されて信じられなかったんだ。
剥きになる自分に、感情的になる自分に、否定出来ない自分に。
黄瀬涼太とヤッてはいけないという啓示は、私自身が嫌だったからだ。
ゲームという枠の中で彼と関係を持ちたくなかったから。
無意識に拒んでいた。それは詰まり…
──好き
……だから。
黄瀬涼太を好きになったから、嫌になった。
だから、逃げた。
だから、胸が苦しくなった。
その兆候はずっと有ったのに、気付かない振りをした。
今も、気付かなければ良かった──。
もう全て手遅れなんだから。
「流石ですね、笠松さん。何よりもキツイ罰ですよ…これ」
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